All Chapters of モブな転移勇者♂がもらった剣にはチートな史上最強元魔王♀が封印されている: Chapter 131 - Chapter 140

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第130話 余の作戦に口を出すな! ~ゼドサイド~

「……うっ……」最近何やら頭が痛くなることがある。 身体も精神的にもだ。 それもこれも、みんなゾルダのせいだ。 たまにあいつの声が聞こえてくる。 あの下賤な笑い声が頭の中を引っ掻き回す。 本当にあいつが復活してからロクなことがない。それにクロウやメフィストもあいつに負けた。 アスビモが連れてきたランボという奴もだ。 少しばかり期待した余がバカだった。 駒は所詮駒以上にはならんし、使い物にもならん。イライラした気持ちと頭痛を治めるためにアスビモが持ってきた薬を飲む。 この薬が結構よく効く。 飲んで数分で頭痛も取れるし、身体にも力がみなぎってくる。 最近少し飲む頻度が増えたような気がするが、そのうちに良くなってくるだろう。余の部屋から出てから謁見の間に向かうと、そこにはラファエルとクラウディアが控えていた。「魔王様、ラファエル、クラウディア共に帰還しました」余が王座に座ると、ラファエルとクラウディアが帰還の報告をする。「随分と遅かったな」戻ってくるように言ってからどのくらいたったのか。 時間は正確にはわかっていないが、気持ち的にはだいぶ経ったような気がする。「大変申し訳ございません」ラファエルは深々と頭を下げる。 クラウディアも申し訳なさそうにしている。「謝るぐらいなら、さっさと行動しろ、この馬鹿者めが」消えぬイライラをラファエルとクラウディアにぶつける。 お前たちも役に立たないな。「……」首を垂れたままラファエルとクラウディアは何も言わない。 その態度にも増す増す腹が立つ。 ただ、そこは堪えておこう。 何せこれでお前らも余のためになるんだからな。「まぁ、いい。  お前らはお前らなりに余の役に立つことだ」「はっ」二人からは力の入った返事が返ってきた。「お前たちを呼び戻したのは、ゾルダのことだ」「確か復活されたとお聞きしております」ラファエルの耳にも話を届いていたようだ。「えーっ、そうなの?  あーしは聞いてないよ」クラウディアは不服そうな顔をしている。 その顔を見たラファエルがクラウディアを窘めている。 余に向かってなんたる態度だとは思うが、こうしている時間も鬱陶しい。 さっさと話を進めるか。「そのゾルダをお前ら二人で倒してこい」「あのゾルダ様を?  あーしら二人で相手になる
last updateLast Updated : 2025-10-19
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第131話 アスビモからの伝言 ~アグリサイド~

数日にわたって開催されていたラヒド祭も今日が最終日。 この数日何をしていたかというと――『おい、見張りなんぞ最終日だけでよいのじゃ。  今日も祭りじゃ祭り』朝早く起きるなり、上機嫌のゾルダに首根っこを掴まれる。『ん……  まだ朝早いじゃん。  昨日も遅かっただろう。  もう少し寝かせてくれよ……』眠い目を擦りながらそう言うも『いいや、まだまだ足りんのじゃ。  存分に楽しまないとのぅ』そしてそのまま、祭りに引きずり出される。 セバスチャンやシータは苦笑いしながら、それについてくる。 そんな光景が繰り返されていた。ゾルダがそれほどまでに祭りが好きだったとは知らなかった。 でもよくよく考えると数百年封印されていて、その間何も楽しめなかったはず。 その反動もあって、楽しくて仕方がないのだろう。 そうそう祭りがある訳でもないし、今はゾルダの思い通りにやらせてあげよう。なんか親心みたいなものが芽生えてしまい、付き合っていたのだったが――「よし、今日は最終日じゃ!  名残惜しいが最後まで存分に楽しむのじゃ!」今日もまた朝から元気のいいゾルダ。「今日は最終日じゃん。  アスビモの商会の従業員たちに接触しないと……」ここに来た目的は祭りではない。 アスビモの居場所を探すためだ。 そのことを忘れてしまってないかと思うほど、満喫している。「そんなものは、ギリギリ最後でいいじゃろ。  撤収してから、街の外で脅せば一発じゃ」「いやいや。  途中で帰られたりしたらどうするんだよ。  一応、祭りの間もそれとなく気にして見ていたけど……」俺はゾルダに付き合って祭りを見て回ったものの、 気にはなるので、ところどころでアスビモの店を確認していた。「で、どうじゃったのだ?」「まったく帰る気配はなかったよ」売れる気配も無いのにずっとその場に居続けた。 しかも客足もずっと変わらないまま。「それなら、最終日も同じじゃろ」「とはいえさ……」さすがに最終日だし動きがあるのかもとは思う俺は、見張りをしようと提案する。「なら、お前ら三人で見ておけばいいじゃろ?  ワシは祭りが終わったら街の外で合流するのじゃ」しかし、ゾルダは譲らない。 俺たちを置いて、さっさと街に繰り出していった。「マリー、ごめん、連日で。  ゾルダのこと
last updateLast Updated : 2025-10-26
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第132話 出しゃばりおって、あやつめ ~ソフィアサイド~

