◆◆◆◆◆ 『愛している』という想いを持ち続ければ、必ず相手も『愛情』を返してくれる――。 ヴィオレットの母イザベラからの教えは、今も彼女を呪いの様に縛っていた。 亡き両親や、兄のアルフォンス、そしてルーベンス家の使用人たちは、イザベラの教えどおりにヴィオレットへたっぷりの愛を返してくれた。 だが、どれほど愛しても愛を返してくれない人がいる。 ――そんな人からは、いったい何を返してもらえばいいの? ヴィオレットはその答えを見つけられず、胸を締め付けるような苦しさを感じていた。 「母上、このスープ、とっても美味しいです! ハーブの香りがいっぱい!」 娘の明るい声が彼女を現実に引き戻した。リリアーナが笑顔でこちらを見つめている。 「本当に香り高いわね。リリアーナ、ハーブの種類を執事に尋ねてみたら?」 ヴィオレットは優しく微笑みながら、娘に声をかける。リリアーナがアシュフォード家の女当主になるためには、まず執事を使いこなせる存在にならなければならない。 「ジェフリー、このスープに使われているハーブは何?」 リリアーナが主一家らしく尋ねると、執事のジェフリーは柔らかな声で応じた。 「お嬢様、こちらのスープには、新鮮なタイム、ローズマリー、そして少量のタラゴンが使われております。料理長が今朝、温室から摘み取ったものです。」 「いっぱいハーブが使われてるんだね。とっても美味しいよ。」 「ありがとうございます。料理人にも伝えておきます、お嬢様。デザートにはタイムを使った洋梨のポーチをご用意しておりますので、そちらもお楽しみくださいませ。」&
Last Updated : 2025-04-06 Read more