All Chapters of 生きた魔モノの開き方: Chapter 71 - Chapter 80

81 Chapters

71品目:あなたを捧ぐウエディングケーキ ~部位の採取~

「どこがいいかな。目玉、鼻、耳、唇、乳頭、臍、性器の先端、手足の指、小腸……」  観客たちが固唾を吞んで見守る。 「目玉にしようか。宝石のような虹彩と、白目のコントラストが美しい」  刃先を下にして、ナイフが垂直に立てられる。それがググとわずかに沈み、エルドリスの手首の返しと共に回転する。  観客席から喘ぐような吐息が聞こえてくる。 「次はそうだな……唇にしよう。もう二度と、私に裏切りの言葉を吐かないように」  エルドリスの台詞が演出なのか何なのか、僕にはわからない。ただ彼女の言葉は観客たちの共感を呼んだ。  白い指先が、唇のあるだろう場所を優しく撫でる。 その同じ場所にナイフの刃先を当てて、魚を三枚に下ろすかのように、見えない唇を切り取っていく。 「さあ、どうするか。次は……この慎ましやかな乳頭にしよう」  男女問わず何割かの観客たちは顔を逸らし、逆にもう何割かの観客たちは前のめりになった。  エルドリスの指先が拘束台の上で小さな何かを摘まみ上げる。そしてその指先の下を、ナイフの刃が滑っていった。 僕には何も見えないはずなのに、その一瞬の光景がパッと脳裏に浮かんで思わず顔を背けてしまう。  人間の乳頭はふたつある。だからエルドリスはもう一度同じ動作を繰り返したが、二度目はまともに見られなかった。 「次は……耳だな。耳の形状は繊細だ。さぞや美しい飾りとなるだろう」  エルドリスは拘束台の上の空間に手を伸ばし、耳介と思われる場所に指を掛けた。その指が、耳介を引っ張るように動く。ナイフを入れる耳の
last updateLast Updated : 2025-06-16
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72品目:あなたを捧ぐウエディングケーキ ~食材の加工~

 調理台にやってきたエルドリスは、僕にガラス瓶を手渡した。その中には幻《まぼろし》のリュネットから採取した血液が入っているはずだったが、僕の目には空の瓶にしか見えない。 「助手君、用意してあるホイップクリームにこれを混ぜてくれ。ボウルひとつにつき大さじ2ずつだ」「わかりました」「混ぜる回数は二十回。ホイップの気泡を崩さないよう、底から大きく返すようにかき混ぜること」「はいっ」  僕は魔導冷蔵庫を開けた。そこにはあらかじめ泡立てておいたホイップクリームが、五つのボウルに分けて入れてある。そのひとつを取り出して、エルドリスの邪魔にならないよう調理台の隅に置く。  透明な瓶から透明な液体をスプーンで掬い、ひとさじ、ふたさじと投入する。何も変化がないように見えたが、観客席から興奮したざわめきが漏れた。混ぜ始めると歓声が上がる。 僕は気圧されながらも二十回を頭の中で数え上げ、次のボウルに取り掛かった。  一方、エルドリスは採取した部位の処理を行っていた。ナイフで切った部位をひとつずつ取り上げて、布巾で拭いていく。おそらく血などをぬぐっているのだろう。その手つきはまるで宝石を磨くかのようだった。 「さて、小腸の処理に取り掛かる。まず内部の排泄物を完全に洗い流さなければならない」  そう言いながらエルドリスは、僕には見えない何かを両手で抱えるようにシンクへ運んだ。 「この洗浄が甘いと雑味や臭みが出る。ゆえに丁寧に、中をすすいでいく」  不思議な光景だった。蛇口から出た水は真っ直ぐ下に流れてシンクへ打ち当たっている。もしくはエルドリスの手に当たっている。長い小腸の中を通っているようには、とても見えない。  けれど、エルドリスの手つきは確かに水で小腸の内部を洗い流しているのだ。彼女の手を見ていると、僕の目に見えている水のほうが、流れる方向を誤っ
last updateLast Updated : 2025-06-17
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73品目:あなたを捧ぐウエディングケーキ ~デコレーション~