「先を急ごうとしておるのに、なんかきおったのぅ」シータに言って、転移魔法で移動しようとした矢先に、高速の光がこちらに向かってきおった。 その光がワシらの前で降り立つと、現れたのは……「あなた方にはここで死んでいただきます」「あーしはどうでもいいんだけど、命令だしね。  ちょー退屈なんだよねー」なんかいきがっておるのぅ、こやつらは。 男女の魔族が殺気を立てて、ワシらに立ち向かおうとしておる。「なんじゃ、お前らは?  ワシは先を急いでおるのじゃ。  邪魔じゃ、どけ」ワシは少し焦りがあるのかのぅ。 スビモの伝言を思い出す。 弟のところへ、早く行きたいのじゃがのぅ。 イラっとした気持ちを二人の魔族にぶつけていたのじゃ。「そう言われても我々も命令で来ておりますので、どくわけにはいきません」男の方が丁寧な受け答えをしつつも、ワシらの前に立ちふさがる。「そう言われてもじゃ。  ワシにはその命令とやらは関係ないのじゃ」いろいろと言われてもワシは知らん。 右に左に動くものの、その度にワシの前に立ちおる。 いっそのことぶっ倒そうかのぅ。 そう思い始めたら、その男はさっと後方に飛び、少し距離をとりおった。 勘が鋭いのぅ。「ねぇ、おばさんがゾルダ?  へぇー、これがあのゾルダって人なの?」ワシを一瞥すると、魔族の男の方に確認をする。 しかし、ワシをおばさんじゃと?「そこの女!  よっぽど死にたいのかのぅ」全身に魔力を込めはじめ、一撃くらわそうとしたその時、 あやつが止めに入ってきおった。「ゾルダ、ここでそれは……  街にも被害が出るって。  ジェナさんにも言われているだろ」ここは街からは少し離れておるのに、あやつは律儀というか細かいのぅ……「少しぐらいいいじゃろ」「それじゃ、次からここにこれなくなるぞ。  祭りが楽しめなくなってもいいのか?」「うむ……それは困るのぅ……」こんな街ぐらいとは思ったが、祭りの出禁になるのはごめんじゃ。「だろ?  だからここは我慢な」我慢と言われてものぅ。 うーん、しかし、こやつらは邪魔じゃしのぅ…… どうしたものかのぅ。「あっ。そうだ!  シータ、お前がやれ!  お前なら、街に被害出さずにやれるじゃろ」ワシはなかなか加減が難しいしのぅ。 シータならその辺りは心
last updateLast Updated : 2025-11-02
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第133話 ゾルダの動揺と憎悪の影 ~アグリサイド~

