「分かったわ……じゃあ、こっちで航空券をキャンセルしておくわね」透子が尋ねた。「どうしたの?なんだか元気がないみたい。お兄さんに予定を決められるのが嫌なの?お金を出してもらうのが落ち着かないとか?」理恵は答えた。「違うわ。ただ、ちょっとしみじみ考えていただけ」理恵は感慨深げに言った。「まったく、やっぱりこの世はお金があるだけじゃ駄目ね。権力もなきゃいけないんだわ。しかも、国内だけじゃなく、世界中で通用する権力が必要なのよ。そうでなきゃ、どうしても限界があるもの」国内の旅行なら、私のお兄ちゃんだってすぐに手配できる。だが、国外となると、どうしても少し時間がかかってしまう。その点、雅人は違った。もともと国外に強大な力を持っているため、こんな手配など朝飯前なのだ。透子は、親友がそんなことを考えていたとは思わず、笑いながら言った。「理恵だって、権力の象徴みたいなものでしょう」理恵は言った。「それとは違うわよ。私の持つ力なんて、橘さんとは比べものにならないもの。もうこの話はやめましょ。あとで迎えに行くから、二人で買い物に行こうよ」透子は「ええ」と答えて電話を切り、身支度を整えて理恵と出かけた。ところが、二人で出かけている途中、新井家の執事から電話がかかってきた。今回はさすがに、厚かましくもう一度蓮司のために料理を作ってほしいと頼んできたわけではなかった。蓮司の体を食事で整えるため、新井家の料理人に調理法を教えてほしいと、謙虚な態度で頼み込んできたのだ。執事は切々と頼み、十分な謝礼も支払うと言った。透子はそれを聞いて答えた。「高橋さん、そんなに気を遣わないでください。お金なんていりません。少し話せば済むことですし、今、そちらの料理人に電話を代わってもらえれば、私から説明しますから。……え、私に直接来てほしいんですか?でも、私が料理をする時も、普通の調味料しか使っていません。何か特別なところを教えてほしいと言われても、正直、自分では分からないんです。分かりました。では、伺います。ええ、今からで大丈夫です。明日は時間がありませんから」そう言って電話を切ると、透子は事情を理恵に話し、新井家の本邸へ向かうため車を引き返してほしいと頼んだ。理恵は眉間にしわを寄せ、訝しげに言った。「あそこの料理人の腕って、そんなにひどいの
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