 僕は一番大きなスポンジを自分の前に置き、パレットナイフでクリームを塗り始めた。スポンジの下には回転台があるので、これを回しながらクリームを均一に塗り広げていく。  だが、ケーキ作りなどしたことのない僕の手つきは、どうしてもぎこちなくなってしまう。隣では、エルドリスが回転台もなしに中央段と最上段のスポンジを次々と仕上げていく。その技術は圧倒的で、僕が最下段を塗り終える前に、彼女はもう作業を完了していた。 「助手君、代わろう」  エルドリスがやってきて、僕は立ち位置を明け渡す。任せるぞと言われたのに、クリームでスポンジを覆うところまでしかできなかった。これを均一に整えるのが驚くほど難しい。 だが、どのみちエルドリスの仕上げは必要だっただろうから、これを悔やんでも仕方ない。 「ホイップクリームを絞り袋に詰めてくれ」「はいっ」  僕はただ、自分にできることを精一杯やるのみだ。  端を切った油紙の袋に、へらでクリームを詰めていく。できるだけ手早く。詰めるだけなら美的センスも問われない。  エルドリスはその間にも回転台を素早く回し、僕の塗ったクリームの凹凸をみるみるうちに平らにならしていった。 「よし、これでいい」  クリームが均一に塗られた三つの土台を、エルドリスは大皿の上に慎重に積み上げていく。最下段などは直径五十センチほどの大きさで数キログラムはありそうだったが、パレットナイフ二本でさらりと移動させてしまう様は、それだけでひとつのパフォーマンスのようだった。  三段重ねの美しい土台が積み上がると、彼女は僕から絞り袋を受け取り、デコレーションを始めた。  土台の側面に、らせん状にクリームを絞り出し、うねるような波形のフリルを重ねていく。フリルは一定の幅でリズミカルに繰り返され、まる
last updateLast Updated : 2025-06-18
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74品目:あなたを捧ぐウエディングケーキ ~ケーキ入刀~

 観客席から土石流のように拍手喝采がなだれ込んだ。熱狂が会場を覆い尽くし、耳を塞ぎたくなるほどだった。  しかし、最初に口上を述べた貴族風の男が立ち上がると、場内はすぐに静まり返った。 「それでは、ケーキ入刀とまいりましょう」  その言葉を合図としたかのように、会場を煌々と照らしていた魔導灯が消灯した。 一瞬にして視界は黒一色となる。  なんだ、これは……。 「エルドリス、いますか!?」  返事がなかった。だが、数メートル先にいるはずなのだ。 彼女のもとへ向かおうと、闇の中に足を踏み出した瞬間、何かにつまずいて派手に転んだ。両膝と両手をしたたか地面に打ちつける。  直後、再び魔導灯が点灯した。暴力的なほどの眩しさ。それを手で遮りながら顔を上げると、そこには純白のウエディングドレスを身にまとったエルドリスが立っていた。その隣には、純白のタキシードを着たあの貴族風の男。  いつもの黒のコック服が消え去り、露わになった肩とデコルテ。白く輝く素肌の美しさはエロティシズムよりもサンクティティ(聖性)を想起させ、女たちの羨望の眼差しを惹きつける。 頭頂部から垂れるレースのヴェールは彼女の美貌に儚げな要素を添えて、男たちの庇護欲を掻き立てる。  会場中が一瞬にして、至高の花嫁の登場に目を奪われた。  だが当エルドリスはそんなことには気づかない様子で、心底不愉快そうに自分のドレスを見回していた。タキシードの男がエルドリスの腰を引き寄せようとするのを敏感に察知し、その指先が触れる前に即座に距離を取る。 「何の真似だ」  エルドリスが低い声で言い、男を睨みつける。この声はおそらく、観客席までは届いていない。
last updateLast Updated : 2025-06-19
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75品目:あなたを捧ぐウエディングケーキ ~ファーストバイト~

