All Chapters of モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている: Chapter 101 - Chapter 110

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第100話 お礼をしっかりと受け取るのじゃ ~ソフィアサイド~

「勇者はどこだ! 勇者を連れてこい!」バルバロスとやらはワシに向かってわめきちらしておる。弱いし、五月蠅いし、まったくなんでこんなやつをここに送り込んできたのじゃ。ゼドの奴は良くわからんのぅ。「勇者は今は忙しいのじゃ。 このワシが直々に決勝をぶち壊してくれたお礼をしてやるからのぅ。 しっかりと受け取れよ」ワシはバルバロスとやらにそう言うと、仮面を外し持っていた剣を構えた。どんな風にこやつを料理してあげようぞ。「あの……ねえさま…… 別にもう武闘大会ではないので、剣を使う必要はないのでは?」マリーに言われるまでとんと気づかなかったのぅ。「おぅ、そうじゃったそうじゃった。 言われてみればそうじゃのぅ。 剣なんて邪魔くさくてしかたない」ワシは剣を放り投げ、改めてバルバロスとやらと対峙をした。「お前の事などどうでもいい。 勇者だー、勇者を連れてこい。 お前を倒したところで、俺様には何の得にもならない」相変わらず勇者、勇者の一点張りじゃ。どうせゼドのことじゃ、勇者を倒した奴には四天王に取り立てるなどと言っておるのじゃろぅ。不都合なこと、ワシらがいることは隠してのぅ。「ワシの首もあいつなら喜ぶと思うがのぅ」「そんなことは知るか。 俺様は勇者の首を持って、魔王軍の幹部となるんだー」ん?その口ぶりからするとどうやらあいつはゼドの回し者ではなさそうじゃのぅ。そこらに居る野良魔族か。名前を上げたくて勇者が凱旋してきたこの武闘大会を狙ったようじゃのぅ。「お前はワシの事を知らんのか?」「あぁ、知らないな。 あいにく俺様は下っ端なんか興味がないしな」「ほほぅ。 ワシが下っ端じゃと?」「そうだよ。 たまたま俺様の不意を突いて勝っただけだろ。 まともに戦えば俺様の圧勝だ!」なんかこうも自分と相手の力量がわかっていないアホだと……頭にくるのを通り越して、逆にかわいく思えるのぅ。「では、その実力を見せていただこうかのぅ。 今度はワシが受けてやるから、さっさとかかってくるがよい」満面の笑顔でバルバロスとやらを煽って嗾ける。「そこまで言うなら、俺様の力を見せてやるよ」バルバロスとやらはようやくワシの方を向いて、槍を構えた。「ライトニングスピア!」得意と思われるスキルを発動してワシに向かってくるバルバロスとやら。
last updateLast Updated : 2025-08-03
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第101話 武闘大会 その後 ~マリーサイド~

国王の思い付きで始まった武闘大会でしたが、バルバロスとか言う小悪党の所為でお開きになりましたわ。まぁ、国王の思い付きというよりかねえさまがそそのかしたのですが……今は、その後始末というかなんというかで、アグリが説明に追われています。マリーやねえさま、セバスチャンの正体を知られても仕方ないですし。アグリはいつも損な役回りで大変ですわ。それにしても武闘大会でのねえさまの活躍は見事でしたわ。不慣れな剣でのあの快進撃……しばらく触ってないとは思えないほどの剣捌きでした。今、思い出しても、ウットリしてしまいますわ。マリーもあの域に達したいものですわ。あと、アグリは……正直あそこまでやるとは思いませんでしたわ。私と一緒にセバスチャンの訓練を受けているはずなのですが……あのねえさまと対等にやりあうなんて思っても見ませんでしたわ。少しだけですが、見直しましたわ。まだまだねえさまには遠く及ばないですがね。「えっとですね、みなさんを避難させた後に、爆発したところに駆けつけると…… バルバロスと言うやつが、この部屋を滅茶苦茶にしてまして…… そいつを俺が倒しまして……」アグリは身振り手振りで状況を見に来た近衛兵に事情を説明していますわ。慌てたときのアグリはああやって大きな動作でごまかしているのがまるわかりですわ。「それで、この上の穴はなんでしょうか?」近衛兵の質問にさらにしどろもどろに答えているアグリ。そんなに慌てなくてもいいのに。「あぁ……あれは、バルバロスを倒すためにですね…… これ以上会場にも街にも被害を出さないためにも…… 上空で倒すのがいいと思いまして…… 上に放り投げて、倒したということでですね…… …… ごめんなさい。これは私がやりました」アグリは何をあやまっているのでしょうか。ねえさまも珍しく、街中だし被害を最小限に食い止めることを考量しての行動でしたのに。あやまる必要もないことを何故あやまっているかがわかりませんわ。「あのままバルバロスと言う奴を野放しにしておいたらこれだけでは済まなかった思います。 なおかつ倒す際にもいろいろと配慮いただいたようで…… 勇者様には本当に頭が上がりません。 ありがとうございます」「いえいえ…… それでも一部を壊したことには変わりがありませんので……」そこまで遜
last updateLast Updated : 2025-08-14
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第102話 話し相手ぐらいしてくれよ ~アグリサイド~