ん? 今、一体何が起きた?確かあの時、俺が振った剣がラファエルを掠めた。 今まで空振りだったのがようやく当たって喜んだのもつかの間だった。 その時足についていた鎧が落ちてきたのを拾ったはずだった。 そう拾っただけだったのだが……「なんで女の人に絡まれているんだ?」俺にベッタリと体をつけてガシッと腕を組んで離さない。 痛いぐらいに掴んでいるので、離れることも出来ない。 顔は笑っているものの、目だけが冷たく光って見えていた。「女の人って、そんな他人行儀な言い方はないわね。  わっちよ、わっち」「そんなこと言われても、こっちになんか知り合いはいないし……」俺以外にこっちへ来たって聞いたことも見たこともないから、赤の他人のはずなんだが…… 思わずゾルダの方に顔を向けると、あのゾルダが驚いた表情でポカンとしている。「お前は……  いや、あなたは……」驚いた中でも、何かを話そうとしているようだが、言葉になっていないようだ。「もしかして……ゾルダのお知り合いかなにかでしょうか?」恐る恐る抱きついている女の人に確認をする。 するとその女性は「知り合いも知り合いだよなぁ、ゾルダ!」ドスの効いた声でゾルダを睨みつけている。「あ……姉貴?」ゾルダの口からまたも身内を思わせる一言が出てきた。「えっ?  この人、ゾルダのお姉さんなの?」弟が危ないとの話が出てきたと後は、お姉さんの登場か。 いったい何人姉弟なのか?「いや……  正確には、ワシの父の妹じゃ……」ゾルダが随分遠回しな言い方をしている。 少し気にはなったが、俺は気にせずに「あぁ、おばさんね」と言ったとたん、掴んでいた手の力がさらに入ってきた。「わっちのこと、おばさんって言ったわね。  どうしてくれようかしら」俺の事を睨みつけて顔を寄せ
last updateLast Updated : 2025-11-09
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第134話 姉貴を苦しめるもの ~ソフィアサイド~

「そろそろ正気を取り戻すのじゃ、姉貴」まともに戦えばワシは勝てるじゃろうが、それでは姉貴が無事では済まぬはずじゃ。いつもと違う感じじゃから、姉貴の本意ではないのじゃろう。何かしら細工がされているはずじゃとは思うのだが……「あら、わっちはいつでも正気よ。 狂っているのはお前よ、この脳筋バカ娘!」ただ姉貴の姿を見ても周りを見ても何も感じられぬしのぅ。それともあのゼドが送り込んできた二人……なんと言ったかのぅ……まぁ、名前なぞいいか。あいつらが何かしておるのか……二人がいる方を見やると、まだシータが相手をしておる。それにあれだけ追い詰められておると、こちらにかまけている余裕はないじゃろ。だから、あいつらが何か裏でしているということはないのぅ。「あぁーっ、もう考えても分からんのじゃ。 とにかく、いつもと違うのじゃから、姉貴は正気ではないのじゃ!」そう言いながら、魔法で足止めをしたり、正気に戻るように攻撃をしておるのじゃが……やっぱりこの程度じゃ、姉貴には効かんのぅ。何せあの性格が故に身につけた力じゃから、ある程度のダメージをものともせんからのぅ。とりあえず正気に戻るまではこのままかのぅ。そう考えて、姉貴の様子を伺いながら、とりあえず回避をしておったところに、あやつが割り込んできた。ワシと姉貴の間に入り込んだあやつは顔を真っ赤にしながら立ちふさがっておった。その様子を見てか、姉貴も動きを止めた。「何をしておるのじゃ、おぬしは。 巻き添えを食いたいのか!」あやつを押しのけようと手をだそうとしたところだったのじゃが「と……とりあえず、俺に任せてくれ」あやつの眼も泳ぎ、動揺しておるのがすぐわかったのじゃ。それでも照れくさそうにしている意味がよくわらんがのぅ。「あら、やだわ。 わっちのところへ来てくれるのかしら」姉貴はよく知らないあやつのことを何故そこまで好意を持っておるのかはわからんのじゃが、妖艶な笑顔であやつを見ておる。ますます顔が赤くなるあやつ。「お……おぬし…… もしかして、姉貴に惚れたのか?」「そんなことあるかー! ちょっと思いついたことがあるんだけど、それが恥ずかしいだけだって」あやつはそう言うと、大きく息を吸いこんで吐き出しておる。そして、両手で頬を叩くと、また一歩前にでて姉貴に近づいていきお
last updateLast Updated : 2025-11-16
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第135話 ゾルダとヒルダの共闘 ~アグリサイド~