 白仮面の若い男が現れて、入刀されたケーキから二皿分を取り分けた。そのうちのひと皿を純白のタキシードを着た男が手に取り、フォークでひと口分掬って僕の口元へと差し出す。「……え、何です?」 僕が不思議に思って尋ねると、男は穏やかに返す。「ケーキ入刀後の恒例だよ。ファーストバイト。新郎新婦が互いにケーキを食べさせ合う儀式だ。これもエルドリスでなくきみがやるんだろう?」「もちろんです」 そう答えつつも、初めて聞くファーストバイトという言葉に僕は少し戸惑った。食べさせ合うだなんて変な感じだ。 僕はもうひと皿を取り、同じようにフォークでひと口分を掬って男の口元へ向ける。 男が僕の持つフォークにかぶりついた。僕も真似をして、男の持つフォークを口に入れる。 こういうのを信頼のない者同士でやるのは怖いものだなと思った。だって相手はフォークを少し動かして、僕の喉を突くことだってできてしまう。 フォークがゆっくりと引き抜かれる。僕も男の口からフォークを引き抜く。 咀嚼して、口内に広がったのは、想像を遥かに超える美味しさだった。さすが、エルドリスが作っただけある。ホイップクリームは甘すぎなくて食べやすく、スポンジはふわりと軽い。中に挟まれたフルーツの食感と甘酸っぱさがいいアクセントになっている。 舌の上で味わいながら考える。このケーキには本当に、イルゼフォリアの胞子が見せる、"殺したいほど愛しい人"の幻の血肉が含まれているのだろうか。そんな異質な味も臭いもまったく感じない。 しかし、どうしても気になっていることがある。エルドリスの行ったデコレーションの終盤、僅かな間だけ自分にも見えた、碧い光彩を持つ目玉。あれの持ち主が自分にとって"殺したいほど愛しい人"なのだとしたら、それは―― 僕は目を閉じて深呼吸をした。もしこのケーキが本当にその人物の一部を含んでいるのなら、その記憶が再生できるかもしれない。 口の中のケーキを、もうひとつの胃――識嚥《シエ》へと落とした。 そして自分も闇の中に落ちる。真っ暗闇で光が明滅し、僕の思考を誰かの記憶が奪っていく。――――― 夜の街道。 大雨が降っている。 びしょ濡れで冷たい。 息を切らして走る。 心臓が破裂しそうだ。 引き裂かれた女の腹。 内臓がほとんどない。 肋骨に守られた心臓と、潰れた肺と、千切れた腸の一
last updateLast Updated : 2025-06-20
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76題目:生きた魔者の開き方

 観客たちが次々と席を立ち、座席横から伸びる通路の奥へと消えていく。 やがて観客席はもぬけの殻となった。  男がパチンと指を鳴らす。 するとエルドリスと僕のドレスは元の白いエプロンに戻り、それぞれが着ていた黒のコック服と看守の制服も元通りになる。  男がエルドリスに向き直った。 「お疲れさま。素晴らしい調理だったよ」「それはどうも」  エルドリスが形式ばかりの会釈をする。 「……やはり、きみとケーキを切りたかったな」「ただのごっこ遊びだろう」「心外だね。初めてきみの料理を食べた日から、きみのことを忘れたことはないよ」  エルドリスの目が探るように男の白仮面を見る。だが男の表情を窺い知るのは難しい。 「店に来た客か?」「いいや、セリカは遠いからね。それよりも、心当たりがあるだろう?」「まどろっこしい言い方はよせ。お前は誰だ」「このケーキも絶品だった。できることなら観客たちに分けたりせず、独り占めしたいくらいだ」「質問に答えろ」「あの拘束台の上、私の目には誰が映っていたと思う?」「興味はない」「きみだよ、エルドリス。ああ、やはりきみは、生きていても死んでいても美しいな」「……変態め」「きみが言うのかい? 私ときみとの違いは、口に出して言うか言わないかの違いだけじゃないか」  男はウエディングケーキの最上段に手を伸ばした。 僕にもはっきりとソレが見えた。 男の指が、碧い光彩を持つ目玉を掴み取り、口へと運ぶ。ねっとりと、味わうように顎を動かす。 「もっと早くにこうしたかった。反対する側近たち
last updateLast Updated : 2025-06-21
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77交目:刃と応用

