All Chapters of 一通の手紙から始まる花嫁物語。: Chapter 61 - Chapter 70

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23話-2 再会と昇格。

ルークス皇帝はふたりの言葉を聞いた後、再び口を開く。「神隠しに合った少女達も帝都郊外の村まで無事に送り届けることが出来たそうで何よりだ」「第3部隊、第4部隊の半分以上を失ったようであるが」「お前達が無事に生きて帰還したこと、大変嬉しく思うぞ」ルークス皇帝はそう言い、エルバートを見据える。「さて、エルバートよ、フェリシアが祓い姫に目覚めたそうだな」「はい」「では後日、お前達の受勲式に加え、フェリシアの祓い姫の認定式と令嬢式を執り行うとする」――こうして早急に準備が進められ、その間、エルバートはフェリシアとリリーシャと共にブラン公爵邸に無事に帰宅し、ラズールとクォーツに、よくぞ帰って来られた、ご無事で良かったと温かく迎えられ、翌日には教会にもフェリシアと2人で足を運び、司祭に礼をし、その翌日。エルバートとクランドールの受勲式とフェリシアの祓い姫の認定式と令嬢式が皇帝の間にて執り行われた。エルバートの父であるテオと母のステラ、公爵、伯爵等の偉い方々に見守られながら、高貴な軍服を着たエルバートはクランドールに続き、ルークス皇帝から勲章を受け取る。それに引き続き、第1部隊のクランドールの隊長、第2部隊のエルバートの隊長のアベル、第3部隊、第4部隊の隊長、計4名も表彰され、少し間を取り、高貴なドレス姿のフェリシアは玉座の踏段を上がっていく。そしてルークス皇帝に右手の甲を差し出し、その手にルークス皇帝が触れた瞬間、右手の甲に印が表れ――、フェリシアは祓い姫だと認められると同時に、皇帝の側近、セレストの公爵令嬢へと昇格した。* * *その後、フェリシアはルークス皇帝の側近に、エルバートの両親が客間で待っていることをエルバートと共に聞かされ、ふたりに会うこととなった。フェリシアはエルバートと並び、廊下を歩く。「フェリシア、すまない。嫌な思いをさせるかもしれない」「いえ、大丈夫です」やがて客間に着くと、後ろから付いて来
last updateLast Updated : 2025-05-19
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23話-3 再会と昇格。

「エルバート、前皇帝を亡き者にした魔を討伐し、ルークス皇帝から勲章を頂いた様、実に立派であった。そして」父はフェリシアを見る。「祓い姫と認められ、セレストの公爵令嬢へ昇格する様も見ていたが、そのセレスト殿から先程、命掛けでエルバートを助けに行き、ここまで至ったと聞いた」「フェリシア嬢、エルバートを救ってくれたこと感謝する」父はフェリシアに深く頭を下げ、母も同じく頭を下げた。エルバートは両目を見開き、フェリシアは慌てる。「そ、そんな、どうか頭をお上げ下さい」フェリシアがそう言うと、エルバートの両親は頭を上げる。「フェリシア嬢、あんな酷い仕打ちをしておいて図々しいとは思うのだけれど」「貴女さえ良ければ、わたくし達のことお父様、お母様と呼んでくれてよくてよ」エルバートの母が少し照れながら言うと、フェリシアの両目から大粒の涙が零れ落ちる。「フェリシア、すまない、母上が余計な事を」「ご主人さま、違うのです。わたしは3歳の時に亡き前皇帝と同じ魔に両親を殺され、引き取って下さった伯母にはずっと虐げられてまいりました」「だからこそ、こうして受け入れて下さったことが嬉しくてたまらないのです」フェリシアがそう言うと、エルバートの母はフェリシアの頭に優しく触れる。「もう令嬢に昇格したのだから、泣くのを止めて、しっかりなさい」「はい、お母様」フェリシアはそう短く答え、泣きながら笑った。* * * それから一週間が経ち、エルバートは午後の執務室で山積みの書類と、あるものを見て、ため息を付く。フェリシアが令嬢に昇格した影響で、フェリシア宛ての求婚の手紙が山積みの書類と同じくらい届いている。料理が上手く、力もあるフェリシアを嫁に欲しいという者が続出するのは予想はしていたが、思っていた以上の影響力だ。フェリシア、アイラブユー等、ふざけた手紙もある。どうしたものか。エルバートは椅子に座ったまま頭を抱えていると、カイが書類を
last updateLast Updated : 2025-05-19
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23話-4 再会と昇格。

