All Chapters of 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~: Chapter 51 - Chapter 60

105 Chapters

第51話 救援、そして決着

「やめろーーー!!」言葉と同時、指向性だけを持たされた魔力の塊が黒ずくめの男に放たれた。「なっ?」また先ほどと同じような膜のようなものが男を守ろうとしていたが、タミルの魔力に耐えきれずにバリン!と割れる音を残して男を吹き飛ばした。「ぐっ!こ、こいつ魔導士だったのか。そんな素振りは全くなかったぞ」予想外のところから攻撃を受けた男は受け身も取れずに壁に叩きつけられていた。 よろよろと立ち上がろうとしている今なら俺でも取り押さえられるかもしれない。 俺は咄嗟に駆け出して男の両腕を押さえつけようとしたが、それに気づいた男が腕を振り回して俺の拘束から逃れた。「ちっ!不意を突かれたとはいえただの素人にやられたりはせん。それより逆らっていいのか?これ以上逆らえば、タミルだけでなくこのハイドキャットの命もないぞ」 「ぐっ!くそっ」やはり俺ではこういう時に何の役にも立たない。男はタミルの魔法を警戒して俺たち二人から視線を逸らさないままタミルに猿轡を噛ませようとしていた。「フリーズランス!」そこに突如第三者の声が乱入してきた。飛来した氷の槍は寸分違わず黒ずくめの男の右肩に突き刺さった。男はそのまま勢いに押され、タミルさんを放して地面に倒れこんだ。「ぐぁ!ま、また魔法だと、何なんだいったい」男はそれでも右肩を抑え立ち上がろうとしていたが、近づいてきた女が次の魔法を放つ方が早かった。「フリーズロック」床を這う氷の蔦が男の足に絡みつきそのまま男の下半身を氷漬けにする。「し、しまった!くっ、お前はもう一人の魔導士のほうか。俺に気づかれない様にあとから近づいてきたという訳か」男の言う通り、そこには魔法を放った張本人のカサネさんが立っていた。「アキツグさんとりあえず、その男を拘束してください」 「え?あ、あぁ分かった」展開に付いて行けず、とりあえず言われた通りに俺は男に近づこうとした。「失敗か。無念。ぐっ!」それに対して男は何かをかみ砕いたかと思
last updateLast Updated : 2025-04-11
Read more

第52話 ロシェッテの容態

その後、街の医者に診て貰うことでロシェは一命を取り留めた。 やはりあの男が持っていた薬瓶の一つが解毒剤だったらしい。 毒を受けて時間がそれほど経っていなかったのもあり、1日休めば良くなるだろうと聞いて俺は胸をなでおろした。「よかった。本当に良かった」 『助けに入ったつもりが、助けられた上に心配かけちゃったわね。ごめんなさい』 「ロシェが謝ることなんて何もない。それにロシェが時間を稼いでくれなかったらカサネさんも間に合わなかったかもしれない」 『そう言って貰えたら助けに入った意味もあったわね。アキツグが森の方へ来るのに気づいたから何かと思って様子を見に近づいたのだけど、あんなことになってるなんてね』あの時、ロシェがあの場に居たのはそういうことだったのか。 突然のことで俺は言う通りに行動することしかできなかったがロシェとカサネさんがカバーしてくれたおかげで助かったわけだ。「あぁ、俺も宿の食堂で昼食を取っていたらいきなり手紙が届けられてな。何かと思ったら脅迫状であんなことになったんだ。あの時の生き残りが俺を狙うなんて思わなかったよ」 『どこで誰に恨まれるかなんて分からないものね。今回は原因があったわけだから、筋違いってわけではないけれど』そこまで話していたら、部屋の扉がばん!と音を立てて開かれた。 驚いて振り返ると、そこには走ってきたのか息を切らせてこちらを見るカサネさんが居た。「ロシェッテさん、大丈夫ですか!?」 「あ、あぁ時間が経ってなかったから明日にはよくなるって。やっぱりあいつが解毒剤を持っていたよ」 「そ、そうですか。よかったぁ」ほっとしたのか、カサネさんはその場で大きく深呼吸をしている。『カサネ、助けてくれて、そして今も心配してくれてありがとう。あなたが居なかったら危なかったわ』 「仲間を助けるのは当然のことです。ロシェッテさんが無事で本当に良かったです。こちらに来るまで気が気じゃなかったですから」落ち着いたのかカサネさんはロシェの隣まで来ると彼女の体を優しく撫でた。 ロシェも撫でられて
last updateLast Updated : 2025-04-12
Read more