は……恥ずかしいったらありゃしない。 なんで罵倒なんかしないといけないんだ。 俺はSでもMでもなくノーマルだって……覚悟を決めて言ってはみたものの、顔から火が出るような思いだった。 ヒルダが倒れたからよかったけど、これで何の効果も無かったら……ちょっとぞっとする。 ゾルダにもいろいろと突っ込まれたが、恥ずかしくてまともに顔も見れていない。 知らず知らずに、顔を手で覆っていた。 その時「アグリ、危ないのじゃ!」ゾルダの大きな声が聞こえてきた。「何が危ないって……」覆っていた手を外すと、ヒルダの上に固まっていた紫の霧が鋭い刃となり俺の方へ向かっていた。「うぁーーーー」突然の出来事に叫んで腕で顔を隠して身構えることしか出来なかった。 鋭い紫紺の殺気が俺の肌を刺すような感覚を感じる。 俺はこのままやられてしまうのか……バチーン――大きな音と共に濃紫の塵が飛び散った。 もうこれで終わりか…… 呆気ないなかったな、俺の人生も。 結局魔王だって倒せなかったし。 残されたゾルダたちはまた封印されてしまうのだろうか……などとあれこれ考えていたが、痛みが全然ない。 ふと顔を上げると目の前に居たのは、さっきまでそこに倒れていたヒルダだった。「あぁあん、そんなに慌てなくてもいいのに、このあわてんぼうさん。  うーん……でもね、あなたの攻めは……あまり美味しくないわ。  そうね……この子の方が……  考えただけでゾクゾクするわ」紫紺の刃がヒルダを突き刺してはいるのもの、悦に入った表情をしているヒルダ。 俺の方を向くとますます悦に入った顔になっていく。「あ……ありがとうございます。  でも……それ、大丈夫ですか?」その尋常じゃない喜びに若干引きつつも、俺を庇ってくれたヒルダを気づかった。「あら、これぐらい平気よ。  全然足りないぐらいだわ」そう言いながら、濃紫の刃を少しづつ抜いていく。 俺から見ると痛そうに見えるその動作も、ヒルダは喜びながら行っていた。「姉貴、正気に戻ったのかのぅ?  あやつを助けてくれて、助かったのじゃ」遅れてゾルダが俺の目の前に来て、ヒルダのことを心配していた。「あら、ゾルダちゃんが人の心配をしているなんて珍しいこともあるのね。  しかも名前まで呼んで」ヒルダは無数の紫紺の針たちを丁寧に
last updateLast Updated : 2025-11-23
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第136話 おいどんも活躍したのにの ~シータサイド~

ゾルダ様も人使いが荒いというかなんと言うかの…… おいどんも頑張ってあのラファエルとクラウディアを追い詰めて捕まえたのにの。 すぐに転移魔法使えとおっしゃる。 少しぐらいはおいどんを気づかってくれてもいいのにな。 心の中でそんなことを考えていたら、坊ちゃんがおいどんの方へと近づいてきた。「シータ、ごめん。  一緒に戦うはずが、途中からあの二人任せっきりになっちゃって」「いや、お気遣いなく。  もともと一人で相手するはずだったからの」「ゾルダも弟のことが気になるんでしょ?  せっかくラファエルとクラウディアを捕まえたシータに、さらに無理言って」坊ちゃんはおいどんのことを気づかってくれておるのかの。 それともおいどんに顔に出ておったかの。 そうであれば気をつけないといけないの。「ゾルダ様はいつも通りだとは思いますがの。  それでも坊ちゃんだけにでも気づかってもらえたのは嬉しいですの。  ところで……おいどんの戦いぶりはどうだったですかの?」「ごめん、こっちもいろいろとあったので、しっかりと見ていなかった」「ならば、おいどんがどうやってラファエルとクラウディアを捕らえたかをお聞かせしましょう」おいどんは見ていなかった坊ちゃんのために二人との戦いを振り返り始めた――『ゼド様は私たちに何をお渡しになったのですか……』『あれー?  またおばさんが増えたじゃん  ウケるー』ラファエルとクラウディアはどうやらあの仕掛けを知らなかったようですの。 おいどんたちも封印されていたのであれば、ヒルダ様も当然こうなっているのはわかるがの……『おい、お前らはこのことは知らなかったのかの?』『知る訳ねーじゃん。  ゼド様が勇者に渡せっていうから持ってきただけだって』『何かしらゼド様が考えていらっしゃることは分かっておりましたが……』どうやら策があるというぐらいの事しか知らなかったようですの。 しかし、あのヒルダ様の様子は少し違う感じがするの。 ゼド坊ちゃんが何か考えていると言うのであれば、何もないってことはなさそうですの。ヒルダ様と坊ちゃんの心配をしていたおいどんに対してラファエルは『余裕ですね。  今は私とクラウディアの相手をしているはずですよ』と言い、連続で火炎魔法を唱えてきた。『余裕ではないがの。  気になって見
last updateLast Updated : 2025-12-06
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第137話 どこに転移した? ~アグリサイド~