武闘大会が終わって数日がたった。終わった翌日には国王から魔族を倒した礼は言われたが、武闘大会のことは特に話題に上がらず……会場を壊した責任も特に何も言われず、危機を救ってくれたことだけを褒め称えられた。城や城下内でも魔族が現れて、勇者が倒したことで話題が持ち切りだった。武闘大会のことはみんなの記憶から薄れているようだった。でも、魔族を倒したのは俺じゃないんだよな……ただ、俺としては人相手に戦ったのはほぼ初めてだったけど……以前よりか強くなった実感は出来たし、武闘大会に出て良かったかな。失いかけた自信もこれで少しは取り戻せたとは思う。まぁ、まだまだ魔族の強い奴らやゾルダやマリー、セバスチャンには敵うとは思えない。人であの域に達することが出来るのかの心配はあるけど、努力は裏切らないし、まずは頑張ろう。自分のペースでやっていけばいいのだ。さてと、次は東の街へ行く話だったと思うのだけど……ゾルダが一向に動かない。最初は俺が方々で説明をしたり、国王に謁見したりでそれを待っているのかと思ったのだが……飲み食いしては寝て、起きては飲み食いしての繰り返し。朝から酒を浴びるように飲んでいる。なんかさらさら動く気なんかないように感じる。俺がゾルダたちが封印さいている武器や装備を持って出発すれば否応なしに動き始めるはずなんだけど……強引に進めるのは気持ちが乗らないので、確認はしてみる。「あのさ、ゾルダ。 そろそろここを出て次に向かわないと……」「そうじゃったかのぅ…… ワシはいろいろあって疲れたからもう少しここで休まないといかんのじゃ」酒臭い匂いを漂わせて、けだるそうにゾルダは応えた。「いや、いろいろやっていたのは俺であって、ゾルダではないだろ? その辺りの話も終わったし……」「……もう少しじゃ…… ここを出ていったらもうこの美味しい酒はしばらくお預けなのじゃ。 名残惜しいのじゃ。 もう少し飲ませるのじゃ」そうだろうと思ったけど、思いっきりぶっちゃけるなぁ。「それはそれでわかるけど、アスビモのことはどうするの?」「…………」アスビモと言う言葉にちょっとは反応したゾルダだが、俺から顔を背けてベッドに横たわってしまう。マリーもゾルダにベッタリで、一緒になって横になっている。「セバスチャン…… なんとかならない?」「
last updateLast Updated : 2025-08-15
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第103話 村長の代理は大変だよー ~フォルトナサイド~

