ムルデの街の鉱山での出来事は今でも鮮明に覚えている。生贄の儀式で、街の人たちが次々と倒れていった。俺の力が足りなかったこともあり、結局は数人しか助けられなかった。前の世界では身近で人が倒れることもなかったし、あったとしても遠く離れた地での出来事だった。それが目の前で起きたことにショックを受けた。同時にこの世界は生死が身近にあるのも思い知った。その時から俺は次にあったらランボは俺が倒そうと思っていた。コイツを倒したからって、亡くなった街の人たちが生き返る訳ではないけど……せめて助けられなかった罪滅ぼしはしたいと思っていた。その気持ちを汲んでのことか気まぐれなのか、ゾルダは俺にランボのことを任せてくれた。そういう意味ではゾルダに感謝しないと。「ランボ、ムルデの街では世話になったな」「はて? 誰だったかな? 儂は全く覚えてないぞ」「覚えていなくて結構。 どうせ、俺に倒されるんだしな」なんか悪役じみたセリフだけど、今の俺の気持ちだし、そんなことはどうでもいい。高ぶる気持ちのまま、構えてた剣に属性魔法を付与した。「アトリビュート、サンダー」剣が稲光を帯びたように光始める。そして、その剣をランボに向かって振り下ろした。振り下ろしたが、サッと避けられてしまう。それを見ていたゾルダがケタケタと笑いはじめる。「何がおかしいんだよ。 避けられたくらいで。 少しは静かにしてさ……」「いや、すまんのぅ。 あいつの避け方があまりにも滑稽で……」マリーやセバスチャン、シータを見ると笑いを堪えていた。まだまだ俺の振りが甘くて避けられたとは思っていたのだけど、どうやらそうではなくて、ランボはギリギリ避けていたらしい。頭に血が上った所為か、余裕がなくなっていたのかもしれない。
 最終更新日 : 2025-10-09
最終更新日 : 2025-10-09