「新井のお爺さんに投資の話を持ちかけたところ、快く引き受けてくださって。その時に、蓮司と結婚する気はないかと聞かれたんです。私、ずっと彼のことが好きだったから、舞い上がってしまって、つい承諾してしまいました。投資と結婚は、因果関係ではなくて並列関係なんです。ただ、私が結婚を承諾したことで、エンジェル投資が個人的なものに変わっただけで。お爺様からの個人的な結納金、と解釈することもできます。でも、全額は受け取らずに、利益は折半にしました」透子は一気に事の経緯を説明し終えた。駿は呆然と彼女を見つめ、次第に理性が戻り、冷静さを取り戻していった。肩に置かれた男の手をそっと下ろすと、透子は再び口を開いた。「先輩、私が新井と結婚したのは、先輩とは何の関係もありません。それに、今どき、お爺様だって無理強いなんてできませんよね。私は確かに、自分の意志で結婚して、そのために大きな代償を払ったんです」駿はただじっと透子を見つめていた。透子はシートベルトを外し、最後にこう言った。「今日は送ってくださってありがとうございました。週末はゆっくり怪我を治してください。それから、私の結婚と離婚については、理恵にはまだ内緒にしておいてください。離婚が正式に成立したら、私がちゃんと説明しますから」駿が頷くと、透子は感謝の笑みを浮かべ、車を降りて手を振って別れを告げた。団地に向かって歩いていく彼女の後ろ姿を、駿はずっと見つめていた。彼女の姿が見えなくなっても、彼はまだその場を動かなかった。透子は自分のために蓮司と結婚したわけではない。では、なぜ新井のお爺さんは透子に申し訳ないと言ったのだろうか。この提案をしたことで、透子を二年間も苦しめてしまったからだろうか。駿はハンドルを握りしめた。機会を見つけて、新井のお爺さんに当時のことを詳しく聞く必要がある。そうすれば、これが本当に因果関係だったのか、それとも並列関係だったのかが分かるはずだ。……週末の二日間、蓮司は実家に連れ戻されていた。新井のお爺さんは、彼がまた落ち着きなく人を探しに行くだろうと思っていた。しかし、結果はその真逆の態度だった。部屋に閉じこもり、ろくに飲み食いもせず、話すことも拒み、ノックにも応じない。部屋の外。新井のお爺さんは腕を後ろで組み、傍らの執事が持つ食
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