 エルドリスがナイフを構え、皇帝レオネウスへと踏み込もうとした瞬間、白仮面の男たちが一斉に彼女の前へ立ちはだかった。 「チッ……そうすんなりとは、いかないか」  疾風の如く駆け出し、正面の白仮面の男へナイフを振り下ろす。男は素早く横に身をかわし、掌底でエルドリスの手首を狙った。彼女はわずかに体を捻りながら攻撃をかわし、返す刃で男の脇腹を斬り裂く。男が痛みに呻く隙にナイフを構え直し、刃先を急所へと向ける。  その刹那、背後から別の男が拳を突き出す。 「鉄の守護《アイアンウォード》!」  僕は咄嗟に防御魔法を展開して、エルドリスの背部にオレンジ色の魔法陣型の防御結界を張る。その結界が男の拳を弾いた。 「爆発的な一撃《バーストブロウ》!」  別の男と入れ替わりで突如その場に現れたネイヴァンが、赤い魔力をまとった一撃を繰り出す。彼は離れた観客席にいたはずだが、戦闘開始を見て交換転移《ステップジャンプ》で援護に来たらしい。  振り抜かれた拳が、エルドリスの背後にいた男の白仮面を打ち砕く。破片が飛び散り、男の体は数メートル先へ吹き飛ばされて、床をズザザザと滑ったあと、動かなくなった。  さらに迫りくる白仮面の男たち。ネイヴァンが次々と拳を振るい、エルドリスが華麗にナイフをひらめかせる。  僕は交戦する男たちの隙を狙い、俊足の鎖《ラピッドチェイン》でひとりずつ拘束していく。ネイヴァンに白仮面ごと顔面を砕かれたり、エルドリスに急所を刺されるよりは彼らもマシだろう。彼らに直接の恨みがあるわけではない。動きを封じられればそれでいい。  ネイヴァンと背中が触れた。僕は前方の敵を睨みつけたまま呟く。 「皇帝に盾突くなんて、僕たちおしまいですね。なんだか笑えてきま
last updateLast Updated : 2025-06-22
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78譲目:あなたへ捧ぐ

「飛ばしたのか……? どこへ飛ばした」  エルドリスの声音は静かだが怒気を孕んでいる。レオネウスは薄く笑みを浮かべながら答えた。 「心配ないよ。殺すには惜しい人材だからね。帝都に帰ってもらっただけだ」  それを聞いて、僕はネイヴァンの無事をひとまず安堵するとともに切迫感を覚えた。命の心配はなさそうだが、これでネイヴァンは完全に戦線離脱だ。この場所の座標がわからない以上、転移魔法を操る彼であっても、もうここには戻ってこられない。  ここからはエルドリスとふたりで戦うしかない。  覚悟を胸にエルドリスに視線を移すと、レオネウスと対峙してじりじり距離を詰めようとする彼女の動きが微妙に左足を庇っていることに気づいた。怪我をしているのかもしれない。  僕はエルドリスの前方に広範囲の鉄の守護《アイアンウォード》を張った。 不意に現れた防御結界に、エルドリスが怪訝な顔で振り向く。僕はすぐに彼女に駆け寄り、その足元で跪いた。  回復魔法を発動し、彼女の左足首をオレンジ色の魔力で包み込む。 「ああやっぱり、痛めてますね」「大した怪我じゃない」  怪我の度合いは魔力を通じて明白に伝わる。 「いいえ、折れてます。無茶しないでください。あなたは兵士じゃないんです」「お前もだ。ネイヴァンだってそうだった。だが戦う。兵士じゃないことは、無茶をしない理由にはならない」  言い返せないまま、僕は治療を終えて立ち上がった。 エルドリスは前方にいるレオネウスから目を離さないまま、低く言った。 「強化魔法を掛けてくれ」「……駄目です。さっき一度掛けています」
last updateLast Updated : 2025-06-23
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79品目:○○○○○の○○○

