Share

第41話。

Author: 愛月花音
last update Last Updated: 2025-05-10 13:41:50

 それから1年後。クリスは歩けるまでに成長する。言葉も少しずつ口で話せるようになっていた。

 レイヴァンも時間を作っては、時々邸宅に来てくれてクリスの成長を一緒に見守ってくれるように。今だと、歩く練習をしていた。

「ほら、もう少し足を上げろ」

「うっ……うるちゃい」

 文句を言いながらもレイヴァンに両手を持ってもらいながら、一歩ずつ歩いて行く。ただ時々火花を散らしてはいるが。

 こう見ると歩く練習というよりもただの決闘にも見えなくもない。この2人は仲がいいのか、悪いのか分からない。

 エルザはお茶をしながら、その光景を微笑ましく見ていた。しばらくするとクリスを抱っこして、こちらに戻ってきた。

「練習は、もうよろしいのですか?」

「あぁ、少し休憩しよう。まったく……やっと歩けるまでになった」

 はぁっ……とため息を吐きながらクリスをエルザに預けると向かい側の椅子に座った。

 エルザはクリスにオレンジジュースを飲ませる。

「慌てなくても、ちゃんと成長しておりますわ」

「いや、慌てる必要はある。先日父の容態が急変したからな」

「えっ……陛下が!?」

 皇帝陛下は体調を崩していた。そのため、世代交代を囁かれていると侍女から聞いていたが。そんなに悪くなっていたとは。

「今は安定してベッドで安静をしているから心配はないが、医師からは長くないと言われている。そろそろ大臣達からも即位をするのは早い方がいいと言われているしな」

「……そうなのですか」

 そうなると余計に後継者争いが激化する。今ではレイヴァンの皇帝にするのを賛成派と反対派で分かれているらしい。

 その原因は現在の皇帝陛下がレイヴァンを皇太子にするのを渋っていると噂されているからだ。その原因の1つは皇妃の育成だった。

 強い権力を持つサファード公爵家の婚約は解消され、今の婚約者は聖女のレイナだ。

 しかし皇妃教育が上手く進んでいない一方。

 皇帝陛下がもともと転生者で爵位を持たないレイナを皇妃と認めるには皇妃教育を終了させてからと宣言したのが問題になっていた。

 周りにはレイナを崇拝する信者達や聖皇丁がそれを批判し、早く皇妃にしろと騒いでいるらしい。

 それに対して帝国がそんなやり方では他国に示しがつかないと反対する者まで現れ分裂してしまったとか。

 もう国のほとんどがレイナについているのだと思っていたエルザは、その
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第42話。

     クリスはその気になってくれたが、レイヴァンは早急に決断を出したため不安そうな表情になっていた。不安になるのも分かる。 しかし、この数年で多くの事を学んだ。婚約破棄に陰謀。そして時の神・クロノスのこと。何よりレイヴァンの本心が聞くことができた。 レイナが現れてから不安に押し潰されそうになっていた。自分に自信が持てなくなってしまい、嫉妬をしていないと言えば嘘になる。 汚名を着せられ婚約破棄をされた時は絶望したものだ。だが、クリスティーナやクリスの存在を知ることで隠された事情を知ることに。それは……サファード一族の運命を変えるものだった。 だとしたら、エルザはサファード一族の誇りを受け継がないとならない。クロノスがメアリー夫人に託された想い。レイヴァンの想い。そして未来があるクリスティーナとクリスの想い。 エルザはその舞台に立たねばならないと改めて決意をする。「大丈夫です。私はすでに覚悟はできていますわ」 真っ直ぐとレイヴァンの目を見て、エルザはそう告げる。その目に揺らぎはなかった。「……そうか、分かった。父から私が報告しよう。きっと喜んで引き受けてくれるだろう」「はい。そうだと嬉しいのですが」 レイヴァンも覚悟が決まったのか同じように真っ直ぐとエルザを見てくれた。その表情には笑みがこぼれていた……。 それからの私達は大忙しだった。レイヴァンは皇帝陛下に話してくれたらしく、正式にパーティーを開くことになった。名目は『お披露目パーティー』だそうだ。 具体的な内容は伝えられていないそうだが、時期的に次期皇帝のお披露目と皇妃の発表だろうと言う噂は、あっという間に広まっていた。 エルザは、その噂は無視して、その日に着ていくドレスを準備していた。ショップには行けないので細かく希望のドレスをデザインしてレイヴァンに渡した。 有名なデザイナーに頼むことに。もちろんお金に糸目はつけない。最高の晴れ舞台にするためには最高のドレスを。サファード公爵家の恥にならないように……いや、悪役令嬢らしく派手な格好にするつもりだ。 アクセサリーも最高の品を。やはりサファード公爵家が持っている鉱山しか収穫ができない『虹色のダイヤ』がいいだろう。この宝石には因縁がある。まさに相応しい宝石だ。 もちろん初舞台であり、初お披露目になるクリスも最高の正装をさせる。 子供よう

