* * *エルバートは執務室の椅子に座りながら、ハッとする。なんだ? このただならぬ気配は。医務室か?エルバートは執務室から飛び出し、ディアムと共に医務室へと駆け付ける。「何があった?」エルバートは見張りの兵に問う。「エルバート様! 医師が寝室までルークス皇帝のご様子を見に出られ、見張りを続けていたところ、医務室内で邪気が発生し、扉が開かず、只今、入室出来ない状況でございます!」「そうか、退いていろ」エルバートは扉に右手を当て、祓いの力を使い、くくった長髪が靡くと、扉を勢いよく開ける。すると床に倒れるフェリシアの姿が両目に映った。「フェリシア!!」エルバートは叫ぶと同時に駆けていき、フェリシアを抱き起こす。魔はいないようだが、魔に弾き飛ばされ触れた箇所から邪気が溢れ、体全体を邪気のようなものに包まれているようだ。エルバートはフェリシアを抱き起こしたまま祓いの力を使う。するとフェリシアの頭痛は治まり、楽になったようだった。(……? 何かを持っている?)エルバートは両目を見開く。「これは私が帝都で渡したブレスレット……」恐らく、中庭の時にネックレスを失くしたのと同じくブレスレットを失くし、探す為にベットから一人で下りたのだろう。エルバートは切なげな顔をする。「もう私のことを思い出そうと頑張らなくていい」エルバートはフェリシアの左腕にブレスレットを付けて持ち上げ、ベットまで運び、寝かす。それから椅子に座るとフェリシアが、か弱き声で発した。「…………花が、見たい」その言葉で、エルバートは希望を感じた。(もしかしたら、私の記憶はフェリシアの心の奥底に残っているのかもしれない)そして、もう一度、あの咲く花を彼女と共に見れたなら。「――あぁ
Last Updated : 2025-04-30 Read more