第53話 救われた心と魔法の交換

「取り合えず入ってくれ。お茶くらいはごちそうするよ」そう言って昨日と同じクレル茶葉のお茶を入れてくれた。 お茶を入れてから、タミルさんは少し何かを躊躇うように考えているようだった。 気にはなったがいつまでも黙っているわけにもいかないので、俺はまず昨日の礼を言うことにした。「あの、昨日はロシェを助けてくれてありがとうございました。タミルさんがあの時にあいつの気を逸らしてくれなければどうなっていたか」 「あ、あぁ。気にしないでくれ。それに俺も救われた気分なんだ。今度は助けられたって」 「助けられた?」俺が聞くとタミルさんは昔を懐かしむような顔で話を続けた。「あぁ。聞いてるかもしれないが、俺も小さい頃は町で暮らしていてな。その時飼っていた犬が居たんだ。コルンって名前でな。わんぱくな子犬だった。 あの日、俺が庭で魔法の練習をしていた時にいつもと違う感覚がして、気が付くと詠唱していた魔法が暴発してしまった。運の悪いことに魔法の着弾点に立てかけられていた木材とコルンが居て、コルンは木材の下敷きになってしまった。俺は慌てて助け出したんだが、その時にはもう手遅れだったんだ。。 それ以来、俺は自分の魔法を信じられなくなった。それで父親から習っていた狩猟の方を本格的に勉強して狩人として森で暮らすようになったんだ」そこまで語ってから、タミルさんはロシェの方をしばらく見て、「あの時、毒を浴びて苦しそうに倒れるその子が俺にはあの時のコルンに重なって見えた。あの男がロシェに近づこうとしたのを見て気づいたら魔法を放っていたんだ」なるほど。あれだけ魔法の使用に拒否反応を示していたタミルさんがあの時魔法を使ったのはそういう理由だったのか。「あのあと俺は長らく使ってなかった魔法の反動で意識が少しぼんやりしていたが、あんたがその子を抱えて出ていくのを見て、その子を大切に思っているんだなってことが分かった」 「あ、あぁロシェは大切な仲間で友達だからな」俺は少し照れながらもタミルさんの真剣さに向き合って正直に答えた。「友達・・・か。そうか。よし、決めた。この前は
last updateLast Updated : 2025-04-13
Read more

第54話 魔法の修練とハイン村でのひと時

ロンデールの街に戻ってくると時刻は夜になっていた。「こんな展開になるとは思わなかったな。ミアには感謝しないと」 「交渉失敗の手紙を出す前で良かったですね」 「まったくだ。とはいえ、あんなのに襲われたことを喜ぶ気にはなれないけど」 「それはそうですね」 『ほんとよ。私は情けないところ見せちゃったもの』などと、この二日間の出来事を振り返りながら宿に戻ってきた。「おかえりなさい。今日は良いことがあったみたいですね」宿の扉を開けるとリリアさんが出迎えてくれた。 昨日ロシェのことで気落ちしていた時も励ましてくれたし本当に優しい人だ。「えぇ。ちょっと内容は言えないんですが、色々と良い方向に転びまして」 「あら、そう言われると気になっちゃいますね。ふふふっ」そう言いつつも深く聞く気はないようだ。そのまま厨房に戻り夕食を用意してくれた。俺達は美味しい夕食を頂いてその日は眠りについた。 翌日、俺達は朝食を取ってからリリアさんに街を出ることを告げ、ハイン村へ向かうことにした。「牧場か~どんな感じなのか楽しみですね~」 「エストリネア大陸の方では牧場を見たことなかったのか?」 「えぇ。私はクエストが多い街付近にいることが多かったですから。牧場自体はあちらの大陸にもありましたけどね」 『・・・来たわよ』不意に休んでいたロシェが声を掛けてきた。 少しして、右側の茂みからガサガサと物音がすると3つの影が飛び出してきた。「ゴブリンですね。アキツグさん出番ですよ」 「あ、あぁ。やってみる」まだ馬車までは距離がある。俺は慎重に呪文を詠唱する。「ライトニング」直後、落雷が左端のゴブリンの右腕を焼き貫いた。「グギィャ!」 「おぉ、当たった!」 『直撃とは言い難いけど、命中率は上がってるわね』 「ほら、アキツグさん。油断せずに次です。次!」ゴブリン達は突然の落雷に怯み、戸惑っていた。 俺は言
last updateLast Updated : 2025-04-14
Read more