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第41話。

     それから1年後。クリスは歩けるまでに成長する。言葉も少しずつ口で話せるようになっていた。 レイヴァンも時間を作っては、時々邸宅に来てくれてクリスの成長を一緒に見守ってくれるように。今だと、歩く練習をしていた。「ほら、もう少し足を上げろ」「うっ……うるちゃい」 文句を言いながらもレイヴァンに両手を持ってもらいながら、一歩ずつ歩いて行く。ただ時々火花を散らしてはいるが。 こう見ると歩く練習というよりもただの決闘にも見えなくもない。この2人は仲がいいのか、悪いのか分からない。 エルザはお茶をしながら、その光景を微笑ましく見ていた。しばらくするとクリスを抱っこして、こちらに戻ってきた。「練習は、もうよろしいのですか?」「あぁ、少し休憩しよう。まったく……やっと歩けるまでになった」 はぁっ……とため息を吐きながらクリスをエルザに預けると向かい側の椅子に座った。 エルザはクリスにオレンジジュースを飲ませる。「慌てなくても、ちゃんと成長しておりますわ」「いや、慌てる必要はある。先日父の容態が急変したからな」「えっ……陛下が!?」 皇帝陛下は体調を崩していた。そのため、世代交代を囁かれていると侍女から聞いていたが。そんなに悪くなっていたとは。「今は安定してベッドで安静をしているから心配はないが、医師からは長くないと言われている。そろそろ大臣達からも即位をするのは早い方がいいと言われているしな」「……そうなのですか」 そうなると余計に後継者争いが激化する。今ではレイヴァンの皇帝にするのを賛成派と反対派で分かれているらしい。 その原因は現在の皇帝陛下がレイヴァンを皇太子にするのを渋っていると噂されているからだ。その原因の1つは皇妃の育成だった。 強い権力を持つサファード公爵家の婚約は解消され、今の婚約者は聖女のレイナだ。  しかし皇妃教育が上手く進んでいない一方。 皇帝陛下がもともと転生者で爵位を持たないレイナを皇妃と認めるには皇妃教育を終了させてからと宣言したのが問題になっていた。 周りにはレイナを崇拝する信者達や聖皇丁がそれを批判し、早く皇妃にしろと騒いでいるらしい。 それに対して帝国がそんなやり方では他国に示しがつかないと反対する者まで現れ分裂してしまったとか。 もう国のほとんどがレイナについているのだと思っていたエルザは、その

