雪奈は思わず笑みをこぼした。透き通るように聡明な真夕に、雪奈は心が惹きつけられた。「池本さん、私は今日帰国して娘の彩に会うの。こんな偶然もそうないし、一緒に食事でもどう?」え?雪奈が真夕を夕食に誘った?それは再会の食事なのに!彩「ダメ!」真夕「喜んで!」二人の声が同時に重なった。彩「……あなた、なんでそんなに図々しいの?この前はうちに来たくせに、今度はまた私たちと一緒に食事するって?私の意見は聞いた?」真夕は彩が怒っている様子を見るのが大好きだった。怒っていてもどうにもできないという、彩の様子が真夕はたまらないのだ。「前回岩崎家にお邪魔したのは岩崎社長の許可があったのよ。今回は水原社長に招かれたから。あなたの意見を聞く必要があるの?まさか、自分の両親を疑ってるんじゃないの?」言い負かされた彩は奥歯を噛みしめそうだった。その時、雪奈が口を開いた。「もういいのよ、彩。私が池本さんを招いたの、口論はやめなさい」雪奈がそう言ったので、彩はそれ以上言えなかった。「わかったわ、お母さんの言う通りにする」四人は個室に入った。真夕は端に腰掛け、終始黙々と食事をしながら、さりげなく話を聞いていた。雪奈が彩に向き直った。「彩、普段は何をしてるの?」彩「お母さん、私はバレエをやってるけど、もう踊りたくないの。水原グループに入りたいんだけど、いい?」真夕は冷ややかに笑った。そんなに水原グループに入りたくて仕方がないのね。雪奈「水原グループに入りたいの?」「そうよ。お母さんは水原グループの社長でしょ?お母さんのことはたくさん聞いてるわ。ビジネス界の女王だって。私も水原グループに入って、お母さんから学びたい。そして将来、お母さんのように独立な女性になりたいの」と、彩は甘い言葉を並べた。公私をはっきり分ける性格の持ち主である雪奈は、彩を水原グループに入れる気はなかった。なにせ、彩はビジネスの勉強をしていないため、最初から入れないのだ。だが、彩にここまで言われ、雪奈は拒絶しなかった。「わかったわ。じゃあ明日水原グループに来て。職を一つ用意してあげるよ」彩は微笑んだ。「ありがとう、お母さん」雪奈は謙を見た。「ちょっと来て」雪奈は謙を一人で外へ呼び出した。何か話があるようだった。……謙が外へ出ると、雪奈はすでに前方
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