「あれだけ優しくて、本物だと思ってた愛情が……全部嘘だったんだ。俺をただの放蕩息子に仕立て上げるための、演技だったなんて……実の父親なのに、誰がそんなこと考えられる?あれは俺に、絶対に消えない心の傷を負わせた。おかげで俺は昔みたいに真っ直ぐじゃなくなって、この世の善意なんてものを、本能的に信じられなくなった。気づけば人生そのものを、俺に優しくしてくれる人間をみんな、疑うようになってたんだ。でも俺は、そんな暗い影を必死で心の奥に押し込めてたんだ!お前との出会いや愛は、絶対に本物だって!お前がくれる優しさは、絶対に嘘じゃないって信じようとしてた!だけど、抑えつければつけるほど、反動は大きくなるのかもしれないな……あの日、優花が……お前が優花に薬を盛ったっていう、あのビデオを見せられた時……優花から、『一葉は、あなたを奪うためだけに近づいてきたの。幼馴染だった私を苦しめるために。出会いも恋も、全部あの子が仕組んだことなのよ』って聞かされた時、俺の心は、完全に壊れちまったんだ。無理やり心の底に押し込めてた疑いの種が、一気に芽吹いて……空を覆うほどの、巨大な木になっちまった。お前に何も確かめずに、お前が俺を計算ずくで騙してたんだって決めつけた。親父みたいに、お前の優しさも全部嘘で、俺を馬鹿にしてるんだって。本当は分かってたはずなんだ。お前が俺を本当に愛してくれてることは。でも、当時の俺はきっとこう考えたんだろうな。『始まりは計算づくだったけど、後からうっかり本当に俺を好きになっちまっただけだ』って。もし本当に愛してなかったら、とっくの昔に俺みたいな馬鹿を弄んだ後、さっさと捨ててるはずだからな。そんな可能性を、俺は受け入れられなかった。始まりが愛じゃなくて、計算だったなんて……俺は、お前をあんなに愛してたから。愛してたからこそ、許せなかったんだ……だから、俺は、あんなふうに……」記憶が逆行した言吾は、未来の自分がしでかしたという所業を到底受け入れられずにいる。だが、目の前に突きつけられた事実は、彼が確かにそれを為したのだと告げていた。だから彼は、受け入れるしかなかった。そして、なぜ自分がそんな人間に成り果ててしまったのか、必死にその理由を分析するしかなかったのだ。一葉は、彼の言葉を静かに聞いていた。同じ人間なのだから、彼が
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