個室の中。皆が楽しそうに笑い合う様子を見ても、透子はうるさいとは思わなかった。むしろ、むしろ、大地に根を下ろしたような、確かな安心感に包まれていた。結婚してからの二年、彼女の交友関係は完全に途絶え、蓮司のためだけに回っていた。こんなにも生き生きとした生活に触れるのは、いったい何年ぶりのことだろう。グラスを手に取り、一口飲むと、その表情はくつろいでいて、自然な笑みが浮かんでいた。彼女は化粧室に行くふりをしてこっそり会計を済ませた。皆がそれに気付くと、口々に割り勘にしようと言い出したが、透子は微笑んで首を横に振った。「私たちが誘ったんだから、奢らせるわけにはいかないよ。みんなで割り勘にしましょう」同僚の一人が言った。「分かってるわ。でも今回は私に払わせて。次からは割り勘にしましょうね。もう二度と誘わないなんて言わないでよね?」透子は笑った。結局、誰も彼女の意思を覆せず、透子はさらに、少し酔いすぎた同僚のためにタクシーを手配するなど、進んで面倒を見た。「わあ、透子さん、最初は冷たい人だと思ってたけど、こんなに優しくて、面倒見がいい人だったなんて思わなかった」同僚は感心したように言った。透子は微笑んで言った。「たいしたことじゃないわ」「でも、普通ここまで気の回る人ってなかなかいないよ。酔っぱらった同僚に、帰ったら温かい牛乳か濃いめのお茶で酔いを覚ましなさいってアドバイスまでしてたじゃん」相手は笑った。その言葉に透子は静かに微笑むだけだった。こうした無意識の気遣いの数々は──全て蓮司の世話をすることで身につけたものだった。「それじゃ、私も帰りますね。お気をつけて」同僚はタクシーに乗り込み、手を振った。「ええ、また明日」透子も手を振り、見送った。皆が去った後、透子はタクシーを拾わず、心地よい夜風に吹かれながら、ゆっくりと道を歩いた。蓮司の元を離れ、あの家を出てからというもの、呼吸するだけでさえ自由で心地よい。この生活がとても気に入っていた。もう二度とあの頃には戻りたくない。しかし、彼の執拗なつきまといを思い浮かべると、また眉間に皺が寄った。とはいえ、離婚はもう決まったことだ。新井のお爺さんも約束してくれたのだから、何か問題が起きるはずがない。透子は深く息を吸い込んだ。ちょうど
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