翼からのメッセージ。【恩に着るぜ、親友!これで勝ったも同然だ!事が済んだら飯おごるからな!】理恵からのメッセージ。【お兄ちゃん、仕事早すぎ!やっぱり頼りになるわ】聡は友人には返信せず、妹にだけ返した。来週には家に戻ってこい、いつまでも透子のところで厄介になるな、と。向こうで、理恵は兄からの非難のメッセージを見て、憤然と反論した。だが、それが母からの命令だと知り、新井家との縁談もなくなった今、確かに外にいる理由はないと悟った。透子にそう伝えると、透子は言った。「いいのよ、気にしないで。いつでもまた遊びに来て」理恵は感動し、彼女を抱きしめて言った。「いっそ、透子がうちに住めばいいのに。うちの両親、結構オープンだから気にしないわよ」透子は微笑んで首を横に振った。「また今度、ご両親にご挨拶に伺うわ」理恵は諦めざるを得なかった。親友が妙に「礼儀正しい」ことを知っていたし、何よりも、家には兄がいる。透子が来たがるはずもなかった。家に戻ることになったので、理恵はもし蓮司がまた探しに来たら、いつでも連絡するようにと念を押した。透子は親友の心配そうな顔を見て、微笑んで言った。「新井家の執事さんから聞いたわ。新井は今、ボディガードに見張られてるし、朝比奈も半月は拘留されるから、当分は危険はないって」執事は具体的な例も話してくれた。例えば金曜の退勤後、蓮司が駆けつけようとしたこと。きっと美月のことで文句を言いに来たのだろう。結局、彼は来られず、ただ一億円を振り込んで事を収めただけだった。てっきり、蓮司は美月の拘留期間を短くすると信じていたが、それ叶わなかった。きっと、聡のおかげだろう。彼が止めてくれたのだ。あの性格の悪い男のことを思い、透子は心の中でため息をついた。腹立たしいのは事実だが、感謝しなければならないのも事実だ。時間を見つけて、何かうまい方法を考えなければ。感謝の気持ちは伝えたいが、あの男に付け入る隙を与えたり、またからかわれたりするのはごめんだ。困ったものだ。人はどうして、あそこまで自意識過剰になれるのだろう。どうして、見ず知らずの相手にそこまで絡んで、一言嫌味を言わないと気が済まないのだろうか。透子は昨日、聡が何度も電話をかけてきたことを思い出し、思わず腕に鳥肌が立った。よほどの
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