「プレゼント、受け取ってくれ。今日のコーヒーはいい。また今度、おごってくれれば」聡はかすかに微笑んで言った。「こんな高価なもの、いただけません。どうかお納めください」透子は慌てて言った。「見もしないで高価だなんて」聡は言った。「柚木社長がくださるものですから、きっと素晴らしいものに違いありません」透子は言った。「お世辞がうまいな。いいから、受け取れ。大したものじゃない」聡は自らギフトバッグを手に取り、透子の手に置いた。他の人間からのお世辞なら、魂胆が見え透いていて不快に感じただろう。だが、透子からであれば、それが意図的なもので、どこか皮肉めいた響きさえあることを、彼は分かっていた。「プレゼントを受け取ったからには、もう俺のことを誤解したり、陰で悪口を言ったりするのはなしだぞ」聡は笑って、背を向けた。透子は言葉を失った。理恵が、自分が聡について言った悪口を、本人に見せたに違いない。そう思うと、透子は気まずさで固まってしまった。プレゼントを抱えたまま、男の背中を見つめ、二、三歩駆け寄って返そうとしたが、相手の振る手に遮られた。「僕が見送るから、君は席に戻っていいよ」駿が言った。透子は頷くしかなかった。角に消えていく男の姿を最後にもう一度見つめ、部署へと戻った。歩きながら、箱からプレゼントを取り出して確認する。青いシルクのリボンが結ばれた、青と金色の香水の瓶だった。謝罪のつもりなのだろうか?あの性格の悪い柚木聡が、自分から謝るなんて。土曜日のことも、からかったわけではないと説明してくれた。ということは、彼も救いようのないほど性悪というわけではなく、少なくとも過ちを認めることはできるらしい。でも、土曜日にどうしてあんなに自分を探していたのだろう?からかうためでなかったのなら、一体なぜ?聡は何も言わなかったし、きっと大したことではないのだろうと、透子は深く考えなかった。席に着くと、周りの同僚たちからゴシップ好きの囁き声が聞こえてきた。「わあ、柚木社長がわざわざ会社までプレゼントを届けに?」「透子さん、二人は付き合ってるの?」「柚木社長って、イケメンでお金持ちだし、透子さんって本当に幸せ者ね。桐生社長もあなたのことが好きみたいだし、天性の社長夫人体質なのかしら!」
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