「全く、カイの奴め」だが、カイの言う通り、忙しいせいで、フェリシアに対してもそっけない態度になってしまっている。そのせいか、まだフェリシアからあの時の返事は貰えていない。それに、こうして離れている間にフェリシアの身に何かあったらと思うと気が気ではない。何か良い手立てはないものか。そう悩んでいると、ルークス皇帝の側近が執務室に入って来て、皇帝の間に今すぐ来て欲しいと言われた。ルークス皇帝が午後に呼び出すのは珍しい。何か緊急な用件なのだろうか?* * *「エルバートよ、急に呼び出してすまない。伝えたきことがある」皇帝の間で玉座につくルークス皇帝は王座の階段の前で跪くエルバートを見据える。「フェリシアに3週間程の宮殿勤めを命じる」エルバートは両目を見開く。フェリシアに宮殿勤め、だと?「それは何ゆえでしょうか?」エルバートは問う。「先日、令嬢式の際に確かめたが、フェリシアの祓い姫の力は我をも超える。つまり、今、フェリシアは大変危険な状態にある」「それゆえ、フェリシアに教官を付け、力の制御の仕方を宮殿にて伝受させたい。そしてそれに加え、我の料理も任せたい」「フェリシア宛ての求婚の手紙が後を絶たないこと、そして魔がより襲って来ないかと、フェリシアをこのままブラン公爵邸にいさせて良いものかというお前の不安もこれで取り除けよう」見抜かれている。だが、ルークス皇帝の料理をフェリシアに任せるのは如何なものか。「しかし」「エルバートよ、これはアルカディア皇国の行く末の為でもある。良いな?」ルークス皇帝はエルバートの言葉を遮り、強く念を押す。アルカディア皇国の行く末の為と言われてしまっては承諾する他ない。「かしこまりました」エルバートはそう答え、跪きながら深く頭を下げた。* * *「え、わたしが宮殿勤めですか?」その晩。中庭でフェリシアは驚きながら問う。「あぁ。宮殿に長きに泊
last updateLast Updated : 2025-05-20
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24話-1 初めての宮殿でのお勤め。

* * *翌日の朝。フェリシアを乗せた馬車が宮殿の来賓用の扉前に到着した。フェリシアはルークス皇帝により派遣された執事によって馬車から降ろされる。緊張ですでに足がすくむ。けれど。今日からこの高貴なドレスの格好で宮殿にお勤めする。より一層、励まなければ。そう意気込んだ時だった。右足にペルシャのような猫がすり寄ってきた。(え、どうして猫がこんなところに?)「フェリシア、動くな!」高貴な馬を兵達に引き渡したエルバートとディアムが駆けつけ、エルバートがフェリシアを引き寄せ、ディアムと執事はその猫が逃げられないよう、取り囲む。「隣国の猫?」ディアムが戸惑いの声を上げ、執事も続けて口を開く。「迷い込んだのでしょうか?」「お噂は聞いておりましたが、まさか、猫にまでお好かれになられるとは」エルバートは猫を冷酷な顔で睨む。「お前は何者だ?」エルバートがそう問いかけると、猫は風船のように割れ、その猫が発した声が響き渡る。「よくぞ、見破られた」「私は式神。帰るとしよう」徐々にその声は小さくなっていき、フッと消えた。すると執事がフェリシア達に声を掛ける。「私は警護を早急に固めますので、フェリシア様達は宮殿内にお早くお入り下さいませ」「フェリシア、行こう」「はい」フェリシアはエルバートにそう短く返事をし、扉前に立っている冷徹そうなルークス皇帝の側近まで歩いて行き、ディアムがルークス皇帝の側近に猫の皆を伝えると、ルークス皇帝の側近は頷き、フェリシアはルークス皇帝の側近と宮殿入りをし、フェリシアの後にエルバート、ディアムが続いて宮殿入りをした。* * *「フェリシア、エルバートよ、顔を上げよ」しばらくして、皇帝の間に入ったフェリシア達はルークス皇帝にそう命じられ、王座の階段の前で跪きながら顔を上げる。「先程、猫が迷い込んだそうだが、フェリシアよ、大事ないか?」ルークス皇帝が問い
last updateLast Updated : 2025-05-20
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24話-2 初めての宮殿でのお勤め。