みんなー。ボクの事を覚えているかな~。そう、フォルトナだよ~。いつ以来の登場かな~。なので覚えていてくれる人は少ないかな~。そのことは置いておいて、ボクは母さんが倒れて、急いで村に戻ったんだけさー。思いのほか元気でそれはそれでよかったとホッとしていたんだけど……もう帰ってくるなり、あれやれこれやれってさー。ボクの事をこき使ってさー。「フォルトナ、あの件はどうなりましたか? それと、これとあれと……」「ねぇ、母さん! あれこれ言うなら、自分でやればいいじゃんかー」「あらやだわ。 この子ったら、私はまだ動けないのに……」「だってもうピンピンしてるじゃん! 代理がいなくても出来るし、なんならボクじゃなくてもいいじゃんかー」「イタタタ…… また急に痛み出したわ。 これじゃ、まだまだ動けないわ。 ということで、頼んだわよ、フォルトナ」こんな感じで、もう文句を言うと痛い痛いっていってさー。ずっとベッドの上から動かないんだよー。本当にズルいんだからー。それでも仕方なく母さんが気にしている村のみんなからの困りごとや依頼ごとをこなしていく。「えっと…… 村のはずれにある井戸の調子が悪くて直してほしいって話だったけー」ぶつくさと文句を言いながら話すボクに、カルムさんがどこからともなく現れた。「そのことは、オンケルにお願いしています」「オンケルさんねー。 あの人は仕事が早いし、きっちりとこなしてくれるから助かるよねー」「村長代理、もう間もなく修理も終わるかと……」「あのさー、その『村長代理』って言うのむずかゆいから止めてくれないかなー」村に戻ってきて、代理の仕事をし始めてからと言うもの……カルムさんはボクの事を以前の呼び名で呼ぶことはなくなった。まだその呼び名には慣れなくて本当に気持ちが悪い。確かに『村長代理』ではあるんだけどねー。それからカルムさんと共に村のはずれの井戸に到着した。そこではオンケルさんが、修理の最後の仕上げにかかっていた。「おっ、お嬢。 あっしの仕事の確認ですかい」『代理』じゃなくて『お嬢』と呼んでくれるオンケルさん。前と変わらず接してくれるのはオンケルさんぐらいかもしれない。「うん、そうだよー。 というか半分以上は、母さんが気にしてさー。 ボクだったら、オンケルさんに任せっきり
last updateLast Updated : 2025-09-07
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第104話 フォルトナとの再会 ~アグリサイド~

森を抜けてすぐ――ようやく三人がお出ましになった。俺を一人にしたことに散々文句を言ったが……ゾルダをはじめとして全く意に介してないようだった。それでも愚痴を言いながら、シルフィーネ村へと向かっていこうとした。文句を言いながらも、シルフィーネ村の人たち、特にフォルトナやアウラさんの様子が気になっていた。そんなことを考えていたのだが……歩き始めて直ぐのところで、フォルトナが居るのを見つけた。「あれ? フォルトナじゃん」しゃがみこんで何をしているのだろう。しかもこんなところに一人で……「小娘の娘、ここで何をしておるのじゃ? 小娘は元気かのぅ」「……うん、母さんは元気だよ。 元気過ぎて困るよー」心なしか元気がないような声だった。それでも俺たちに会えたのがホッとしたような感じで、次から次へと言葉が出てきていた。「あのさー、母さんがー……」村へ向かいながら聞いていたのだが……慣れない村長代理の業務で精神的に疲れているのだろうと思うぐらい愚痴が出てくる出てくる。その大半がアウラさんのことである。アウラさんから見れば物足りないところがあって、いろいろと口をだしているのだろう。そういう小言がずっしりとくるってことは良くあることだ。俺にも前の世界で経験がある。「会うなり、溜まっていたものが出たって感じだな。 俺にも経験はあるけど、話半分ぐらいに聞いておけばいいんだって」「そうは言ってもさー わからないことが多くて、都度都度母さんに聞いてるんだけどー そのたびにいろいろ言われてさー 気が休まらないったらありゃしないよー」「そうかもしれなけどさ…… なぁ、ゾルダからも何か言ってあげたら?」俺一人だけでは何ともしようがなく、ゾルダに話を振ってみたが……「ん? 何のことじゃ?」「フォルトナのことだよ! アウラさんがいろいろ言ってくるって」「ごちゃごちゃうるさいから途中からもう嫌になって聞いておらん。 なるようにしかならんじゃろぅ」ゾルダはそっけなくそう答えた。他の二人も「マリーには興味がないことですわ」「私はフォルトナ殿もアウラ殿のことも存じ上げておりませんので……」苦笑いするだけで、特に何も言ってはくれなかった。「いっそのことさー ボクが居なくても大丈夫そうだしー また一緒に連れて行ってくれないか
last updateLast Updated : 2025-09-11
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第105話 シルフィーネ村の一大事 ~フォルトナサイド~

