真夕が顔を上げると、そこには辰巳の姿があった。昏睡状態にあった辰巳は物音で目を覚まし、すぐにベッドから降りて茂雄を真夕から引き離したのだった。欲望に狂った茂雄は背後から襲われるとは思っておらず、よろめいて壁にぶつかった。辰巳の顔は蒼白だったが、表情は冷徹だった。彼は真夕を見た。「大丈夫か?」真夕は首を振った。「ええ、大丈夫」辰巳はようやく茂雄の方を見た。彼は拳を固く握りしめた。「畜生め!」邪魔をされた茂雄の表情も険しかった。「君ら二人を助けたのはこの俺だ!俺がいなかったら、君の足はとっくに駄目になってたんだぞ?恩を仇で返すつもりか?既婚者のくせに、男一人と寝るのも、複数と寝るのも同じことだろ!」茂雄は図々しくそう言い放った。辰巳の怒りは頂点に達し、拳に青筋が浮かび上がった。彼は勢いよく前に出て茂雄に一発のパンチを食らわせた。茂雄も辰巳を睨みつけ、すぐに取っ組み合いの喧嘩になった。真夕が立ち上がると、その光景に胸が締め付けられた。浜島市の暴れん坊として名を馳せた辰巳は喧嘩慣れしていたが、足に重傷を負っており、大柄な茂雄にはすぐに押され始めた。茂雄は鬼のような形相で言った。「大人しく従っていれば命ぐらいは助けてやったのに。もうこれ以上隠す必要もない。君を殺して、この女を俺の慰み者にしてやる!ハハハッ!最初から助けるつもりなんてなかった。だがこの女はあまりにも美しくて……俺の運もいいもんだぜ」茂雄は卑猥な言葉を吐きながら辰巳の首を締め上げた。その時、「バン」という音がし、椅子が茂雄の頭部を直撃した。茂雄は硬直し、額から血が流れ落ちた。振り返ると、真夕が椅子を持って立っていた。真夕が椅子で彼を襲ったのだ。茂雄は歯を食いしばり、腰からナイフを抜くと真夕に向かって突き出した。「この淫売め!大人しくすれば楽がさせてやったのに!」真夕は後ずさりした。茂雄の体力の底力に驚かされた。あれほどの打撃でまだ意識があるとはありえないものだ。ナイフが迫る中、一人の影が真夕の前に立ちはだかった。辰巳だった。辰巳が彼女を庇いに来たのだ。真夕の瞳が大きく開いた。辰巳が自分を嫌っていることは周知の事実だった。それなのに、この危機的な状況で身を挺してナイフから守ってくれたのだ。「小山!」と、真夕は叫ん
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