* * *その後、ルークス皇帝の側近に部屋まで案内される。「こちらがフェリシア様のお部屋となります」ブラン公爵邸のお部屋も勿体ない程の上等なお部屋だけれど、こちらはもっと広く、お姫様ベットも大きく恐れ多い。「お荷物の整理が完了次第、フェリシア様にはエルバート様と共に教官と対面して頂きます」「そして、ルークス皇帝は夜までお忙しいゆえ、夕食からルークス皇帝のお食事を作って頂きます」ルークス皇帝の側近がそう説明し、フェリシアは承諾する。すると、側近が伝え忘れていたと言い、教官はエルバートより8歳年上で、クランドールの先輩にあたることを加えて伝え、去って行く。そして荷物の整理が完了後、フェリシアはエルバートと共に教官の元に向かった。* * *やがて、中庭に辿り着くと、フェリシア達は教官らしき端正な容姿をした壮年の男性の顔を見るなり、驚く。「え、司祭、さま?」フェリシアが問いかけると、男性は穏やかな表情を向ける。「フェリシア様、そしてエルバート様、先日は教会までお礼参りにご足労頂きましたこと、とても感謝致します」「本日よりフェリシア様の教官となりましたユナイト・ハドリーと申します」まさか、教官が司祭様だったなんて。「それでは早速、フェリシア様、貴女の力を確かめたいので、まずはドレスの胸元にあるブローチを右手で掴み、左手をその手に添え、ルシアと唱えて下さい」「分かりました」フェリシアは指示通りブローチを右手で掴み、左手をその手に添え、唱える。「ルシア」その瞬間、右手の甲に印が表れ、神々しい光に包まれる。髪は美しいピンクゴールドに染まり、ベールが付いたリボンで両髪を少し編み込まれ、華やかな美しきドレスをまとった伝説の祓い姫の姿となった。瞳には光が宿った感覚がある。(良かった、ちゃんと祓い姫の姿になれたみたい)「祓い姫になれましたね。ではそのまま、瞳を閉じて祈りを捧げ、リヒドと唱え、力を全解放して下さい」「はい」フェリシアは短く答え、両指を絡め、祈りの形を取
last updateLast Updated : 2025-05-20
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24話-3 初めての宮殿でのお勤め。

そして、舞い上がった土が無くなると目の前の地面に大きな穴が空いていた。エルバートはフェリシアを見ると、フェリシアはその光景を目の当たりにし、両目を見開いて固まっており、彼女の瞳が揺れ、地面に崩れ落ちていく。エルバートはフェリシアの身体をとっさに支えた。「大丈夫か?」「はい。ですが、中庭が……」ルークス皇帝は昨日、フェリシアは大変危険な状態にあると仰っていたが、それを身を持って今、感じた。あのまま、ブラン公爵邸にフェリシアをいさせていたらどうなっていたことか。そのことに1番初めに気づけなかった自分が情けない。ルナイトはにこりと微笑む。「いや、宮殿まで被害が及ばず、これ幸いでしたね」「フェリシア様のお力はよく分かりました。本日はこれにてお開きに致しましょうか」* * *その日の夜。フェリシアはピンクがかった長い黒髪をくくった料理番の姿となり、皇帝の側近に台所にあたる厨房まで案内される。ブラン公爵邸の台所も厨房で広く綺麗だけれど、こちらはもっと広く、なんて高貴な厨房なのだろう。身が竦む思いでいるとシェフが近づいてくる。嫌な顔をされると思うも、シェフは、今日から宜しくお願い致しますね、分からないことがございましたら何なりとお聞き下さいと暖かく迎えてくれて、シェフ含め、料理番18名と共に料理を作り始める。けれど、周りの手際の速さに圧倒してしまう。料理番達は普段から宮殿に仕える高貴な者達の料理を、シェフはルークス皇帝の料理を全て任されているものの、今日からは自分がメインを作る為、後の前菜やスープ、デザート等をシェフが作るのだとここに来る前に皇帝の側近から聞いている。自分は令嬢となったけれど、シェフからしたら素人。そんな素人にルークス皇帝の料理を任せるのは嫌だろう。なのに、嫌み一つも言わず、料理作りを全うしている。それに比べ、自分ときたら、猫に加え、中庭まで崩壊させ、ご迷惑ばかり掛けてしまっている。せめて
last updateLast Updated : 2025-05-21
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24話-4 初めての宮殿でのお勤め。