アグリたちがボクの家に入っていった。ただボクは母さんのところへ行きづらくて、玄関先で待つことにした。ボクの家なのに、なんだかなー。ギクシャクしているのを見られたくないと言うかなんというかー。散々愚痴を言っておいて……そのもの自体は見られたくないんだよなー。「まぁ、いっかー。 母さんとの話が終わったら、アグリたちも出てくるはずだしー」誰も聞いていないのはわかりつつ、声に出して言ってみた。誰も居ないので当然なんの反応もない。自分で声に出しておいて、ちょっと虚しさがこみ上げてきた。母さんのことや村のことをいろいろ考えながら……玄関先で座って、みんなが出てくるのを待っていた。そんな時……――ボンッ村の中心地から大きな爆発音が聞こえた。ボクは立ち上がって爆発音がしたところを見た。いくつかの煙が立ち上がっているのが確認できた。「なんだなんだー なんかあったのかなー」いつもならカルムさんたちに何が起きているのか確認していたのに……その前に、音がした方へ走り出していた。尋常じゃない事態を感じたのもあるけど、身体が勝手に動いていた。村の中心地に近づくにつれ、慌てて逃げる人が増えていった。「キャーーーー」「魔物がーー 魔物がーー」現場にいた人たちだろうか。悲鳴を上げて、村の中心地から離れていく。ボクはその人波をかき分けながら、村の中心地に向かっていった。「グガガガガーー」「そうだ、もっと暴れろ! こんなところなんて壊してしまえ!」村の中心地に近くなると、そこから魔物の雄たけびと誰かの叫び声が聞こえてきた。急いでその声が聞こえる場所に行くとそこには1匹のマーナガルムと男が立っていた。「誰だー、お前はー。 ここで何してるんだー」ボクはその男に大きな声で問いただした。男はボクの方を向いて「何をしようとお前には関係ない。 もう何もかも消えてなくなればいい。 俺もお前たちもだ!」錯乱している男は、虚ろな目をしながら大声で叫んだ。それに呼応して「ガルルルルゥ……」マーナガルムも低い唸り声を響かせる。「ここはボクの……ボクたちの村だ。 ボクたち村で勝手なことは許さないんだからー」ボクは携帯している小刀を抜くと、その男を取り押さえようと走り始めた。だけど、その男の前にマーナガルムが立ちふさがった。「そ
last updateLast Updated : 2025-09-16
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第106話 出番が少ないと言われても…… ~アグリサイド~

アウラさんにフォルトナのことを任された俺は、爆発音がした村の中心地に向かっていた。ゾルダは酒で釣ったから、上機嫌である。どんな奴がいるかはわからないけど、強力な魔族だったとしてもこれなら大丈夫かな。いやいや……俺が任されたんだから、出来る限り俺がなんとかしないと。そんなことを考えながら向かっていると、不意に上機嫌だったゾルダの顔が曇り始めた。何かブツブツと言い始めている。「ゾルダ、急にどうした?」「うむ…… あのな、最近ワシの出番が少ないようなのじゃが……」「はっ? いきなり何を言い始めているのか……」出番ってなんだよ。それをこの緊急事態に言いはじめるか、ゾルダは。「だってのぅ。 小娘の娘が中心だったり、おぬしが小娘と話したりでじゃ。 ワシが目立っていないようなのじゃが…… これは由々しき問題じゃ」「ねえさまがおっしゃるのなら、マリーも言わせていただきます。 マリーもほとんど出てないですわ。 存在感がまるでないのですわ」マリーもゾルダに乗っかり文句を言い始めた。「あのさぁ…… そんなことはどうでもいいんだよ。 フォルトナを助けに行かないと」「そうは言うが、これはワシにとってはあの小娘の娘より、大事なことじゃて……」「マリーも大事ですわ!」二人とも膨れっ面になって文句を言っている。えっ、フォルトナよりそれが大事なの?でもそれは森の中も全部装備の中に入っていたお前らが悪いとは思うんだけどな。姿も現しもしないし、話もしなかったらそうなるとは思うんだけど……そうは思ったものの、そんな話も出来る雰囲気になく「凄い剣幕だな、二人して急に…… というか、出番とかなんだよ。 そういうメタなことを言われても困るよ!」「またその『めた』と言う言葉を使っておるのぅ。 ワシにわかる言葉を使うのじゃ」「はいはい…… とにかく俺にはどうすることも出来ないから、作者に言えって」「作者とはなんじゃ…… この世界にそんな奴はおるのか」今日の二人は言えば言うほど突っかかってくるなぁ。「あぁ、もう、面倒くさいなぁ…… この世界を創っている神が決めていることだからさ。 文句があるなら、そいつに言え。 とにかく急ぐよ」「そういう神がおるのじゃな…… おい、神よ、聞いておるなら、ワシらの出番を増やすのじゃ」「増や
last updateLast Updated : 2025-09-17
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第107話 嫌でも認めていただきますわ ~マリーサイド~