シータの長々と話したていたが、ゾルダの一喝で転移の魔法の起動に入った。「ゾルダもそんなに無碍に扱わなくても……」まぁ、シータも調子に乗っていたのも確かだったけど、そんなに怒らなくてもいいのではと思った。「あいつは話を始めたら長いんじゃ。  さっきの分はワシからの命令だったしのぅ。  その話までは我慢してやったんじゃ。  ワシも度量が大きいじゃろ?」「それにしても止め方ってものが……」しばらくすると低いブーンとした音が聞こえてきた。 そろそろ転移が起動しそうだ。「そろそろ行きますの」シータがみんなに声をかけると、上から魔法陣が降りてきた。 俺たちに降り注いだ魔法陣が下に降りたころには、転移先に到着していた。 着いてすぐにゾルダが浮遊魔法で移動し始めた。 他のみんなもつき従っていく。 俺も慌てて走り始めた。「?  ここはどこ?  どこに転移した?」周りを見渡しても俺の知っているところではなさそうだ。「あらあら。  ここに来たのね」ヒルダがぽつりと口にした。 どうやらヒルダは知っているところのようだ。「なぁ、ゾルダ。  ここはいったい……」「まぁ、行けばわかるのじゃ。  まずは急ぐのじゃ」なんかもったいぶる言い方だな。 弟のことが心配のは分かるが、事情が一番わかってない俺に説明をしてくれてもいいじゃないか。 でも、すぐには説明する気はなさそうだ。 とりあえず分からないことが多いけど、ついていくしかない。長い廊下を進んでいき、大きな扉の前に着いた。 それにしても大きな城のようなところだ。 弟はいったい何をやっている奴なんだ? ゾルダが元魔王だし、魔王軍の幹部か何かかな? でも、ゾルダが追い出されているんだし、その家族だし、不遇な状況な気がするけど……「ここの奥にゾルダの弟がいるのか?」「たぶん、いるんじゃないのかのぅ。  ここが大好きな奴じゃしのぅ」周りにいたセバスチャンとシータが扉の前に立ち、取っ手を持ち引き始める。ギギギギッ――あまり手入れされていないのか軋んだ音が蝶番から聞こえてくる。 二人が扉を開け終わると、その向こうには大きな空間が広がる。 そして奥には豪華な玉座とそこにぐたっと座る男が居た。「やっぱりここに居ったか」「……っつ……お前……何しに来た」苦虫を噛み潰したよ
last updateLast Updated : 2025-12-14
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第138話 本当に何も見えておらんのぅ ~ソフィアサイド~