* * *ルークス皇帝の料理出しが無事に済むと、フェリシアはユナイトに中庭のことを謝罪したいとエルバートに申し出て、ユナイトを食事室に呼び、エルバートとユナイトと共に夕ご飯こと夕食を食べる。フェリシアとエルバートの前にはルークス皇帝の鶏の白煮込みをアレンジしたもの、ユナイトの前には質素な肉の煮込み料理が置かれている。「あの、ユナイト教官だけ料理が違うのですが」「さすがにルークス皇帝の食事を任されているフェリシア様のお料理を食べる訳には参りません」エルバートに冷ややかな目線を注がれる中、ユナイトは答え、続いて問いかける。「それで、なぜ、私と共に食事を?」「中庭のことを謝りたくて……。ユナイト教官、今日はその、申し訳ありませんでした」「いえ、中庭の修復は時間が掛かりましたが、きちんと直りましたのでお気になさらず」ユナイトはエルバートの顔を見る。「エルバート様も私に何かおありのようですね」「フェリシアの両親について聞きたい」フェリシアは両目を見張る。自分の両親のこと?「やはり、お調べになられておいででしたか」「今は司祭をしておりますが、昔、自分はエルバート様と同じく軍に所属しておりました」「え」フェリシアは驚きの声を出す。「そして、同じ初冬にフェリシア様達が討伐なされた魔がいた神隠しに合うと恐れられた帝都郊外の森までフェリシア様の父であるロイス様、母のラン様、そして亡き前皇帝と共に魔を討伐しに向かうも軍の皆はやられていき」「ロイス様に、お前はまだ若いから逃げろと、ラン様に、ここは私達に任せて、決して振り返らないでと言われ従い、逃げるも途中で約束を破り、振り返ると」ルナイトの顔が儚い表情に変わる。「ロイス様達は前皇帝を庇い、前皇帝も乗っ取られ、亡くなったのを目撃しました」その事実を聞き、フェリシアとエルバートは両目を見開く。「その為、自分のみが生き延びたことを悔やみ、せめて供養したいとブラン公爵邸の近くにある教会の司祭になりたいと自ら志願し」「フ
last updateLast Updated : 2025-05-21
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25話-1 月を共に見れたなら。

* * *早朝、目を覚ますと、宮殿の部屋の天井が両目に映った。そうだ、昨日から宮殿でのお勤めが始まったのだった。(昨晩は食事室で両親への想いが一気に溢れ、ご主人さまの前で泣き崩れてしまったけれど)今日からは決して泣かず、気を引き締めて、頑張らなければ。そう心に決め、フェリシアはルークス皇帝の朝食、チーズトマトを合わせて焼いたキャセロールを厨房で作り、ルークス皇帝にお出しし、その後はユナイトと礼拝堂で祈りを捧げ、アルカディアの書を読んで午前は終わり、午後からは中庭でブローチを掴みながら瞳を閉じ、脳内イメージをして光の強さを感じるという祓い姫の力の制御の仕方を伝授され、治癒の呪文も教わり、特訓後。ルークス皇帝の夕食をお出しする時、このような小汚い姿ではいけないと、浴場に向かう。浴場の場所は、昨晩、寝る前に明日よりルークス皇帝の側近の代わりに案内やお世話を務めることになったと、双子のメイド、シエルとノエルが挨拶に来た際に聞いており、加えて、シエル達に令嬢はお背中をお流しされるのが常識だと言われたものの、いいです、一人で大丈夫です、と拒んでしまったのだけれど、(今になって不安になってきたわ。大丈夫かしら)そう心の中で思いながら廊下を歩いていると、風呂上がりのエルバートを見かけた。フェリシアはサッと壁に隠れる。思わずこんな姿を見られたくなくて隠れてしまったけれど、(濡れた長髪を下ろしたご主人さま、いつもよりも色っぽくてお美しい……)やがて、エルバートの姿が見えなくなり、フェリシアはハっと我に返る。(何を惚けているの。早く入らなければ)フェリシアは隠れるのを止め、浴場の扉まで歩いて行き、扉を開ける。立派な脱衣所。カーテンで仕切られ、その向こう側に浴場があるよう。そう認識したフェリシアは脱衣所でドレスを脱ぎ、床を歩いていき、カーテンを開けた。浴場は大理石で囲まれ美しく豪華で、まるで湖のように広く、床も同じ石で埋め尽くされ、天井も想像以上に高い。こんな身分不相応な自分が浸かって
last updateLast Updated : 2025-05-21
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25話-2 月を共に見れたなら。

