間もなくすると、学生たちが集まってきた。「大変だ、誰かがケンカしてる!」その声を聞き、紫乃は一瞬びくっとした。学校内でのケンカは処分対象になるし、何より、自分はめちゃくちゃ痛かった。紫乃は最初からずっと佳子に押さえつけられ、一方的に殴られている。周りの数人が佳子に攻撃しても、佳子の動きは止まらず、彼女を打ちのめした。紫乃は全身がヒリヒリと燃えるように痛んでいるのだ。紫乃は叫びながら佳子を突き飛ばした。「覚えとけ!仲間呼んでくるから!」そう言って彼女は取り巻きの女子たちを連れて逃げて行った。佳子も傷だらけだった。制服はところどころ破れており、すぐにでも着替えないと外に出られないような状態だ。彼女は地面に落ちた手提げを拾い、更衣室へと向かった。彼女はまったく後悔していない。口だけは達者な人間に甘い顔を見せるつもりなんてない。紫乃が仲間を連れて来るというなら、こっちも受けて立つだけだ。佳子は制服の上着を脱ぎ、「っ……」と痛みで息を呑んだ。体中に真っ赤な引っかき傷がいくつもあり、ケンカの最中は気づかなかったが、今は痛みが倍増して襲ってきた。そのとき、電話の着信音が響いた。佳子はスマホを取り出して画面を見ると、真夕からのだった。佳子が通話ボタンを押すと、真夕の澄んだ声がすぐに聞こえてきた。「佳子、今どこにいるの?誰かとケンカしたって聞いたんだけど」真夕は女子寮で彼女を待っていたが、さっき通りかかった学生からケンカを目撃したと聞いたのだった。佳子はスマホを握りしめた。「大丈夫よ。たまたま小川紫乃に会って、彼女たちが古川くんの悪口を言ってるのを聞いたの」「それで古川くんのために彼女たちとケンカしたの?」「うん。相手は五、六人だったけど、私は一人で戦って負けなかったよ。痛っ……」言い終わらないうちに傷口が当たり、彼女は痛みに涙が滲んだ。「今どこにいるの?すぐに行くから」所在地を聞き出した真夕は、電話を切ってすぐに佳子がいる更衣室へ向かった。ちょうどそのとき、彼女は一人の冷ややかな雰囲気を纏った男子の姿を目にした。迅だった。迅は学校に来たのだ。今日の迅も黒いシャツを羽織り、前は開けられていて中の白いタンクトップが覗いており、下は黒のスラックスだ。引き締まった長身に、力強い足取りをしている。短く刈り上げ
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