「本当に嘆かわしいのじゃ。  お前は何も見えておらんのぅ……」そんな姿になってまでワシを倒したいのかのぅ。 父上の件は、ゼドがもう少し成長してから話すつもりでおったのじゃが…… まぁ、でもあの状況を見ておれば、誤解するのも無理はないかのぅ。「なぁ、ゾルダ。  ゼドが言っていたことは本当なのか?  先代の魔王を殺したって……」おぬしか…… あぁ、ここにも説明せねばならん奴がおるのか…… 面倒じゃのぅ。「その話は今のあのバカ弟のことが終わってからじゃ。  今、言えることは、すべてはあいつの勘違いということじゃ!」あやつにそう言うと、ワシは襲い掛かってくるゼドの前に立った。 なりふり構わぬゼドはワシ目掛けて大きな拳を落としてくる。ガッシーン――鉱物がぶつかったような音が部屋に響き渡っておる。 腕を交差して受け止めたのじゃが、なかなかズシリとくるのぅ。「お前も少しはやるようになったのぅ」あんな変な物の力を借りねばワシに立ち向かえぬ心の弱さ…… そういうところもじゃぞ。 まだまだ魔王としての自覚が足りないところばかりじゃ。 それに……「だが、まだまだワシには及ばぬのじゃ」交差した腕で押し返すと、いとも簡単にはじけ飛んでいったのじゃ。 ゼドは柱に激突するとヒビが大きく入り、瓦礫が崩れ落ちたのじゃ。 力も魔王としてもまだまだ足りないのぅ……「オマエガニクイ……  オマエサエ、イナケレバ……」そこまでワシを憎んでおるのか。 それとも薬の影響かのぅ…… お前のその考えも意識も全部誘導されておるということがわかっておらぬようじゃのぅ。ゼドは起き上がると、全身に魔力を流し身体を強化し始めたのじゃ。 力には力か…… その身体になったのなら、悪い考えではないのじゃが……「脳筋か、お前は。  お前はお前の戦い方があるじゃろうに」思わず首を横に振ってしまったのじゃ。 これはもう嘆かわしくて、頭を抱えてしまうのぅ。強化したゼドは思いのほか俊敏に動き、またワシに襲い掛かってきおった。 腕から繰り出される力一杯のパンチや闇雲に振るうキックの嵐。「だ……大丈夫か、ゾルダー!」あやつは剣をしっかり構えて、ゼドの隙を窺おうとしておる。 その心意気は嬉しい限りじゃが、今のあやつの実力じゃ、死ぬだけじゃ。「おぬし、ワシは大
last updateLast Updated : 2025-12-21
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第139話 元魔王vs現魔王 ~アグリサイド~

二人の圧倒的な戦いの前にただただ見ているだけしかできない。 しかもこの二人が姉弟だということ。 それにゾルダはその前の魔王である父を殺している? ここに着いてそれほど時間が経っていないのに情報が多すぎる。 壮大な姉弟ケンカだな、これは……いやいや、そんなことを考えている場合ではない。 ゼドは明らかに暴走しているし、普通じゃない。 それを止めないといけないとは思うけど、俺はどうしたらいいんだろう。剣を構えてはいるものの、足が竦んで動いていない。 なんとかしなきゃいけないとは思うのだが……「アグリ殿、ここは無理せずお二人を見守ってもらえれば」俺の気持ちを察したのか、セバスチャンがすっと横に来て言った。 さっきまで暴れていったゼドから城の者たちを守っていたはずだったが……「いや……でも……  俺の使命は魔王を倒すことのはずで……」そうは言ったものの、今の二人に割って入る実力がないのは分かっていた。 それでも、この世界に呼ばれた理由は魔王を倒すことである。 ここに俺がいる存在意義なのだ。 でも、ゾルダたちと旅をしてきて、俺の使命は「魔王を殺す」ことじゃなく、「誰も失わずに終わらせる」ことなんじゃないか、と感じ始めていた。 傍若無人なところはあっても、どこか憎めない。 それはマリーやセバスチャン、シータたちにも言えること。「あら、わっちは入らないの?  無視?  それはそれで……」ん? 今、俺の心の声を読んだのか? ヒルダが大声で叫びながら悶えている。「いや、あなたはさっき会ったばかりだから、わからなくて……」勝手に読んだんだから律儀に返す必要はないだが、思わず返してしまった。 そのとたん、不機嫌な顔になったヒルダは「もう、真面目に答えなくても。  そこは放置プレイでしょ!」ブツブツ文句をいいながら、二人の戦いの余波を受け続けている。……なら放っておこう。人間と魔族、お互いが平和なら、不戦になるなら、それが一番なのかもとは思う。 ずっとアイツたちと旅をして来て、分かり合えなくはないと感じているからだ。 ゼドともきっと分かり合えるんじゃないかと……「アグリ、ねえさまに任せておけば大丈夫ですわ」マリーも飛んでくる瓦礫をたたき割りながら、俺にそう話しかけてきた。「マリーもありがとう。  分かったよ、ゾル
last updateLast Updated : 2025-12-31
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