なんでマリーがこんな輩の相手をしないといけないのですか……本当に嫌になりますわ。しかも魔法無しでなんて……「何か不満がありそうですね」セバスチャンは本当にマリーの心を見透かしますわ。「いえ…… なんでもありませんわ…… おとうさま」イライラしていたこともあってちょっと口が滑ってしまいましたわ。ハッとして、おとうさまの顔色を窺いました。「その呼び方は…… お嬢様の前ではよくありませんね……」案の定、おとうさまは魔人のような形相になっています。ねえさまの前ではおとうさまは礼儀に厳しかったですわね。「うーっ…… ごめんなさい、おっ……セバスチャン」ふぅ……こうなるとおとうさまはどんどんと厳しくなりますわ。あのマーナガルムを力でねじ伏せないと機嫌も直りそうもなさそうです。「えーっ! セバスチャンとマリーって親娘なの?」先ほどの会話を聞いたアグリがビックリしたようで大きな声を出しています。「アグリ殿には伝えていなかったでしょうか。 大変申し訳ございません。 マリーは私の不出来な娘でして……」おとうさま……ねえさまが常にそばにいる状態で、マリーが『おとうさま』とは呼ばないのは……わかっているのではなくて!そのことは改めて話題に出ない限りは、アグリは知ることはないですわ。それに……「おとうさま! マリーは不出来なんかじゃないですわ」「また言いましたね、マリー」再びおとうさまの形相が変わります。また言ってしまいましたが、それはおとうさまが悪いのですわ。マリーが何も出来ない子みたいに言うんだから。「…… マリーだってやれば出来ることをお見せしますわ」おとうさまに向かって、そう言うと剣を抜きマーナガルムの前に立ちました。「さぁ、お相手してあげますわ」「ガルルルルゥ……」マーナガルムは鋭い爪を立てて、マリーに襲い掛かってきました。それを剣で受け止めます。力もそこそこあるようで、ずっしりと剣に重みがかかります。「くっ…… これぐらい……問題ないですわ」剣先に力を込めて、マーナガルムの爪を弾き返します。それを見ていたおとうさまは「ほんの少しですが返すのが遅れています。 最近訓練していなかったからですかね」容赦ない言葉が飛んできます。「それぐらいの遅れ、どうってことないでしょ!」カチンとき
last updateLast Updated : 2025-09-26
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第108話 上に立つものは理性的でなければならんのじゃ ~ソフィアサイド~