 エルドリスはレオネウスへまっすぐ突き進む。途中、白仮面の男が食い止めようと割り込むが、 「邪魔をするな!」  僕の魔力を受け取り強化された彼女は、ナイフの柄尻でいとも容易く殴り飛ばした。男が派手に転倒し、小石のごとく床を転がっていく。次の瞬間――  ガキィイイン!  甲高い音を立てて、ナイフと短剣の刃《やいば》が激しくかち合った。 レオネウスが、ここにきて初めて、僅かに顔をしかめる。 「なるほど、これは防御一辺倒ではいられないな」  エルドリスのナイフが素早く閃き、連続して斬撃を放つ。 レオネウスは巧みに短剣を操り、襲い来る刃先を逸らしながら反撃を試みる。 刃と刃がぶつかり合って悲鳴を上げる。 「答えろ。あのアンフィモルフは本当に人間だったのか」  鋭い突きを放ちながら問う。それをかわしたレオネウスが、意趣返しとばかりに深く踏み込み、 「いいや、アレは私が弓の修練で捕らえた、ただの魔物だ」  突き出した短剣でエルドリスの胸元を狙う。が、彼女は上体を捻りナイフを盾にして軌道を逸らす。 反撃の刃がレオネウスの頬をかすめ、浅い切り傷から赤が一筋、焦げ茶色の肌を伝った。 「では、私とリュネットは無実の罪で捕らえられたと?」  次の瞬間、エルドリスは横へ飛び、サッと姿勢を低くして足払いの奇襲を仕掛ける。 レオネウスは咄嗟に後方へ飛ぶが、追いかけるエルドリスが速い。空中の不安定な体勢のまま打ち合いとなり、エルドリスに押し込まれるように着地する。 「悪かったね。他にきみを終身刑にできうる冤罪を思いつかなくて」  刃が
last updateLast Updated : 2025-06-24
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80日目:新しい日常

「お役人さん、最近うちの畑にモグラが出て困ってるんだ。助けてくれるかい?」  町役場の受付カウンターで書類を整理していた僕が顔を上げると、そこに立っていたのはネイヴァンだった。 「また来たんですか。言っときますけど僕、午後五時まで上がれませんからね」「別に構ってくれなんて言ってないじゃあないか。『エルネット』にランチを食いに来たんだ」「エルドリスにも、また来たのかって言われますよ」「別にいいだろう。帝都から一瞬なんだ」「転移魔法使いは便利でいいですね」「ツンツンするなよ。俺の顔が見られて嬉しいだろう?」「毎週末、見てますけどね」   エルドリスは結局、レオネウスを開かなかった。  開く代わりに、気絶した僕を叩き起こして回復魔法を掛けさせた。 彼女はレオネウスをしこたま辛辣に罵倒したあと、彼の嗜虐趣味とあの夜のアブノーマルな会合を世間にバラさない代わりとして三つの条件を提示した。  ひとつ、エルドリスの罪は冤罪だったと明言して彼女を解放すること。 ふたつ、僕たち三人が皇帝である彼に刃向かったことを不問にすること。 みっつ、僕を第七監獄《グラットリエ》からどこかの町役場へ異動させること。  レオネウスは最後まで気味の悪い笑みを浮かべていたが、仕方なしといった様子で条件を飲んだ。  そして僕は今、エルドリスの故郷――セリカの町の町役場に勤めている。  エルドリスは第七監獄《グラットリエ》から釈放されたあと故郷に戻り、レストラン『エルネット』を再開した。  ネイヴァンは今も帝都で脚本家兼演出家を続けている。生きた魔モノを開く『30分クッキング』は人気調理人だったエルドリスの釈放とともに終わってしまったが、彼は新しい番組を撮り始めた
last updateLast Updated : 2025-06-25
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