第55話 ハーピィの襲撃

ハイン村での取引も問題なく終えられたため、俺達は次の目的地であるマグザの街へ向かっていた。「この辺は結構高い山が多いんだな」 「山岳地帯ですね。ハイン村で聞いたんですが、この辺の山にはハーピィの巣が結構あるらしいです」 「ハーピィ?」聞いたことのない言葉に俺が質問を返すと、ロシェが説明してくれた。『半人半鳥の魔物よ。翼で空を飛ぶことができて、上空から襲い掛かってきたり、魅了の歌で男を虜にしたりするわ』 「え?!それって大丈夫なのか?」 「今は二人も魔導士が居ますし、仮に魅了の歌を使われても私には効かないので大丈夫ですよ」 「二人、二人かぁ。まだちょっと自信はないな」 「ふふっ、少しずつ精度も良くなってますし、ハーピィに対して雷の魔法は相性が良いはずですから。期待してますね」カサネさんが楽しそうに笑う。ここ数日彼女には色々と魔法の指導をして貰っていたのだ。期待に応えられるように頑張らないとな。『あら、噂をしたらというやつかしら。早速来たみたいよ?』ロシェの声に視線の先を見てみると、翼を広げた女性のようなシルエットが二体、上空からこちらに向かってきていた。「アキツグさん、私が動きを止めますからそこにライトニングを」 「分かった」カサネさんの指示に従って呪文を唱え、タイミングを待つ。「エア・バインド」彼女が呪文を発動するとハーピィの1体が見えない鎖に縛られたように動きを止めた。それを確認してから、俺は狙いを定めて魔法を発動させた。「ライトニング」落雷はハーピィの片翼の付け根辺りに当たっていた。今回も微妙に狙いからずれてしまったが、バランスを崩したハーピィはそのまま落下した。 もう一方のハーピィはこちらに向かってきていたが、相方が雷に撃たれたのを見ると慌てて山の方に逃げて行った。「片方は逃げましたか。直ぐに逃走を選択するなんて意外と知能は高いんですかね?」 「どうだろう?本能的に危険を察知しただけかもしれないしな」そう言ってから、落ちたほうのハーピィの方に呪文
last updateLast Updated : 2025-04-15
Read more

第56話 事情聴取とお礼の品

攻撃されないことに気づいたハーピィが、少し落ち着きを取り戻したところで、俺はまず言葉が通じるかを確認することにした。「あんた、こっちの言葉は分かるか?」『・・・分かる。荷物奪おうとしてごめんなさい。殺さないで』 「荷物?俺達を狙ってたわけじゃないのか?」 「あの村からくる人達よく良い匂いさせてる。でも、人いっぱいだから諦めてた。あなた達少ないから奪えるかと思った」人がいっぱいというのは恐らく護衛のことだろう。俺達はロシェを入れても三人だし、日持ちする食材を荷台に積んでいた。狙うにはうってつけだったわけだ。「君達の種族はよくこんなことをしているのか?」 『そ、その・・・偶に。で、でももう二度としない。人間がこんなに怖いの知らなかった。約束する。だから助けて』う~ん。これはその場しのぎの様な気もする。怖くなさそうな人間だったら同じことをするんじゃないだろうか?とはいえ、言葉が通じてしまった以上命乞いしている相手を殺すっていうのもちょっとなぁ。。「人間達を襲わなくなったら君達が食糧に困るんじゃないのか?」 『楽じゃないけど、向こうの森には動物沢山いる。私達狩り得意だから大丈夫』 「そうか。なら口先だけじゃなく、本当に人間を襲うのは止めたほうが良い。こんなことを続けていたら、君達を狩る依頼が出されて君達を全滅させに来るぞ」俺の言葉にハーピィはまた恐怖で震えだした。『口先違う。本当に本当。二度と人間襲わない。誓う』 「そうか。仲間達にも人間達を襲わないよう約束させられるか?」 『たぶん、ううん。約束させる。ヒエラも見てたから二人で話せば信じてくれるはず』ヒエラというのはさっき逃げた相方のことだろう。彼女にどれだけの発言力があるかは分からないが、俺にできるのはこれぐらいか。「分かった。それなら今回は助けよう。その怪我も手当てしないとな」 『ほんと?本当に助けてくれるの?』 「あぁ」そう言って俺は傷口を見て効きそうな薬を塗って包帯を巻いた。 薬を塗った時は「痛い!痛い!」と騒いでいたが、少しすると痛み止
last updateLast Updated : 2025-04-16
Read more

