大介は深雪に松原商事の状況を漏らした。「社長は今回どうしても成功させるつもりです。十分に警戒しなければなりません」「社長は専門家を多数呼び寄せ、非常に完成度の高い提案をまとめたそうです」「わかったわ」深雪は静かに答えた。「知らせてくれてありがとう」「どう対応されますか?」大介が尋ねた。「それなりの策を考えておいたよ」深雪の声は冷静だった。深雪のチームは連日夜遅くまで残業し、入札案を仕上げていった。深雪自身が細部まで指導し、一切のミスを許さなかった。「みんな、本当にありがとう!この案件、必ず取るわよ!」「はい!」メンバーたちは声を揃えて応えた。一方、静雄は再び深雪に連絡を試みたが、電話は一向に繋がらなかった。彼の胸に失望が広がる。彼女はわざと出ないのか?「深雪、お前はいったい何を考えてるんだ?なぜ俺にこんな仕打ちを......」彼は独り言をつぶやいた。延浩は深雪の準備の様子を陰から見守っていた。毎晩遅くまで働き詰めの彼女を見て、心が痛んだ。助けたいと思うが、余計な負担になるのも恐れていた。「最近無理をしすぎだよ。体を大事にして」「わかってるわ」深雪は笑みを浮かべた。「大丈夫、心配しないで」「僕にできることはない?何でも言ってほしい」「今は特にないわ。必要な時はお願いする」「そうか......でも、本当に身体だけは気をつけて」延浩は頷いた。その頃、芽衣は胸にぽっかり穴があいたような気持ちで、陽翔が潜んでいる場所を訪れ、最近の出来事を打ち明けた。「どうしたんだ?」陽翔は怪訝そうに尋ねた。「なぜいつも静雄と喧嘩ばかりしてる?」「喧嘩なんかしてない。ただ......彼の心にはまだ深雪がいる気がして」芽衣は吐き出した。「考えすぎだ」陽翔は低く言った。「静雄が深雪をまだ想ってるはずがない。今一番愛してるのは姉さんだ」「でも、どんどん冷たくなってる気がするの。もう愛されてないのかも......」芽衣の声は震えていた。「いいか。今は軽率な行動は禁物だ」「じゃあ、いつがいいの?」芽衣は聞いた。「松原商事が完全に崩壊した時だ。その時こそ、俺たちは全てをてにいれるんだ」陽翔の目は鋭く光った。「でも......私は怖いの。静雄が私から離れてしまうのが」「大丈夫だ。静雄は姉さ
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