呪文を唱えた直後、想像以上の光が発動し、右手の傷が塞がった。フェリシアは冷や汗をかく。力は安易に使わない方がいいみたい。良かった、誰も入っていなくて。そう安堵した時、だった。男性達の笑い声が聞こえてきた。え、こちらに向かっている?普通は男女分かれているけれど、そういえば浴室ここしかなかった。(ここはもしかして、男女混浴? 男性達の声しか聞こえないし、時間も分かれているのかしら?)どうしよう、知らずに入ってしまった……。体を沈ませ隠れる?でもそれだと少しの間しか保てない。誰か、助けて。そう思った瞬間、「フェリシア様」カーテンの向こう側から双子のメイドの一人、シエル・ホワイトの声が聞こえた。「早くこちらに」双子の傍らノエル・ホワイトの声も続けて聞こえ、フェリシアは浴場から出て、カーテンの向こう側まで歩いていく。(昨晩拒んだのに助けに来てくれるだなんて)「フェリシア様、このような事態となり、大変申し訳ありません」シエルがそう言うと、ノエルと共に深々と頭を下げる。「いえ、頭をお上げ下さい。わたしの方こそ、昨晩拒んでしまい、申し訳ありませんでした」お互いに謝罪を済ませると、フェリシアはシエル達に体を拭いてもらい、下着とドレスを素早く着せてもらう。「シエルさん、ノエルさん、ありがとうございます」「当然です」フェリシアのお礼の言葉にシエル達は同時にそう返し、ノエルが脱衣所の扉を開ける。するとエルバートがなぜか立っていた。 「ご、ご主人、さま?」「お前の力の気配を感じて駆け付けた」「この浴場は男性が夜、女性が朝に入る取り決めがさせているが、どうやら知らなかったようだな」「お前達、何をやっていた!」エルバートはシエル達に向かって怒鳴る。「エルバート様、申し訳御座いません」シエル達は同時にそう謝罪し、頭を下げる。「ご主人さま、もう
last updateLast Updated : 2025-05-22
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25話-3 月を共に見れたなら。

するとエルバートがとっさにフェリシアの体を支え、軍服を脱いで上から羽織らせ、そのままお姫様抱っこする。「ご、ご主人さま!?」「今、ルークス皇帝の側近が男達を引き付けている。今の内に行くぞ」エルバートは背を向け、フェリシアをお姫様抱っこしたまま歩き出した。その後、フェリシアはエルバートに部屋の前まで送り届けられ、エルバートが執務室に戻ろうとした時だった。ルークス皇帝が駆けて来る。「フェリシアよ、大事ないか?」ルークス皇帝にまでこんな姿を見られ、迷惑を掛けてしまうだなんて。「は、はい。この度はご迷惑を……」「謝罪は不要だ。夕食まで時間はまだあるによって、しばし休まれよ」フェリシアの言葉をルークス皇帝が遮る。「ルークス皇帝、側近を派遣して下さったこと、恩に切ります」「いや、至極当然のことをしたまでだ」エルバートはルークス皇帝と一瞬、なぜか見つめ合う。そして、エルバートはルークス皇帝を皇帝の間までお送りすると、ルークス皇帝と共に廊下を歩いて行った。* * *それからフェリシアは部屋で休み、厨房で作った夕食の仔羊のクリーム煮込みをルークス皇帝にお出しし、翌日からはユナイトに祓い姫の力の制御の仕方と治癒の呪文に加え、攻撃と守りの呪文も教わりつつ、最終奥義でエルバートと使った呪文も特訓し、腕を磨く。更にそれと合わせルークス皇帝の食事も朝昼晩と作り、目まぐるしい毎日が過ぎていき――、10日後。「ルークス皇帝がお呼びでございます」ルークス皇帝の側近が部屋までフェリシアを呼びに訪れた。フェリシアはその側近と共にルークス皇帝の寝室まで向かう。そして扉を開けてもらい、中に入る。神々しい豪華な寝室にフェリシアは臆すると扉は閉められ、フェリシアは恐る恐るルークス皇帝のお姿が見える場所まで歩いて行く。するとルークス皇帝は窓の前に立っていた。「ルークス皇帝、フェリシアにございます。今宵はお招き頂きまして、誠にありがとうございます」「フェリシアよ、肩苦しい挨拶
last updateLast Updated : 2025-05-22
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