第57話 謎の人物とスキルブック

「いや~助かった。ありがとうな。俺はハクシンってんだ」 「はぁ。俺はアキツグです」 「カサネといいます。よろしくお願いします」ロシェッテに気配も感じさせず突然現れた男は空腹で倒れていたらしい。手軽に食べられるものをとりあえず渡すと、美味しそうにバクバクと食べながらそう言った。「いや~それにしてもハーピィ相手に会話ができるなんてアンタすげえな」 「えっ!?・・・あ、いや、その撃ち落としたと思ったハーピィが生きてて可哀想になってしまったから、話し合って助けていただけですよ?」思わぬ発言に驚いてしまったが、咄嗟に言い訳する。 確かにハクシンが出てきた茂みは近かったが話声を聞けるほどではなかったと思う。スキルのことは話せないし、ここは何とか誤魔化したかった。「いやいや、俺は耳だけは良い方なんでな。ばっちり聞こえてたぜ。まぁ、安心しなって。アンタは恩人だからな。誰にも言ったりはしねぇよ」だめだったらしい。彼の言葉は嘘を言っているような感じではなかった。 まぁ誰にも言わないと言っているし、詳しく聞き出そうとしてくるわけでもなさそうだったので諦めることにした。「そうですか。すみませんが秘密でお願いします」 「あぁ、もちろんだ」 「それで、ハクシンさんは何故こんなところで空腹で倒れていたんですか?」周りは山岳地帯で近くに街があるわけでもない。彼は見た感じ特に持ち物もなさそうだった。マジックバッグを持っている可能性はあるし、見た目だけではあてにならないかもしれないが。「あぁ、山に籠って修行をしてたんだがな。集中していたら食い物が無くなっていたことをすっかり忘れちまってな。いや~面目ない」 「修行ですか。この山にはハーピィたちが住んでいるようですが、大丈夫だったんですか?」 「あぁ。あんたも聞いたみたいだが、奴らは人を襲ったりはしねぇよ。襲われても負けねぇ自信はあるけどな。ったく、師匠も面倒な課題を出しやがるぜ」ハクシンは師匠から出された課題で山籠もりをしていたらしい。 食べるのも忘れるほど集中していたらしいが、一体どん
last updateLast Updated : 2025-04-17
Read more

第58話 マグザ到着・・・依頼達成?

ハクシンと別れた後は特に何事もなくマグザまで来ることができた。 マグザは周囲を山に囲まれた窪地に作られた都市だ。 とある魔導士が隕石を落とした跡地に都市を作ったなんて逸話もあるらしい。 魔法学園は名前の由来だけあって大きく街の入り口からも見ることができた。 さらに学園の中には街の外からでも見える高さの塔が立っていた。街に入るとまずはカサネさんの希望で冒険者ギルドに向かった。 冒険者ギルドに入り、カサネさんは素材を売却するためにカウンターへ向かった。 俺は待つだけというのもなんだったので、何となく依頼掲示板を見に行くことにした。そこには様々な依頼が張ってあった。街中の下水道掃除や荷物運び、近辺のモンスター退治や素材採取など色々だ。 と、そこで俺は一枚の依頼に気づいた。「ハーピィ討伐依頼。貴重品の回収必須?」なんだかすごく思い当たる節がある依頼だ。というか間違いない気がする。「何だ兄ちゃん、まさかその依頼を受けるつもりか?止めときな、その依頼は俺達がこれから向かうつもりなんだ。早い者勝ちだから今から受けても無駄になるぜ?」 「え~と、いや、既に終わってるんです。この依頼」そう言って、俺はメギエスタから受け取った懐中時計を取り出した。「な、何だと?・・・確かにその懐中時計、依頼内容の品と同じじゃねぇか。何だよ、先越されたのは俺達の方ってことかよ」その男たちはがっくりと肩を落として、依頼掲示板の方へ戻っていった。どうやら別の依頼を探すことにしたらしい。なんだか悪いことをしたな。 でも、あの様子からまだ他に向かった人は居ないらしい。誰かがハーピィ討伐に向かう前で良かった。「カサネさん、ついでにこの依頼の報告も頼んだ」俺は受付に向かい、依頼用紙と懐中時計をカサネさんに渡した。「え?ハーピィ討伐依頼?・・・なるほど、そういうことですか。分かりました。」理解してくれたらしい。カサネさんは合わせて手続きを済ませてくれた。「それにしても、あのハーピィたちの討伐依頼が出ていたとは。ハーピ
last updateLast Updated : 2025-04-18
Read more