なんとかことは収まったようじゃな。マリーもセバスチャンのおかげか魔法だけでなく剣の腕もだいぶ上達しておるようじゃ。まだまだワシには遠く及ばんがのぅ。「マリーの活躍、見ていただけまして、ねえさま!」「おっ……おぅ。 見ておったぞ。 なかなか様になっておったのぅ」ワシの出番が少なくてブツブツと文句を言っていたことは黙っておこうかのぅ。「ねえさまに褒められるのは嬉しいですわ! もっとおとうさまに鍛えていただこうかしら」マリーはわざとワシの前でセバスチャンのことを『おとうさま』と言っておるな。セバスチャンはこういうことには厳しいからのぅ。魔人のような形相でこちらを見ておる。「セバスチャン、まぁ、そんな顔しなくてもよいぞ。 今は魔王でも何でもないからのぅ」「ですが……」「そんなことは気にせんでもよいわ。 もう少しワシの前でも肩肘張らずに親子らしくしたらどうなのじゃ」「お嬢様がそうおっしゃられるなら……」マリーはいたずらっ子のような顔でセバスチャンに対して舌を出しておる。そこまでふざけるのはどうなのかのぅとは思うが、マリーもマリーでいろいろとあるのじゃろう。さてと……そう言えば、小娘の娘はどうなったかのぅ。「アグリ、小娘の娘の様子はどうじゃ?」「もう目は覚ましているよ。 ところどころケガもしていたけど、回復魔法である程度は治したよ」「しかし、小娘の娘は無茶をしたのぅ。 ワシらがいるじゃから、ワシらに助けを請えばよいものを」横になって寝ておる小娘の娘に嫌味の一つも言ったのじゃが……めずらしく真剣な表情をしておる。「だってさー この村は……この村はボクが生まれ育った村だよ。 ボクが守れなくてもどうするのさ」「気持ちは分かるよ。 たぶん、勝手に身体が動いちゃったんだろうね」あやつは小娘の娘の気遣うような言葉をかける。大切な何かが危ない時には確かにワシでもそう行動するかもしれんのぅ。視線が自然とアグリの方向いてしまい、目があってしまった。なんで、ワシはあやつの方を向いてしまったのじゃ。そのこともあり、少し慌ててしまった。それを悟られない様に、小娘の娘に問いはじめる。「だからと言ってじゃのぅ。 上に立つものとして、どれが最適なのかも導けんと、守れるものも守れんぞ」そう言われると小娘の娘は表情が曇ってし
last updateLast Updated : 2025-09-27
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第109話 やっぱりボクは…… ~フォルトナサイド~

魔物の騒動も落ち着き、村には平穏が訪れた。 被害はボクのほかに数人のケガ人と、建物の破損が多少あった程度だった。 アグリたちが来て対応してくれたので、大きな被害にならずにホッとした。ボクの家へ戻る途中、心配してかボクにアグリが話しかけてきた。「フォルトナ、大丈夫か?」「うーん、大丈夫かなー  あちこち痛いけど……」「家に戻ったらしっかり休みな」「うん」「でも、フォルトナが最初に出てくれて、ある程度時間を作ってくれたのも大きかったよ」「いやー……  そんなことないよー。  体が勝手に動いただけだしー」「それだけこの村の事を考えているってことかな」アグリが何気なく言った一言に、ハッとした。 普段から、ボクは村の事を一番に考えていたんだ。 だから、危険が迫った時に、とっさに後先考えずに行動したんだ。 それだけ、村の事を大事にしていたんだ。 空気のようにここにあることが当たり前だったけど、すごく大事にしていたんだ。 そう思ったら、今までのいろいろとした不満も、何故かすっと消えていったような気がした。そんなことを考えているボクに、いたずらっ子のような笑顔でゾルダが近づいてきた。「しかし、小娘の娘は魔物の下敷きになるのが好きよのぅ」「なんでさー。  ボクがいつ魔物の下敷きになったっていうのさー」「あの時も、あの時もそうじゃ。  小娘の娘は全部魔物に踏み倒されておるぞ」「ぶぅーっ  全部じゃないよー。  確かにそうなった時もあったけどさー」「今回もそうじゃが、たいした実力も無いのに本当に無茶をしよる」「いいんだよー  それで村が守れたのならねー」改めて村の事が大事なのだと認識できたし…… 母さんがいろいろと言ってきたことも、村を思っての事だったのだろうなー。 ボクがまだまだ子供だったってことかな。そんなことを話しながら歩いて
last updateLast Updated : 2025-09-28
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