「もういい!」静雄はとうとう堪忍袋の緒が切れ、大声で怒鳴った。「俺のことに口を出さないでくれませんか!」そう言い捨てて踵を返すと、雅美を一人その場に取り残した。雅美は静雄の決然とした背中を見つめながら、涙をますます激しく流した。胸を押さえ、張り裂けるような痛みに身を震わせた。なぜ息子がこんなふうになってしまったのか。なぜ外の女のために、母親をこうまで拒絶するのか。玄関には芽衣が立っていた。心配そうな表情で彼を迎えた。「静雄、大丈夫なの?」彼女の声は春風のように柔らかく、静雄の苛立ちを鎮めようとしていた。「お義母さんは......もう帰ったの?」静雄は答えず、黙ったままリビングに入り、ソファへ腰を下ろした。そして煙草に火を点けた。芽衣はそっと隣に座り、肩に頭を預けるように抱きついた。「静雄、ごめんなさい。私のせいでお義母さんを怒らせてしまったの」声には泣き声が混じっていた。「お義母さんを責めないで。全部あなたのためを思ってのことなのよ」静雄は煙を吐き出し、虚ろな目を向けた。「芽衣、謝る必要はない。これはお前のせいじゃない。母さんが頑固すぎるだけだ」「でも......」芽衣が言いかけると、静雄は首を振った。「もういい」煙草を灰皿に押し付け、彼女の顔を両手で包み込んだ。「芽衣、信じてくれ。すべて俺が何とかする。お前は心配も自責もいらない。わかった?」その眼差しの深さに、芽衣の心は甘く満たされた。「うん、分かった」彼女は素直に頷いた。静雄は彼女の額にそっと口づけた。「もう遅い。休んでおいで。俺は少し仕事を片づける」「わかったわ。あなたも無理しないでね」芽衣は名残惜しそうに彼を離れ、部屋へと戻っていった。静雄はその背中を見つめ、表情を曇らせた。母の言葉が、確かに心に疑念を残した。だがすぐに首を振り、その考えを振り払った。彼は彼女の愛と誠実さ、裏切らない思いを信じ、芽衣を信頼していた。そのころ深雪と延浩はロマンチックな夜の空気に包まれていた。石畳の街を並んで歩き、夜景に見とれながら互いの鼓動を感じ合った。「あの店の提灯、すごくきれいだな」延浩が指さすと、深雪は頷いた。二人で小さな提灯屋に入ると、色とりどりの灯籠が天井から吊るされてい
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