第59話 ミルド達との再会

聞いたことのある声に振り向くとそこに居たのはやはり、以前世話になったミルドさんとエリネアさんの二人だった。「ミルドさん、エリネアさん、お久しぶりです。俺達は魔導都市がどんなところか興味があって観光に来た感じです。あ、この人は俺の旅の仲間です」 「カサネです。よろしくお願いします」 「俺はミルドだ、よろしく。アキツグさんとは以前ある人の護衛中に一緒になってしばらく同行していたんだ」 「エリネアです。よろしくお願いします」二人は何かの荷物を抱えていた。届け物の途中とかなのだろうか?「にしても観光か、それは良いタイミングで来たな。明日は魔法学園の学園祭だからな。楽しんでいくと良い」 「そうみたいですね。知らずに来たのでびっくりしました。ただ、そのせいで宿屋が全部埋まってしまっていて。どうしようかと思っていたところなんです」 「あぁ、、それはそうだろうな。・・・良かったらうちに来るか?部屋なら余っているが」 「えっ?良いんですか!?」降って湧いた幸運に驚き聞き返す。「あぁ、知らない仲でもないしな。両親も一緒に住んでいるが、二人ともおおらかな性格だから、俺の友人なら気にしないだろう。アンタらが良ければだが」 「俺は良いと思うんだけど、カサネさんはどう思う?」 「皆さんが良ければ、ぜひお願いしたいです」 「そうか。ならちょうど戻るところだし、一緒に来るか?」 「あ、ちょっと待ってください。あともう一人、この子、ロシェッテも一緒で構わないでしょうか?」俺の言葉に、ロシェが姿隠を解いた。周囲に居た人達が軽く驚いた声を出して通り過ぎていく。二人も突然姿を見せたロシェに驚いたようだ。「ハイドキャットか。初めて見たな。アキツグさんの従魔なのか?」 「はい。ギルドで登録はしています。大人しい子なので迷惑を掛けることはないはずです」 「なるほどな。うちの両親は猫好きだし、たぶん大丈夫だと思うぞ」 「良かった」 「あ、あの・・・この子、撫でても大丈夫ですか?」何だかエリネアさんが期待に満ちた目で聞いてきた。初めて見る表情だ。
last updateLast Updated : 2025-04-19
Read more

第60話 エフェリスのコロンケーキ

「楽しみにしてます!」 「それじゃ、部屋に案内するよ。こっちだ」ミルドさんが抱えていた荷物を近くに置いて俺達を部屋に案内してくれた。 俺達はエフェリスさんに一礼してからミルドさんの後を付いていく。「こことその隣が空き部屋だ。掃除用具とかはあそこの籠の中にあるから好きに使ってくれ」ミルドさんが案内してくれたのは二階にある突き当りの部屋だった。「ありがとうございます。あと、学園祭のこと後で教えて貰っても良いですか?俺達基本的なこともよく分かってなくて」 「あぁ、構わない。夕食の時にも話題になるだろうから、その時に説明しよう」 「分かりました。お願いします」 「それじゃ、悪いが掃除の方は頼んだ。俺は準備の方を手伝ってくる」そう言うとミルドさんは一階に戻っていった。 部屋を開けてみるとどちらの部屋にも最低限の家具は置かれてあった。元は客間か誰かの部屋だったのだろうか?ただ、やはりしばらく使われていなかったようで、それらの家具は埃を被っていた。「それじゃ、美味しいデザート、いえ食事のために頑張りますか!」 「あ、あぁそうだな」カサネさんがいつになくやる気だ。こんなに張り切っているのを見るのは初めてかもしれない。よほどコロンケーキが楽しみらしい。 そうして夕食前までは各自で部屋の掃除を済ませた。 掃除を済ませて一階に戻ると、キッチンの前に知らない男性が立っていた。「ん?おぉ、あんたらがミルドの連れてきたお客さんか。俺はあいつの父親でカイゼルってんだ。よろしくな」俺達もカイゼルさんに挨拶を返すと、席に着くように勧められた。 言われた通り席に着くと、エフェリスさんが食事を並べてくれた。「お掃除お疲れ様でした。さあさあ食べて下さいな。コロンケーキはデザートでお出ししますね」エフェリスさんが振舞ってくれた料理はどれもとても美味しかった。 デザートだけでなく食事までごちそうを用意してくれたようだ。「とても美味しいです」 「お口にあったようで良かったわ」
last updateLast Updated : 2025-04-20
Read more
PREV
1
...
45678
...
11
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status