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第40話。

     思わない返答が返ってきたのでレイヴァンと声が重なってしまった。今の聞き間違いだろうか? 誰が誰の恋人だと言ったのだろうか?「今……何て?」『だから、メアリー夫人は我が君主・クロノス様の恋人だ。現在もな』「「えぇっ~!?」」 またもや、レイヴァンと声が揃ってしまった。驚きを隠せない。 だって、クロノスは時の神だ。そんな凄いお方が……エルザのご先祖様と。まさかご加護だけではなく、愛し合っていたなんて。「いや、だがメアリー夫人は前代サファード公爵の妻だぞ」『そうだな、表向きはな。美しく、何より神に信仰があったメアリー夫人を君主も惹かれるようになった。しかし君主も精神体のため、現世に降りることはできないし、触れることもままならない。そこでだ、君主はある人間の男を器に使うことにした。サファード公爵の初代当主がまだ伯爵だった頃。彼もまた信仰のあった心優しい若き青年だった。丁度病で亡くなった彼の身体に憑依して身体を手にする。そして生き返った彼は、その後メアリー夫人を娶り、子供を授かった。それが、サファード一族のルーツだ』 エルザ達サファード一族って……。「じゃあ、サファード一族の先祖って、クロノス様の子でもあったのですか!?」『そうだ。我が君主は肉体を創ることはできないが、魂を創り出すことはできるのでな。それを利用して生まれてくる赤子の器に君主が創った魂を憑依させた。それが私だ!』「「えっ……?」」 またもやレイヴァンと声が揃ってしまっエルザ。クリスが、また驚くような発言をしてきたからだ。どういうことだろう?「どういうことだ? クリス。ちゃんと答えろ」 レイヴァンが怒ったように言うと、クリスはニヤリと笑う。『そのままだ。私は一度憑依した経験がある。サファード公爵の息子として。その頃の母上はメアリー夫人だった。そして時が絶ち、老いた私はまた天界に戻り、今度は門番として現在に至る。今の体で2代目ってことだな。あの頃の髪色は初代当主に似て黒髪だったが。今の容姿は父上に合わせたからだ』「に、2代目!?」 さらっと答えるクリスにエルザ達は言葉が出なかった。 つまりクリスも元はご先祖だったってことだろうか? まさかそんな歴史があったなんて想像もしていなかった。昔は黒髪だったんだ。 そういえば肖像画がそうだったような気がする。今頃になって思い出してき

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第39話。

    『ミルクは口に合わない。別に良いだろう? 母上の母乳を分けてもらうだけだ』 レイヴァンの言葉に反論するクリスは呆れるように、ため息を吐く。 しかし母乳を飲むのは止めずに、ゴクゴクと飲んでいた。「いや、良くない。君は普通の赤ん坊ではないんだ。しかも彼女の母乳だぞ? 彼女の胸は私のものだ。好き勝手に飲んでもいいなんて許可を出してはいない」 エルザはレイヴァンの発言に驚いてしまう。レイヴァンのものだと言われてしまったからだ。 恥ずかしくなって照れてしまう。『許可などいらぬ。私の母上だ。それに父上は婚約破棄した身。どう考えてもお主のモノではないだろう。図々しいぞ』「だ、だから、それは君のせいだろ。それに、もう誤解は解けて私達はやり直すことにしたのだ。もういいだろう?」『いいや、まだ終わっていない。まだやるべき事は残っている。失敗すれば、どうなるのか分かっているな? すぐにでも父親の座から降りてもらうぞ』「くっ……分かっている」 クリスは飲みながらもギロッとレイヴァンを睨みつけると、言い返せなくなっていた。(もう……この2人は) 親子なのに、どうしてか目を合わすたび喧嘩ばかりしているのだろうか? 火花を散らす2人に、やれやれとため息を吐いていると、レイヴァンは何かを思い出したかのようにあっと叫ぶ。「あ、そういえばクリス。貴様、クリスティーナに私が父親だと教えてなかったようだな!? お陰で会った時に父親だと認識されてなかったではないか」 そういえばそうだった。しかしクリスは平常心だった。『当然だろう。父親が代わるかもしれないのだ。わざわざ教える必要性はないだろう』「だからクリスティーナの父親も私だ。それしか考えられない。それを含めて教えるべきだったのだ」『分かった……仕方があるまい。今度クリスティーナには父親の事を教えといてやるとしよう。別の男をな』「貴様……」 クリスがわざと挑発してからかうものだから、レイヴァンは怒り心頭だった。顔を真っ赤にさせて手がぶるぶると震えている。(クリスったら……もう) どうも息子は父親をからかうのが趣味のようだ。完全にわざと怒らせるような発言ばかりしている。始めはエルザにしてきた事の制裁だと思っていたが、この勝ち誇った顔を見ると楽しんでやっているようだ。 母乳を飲みながら、口元はニヤリと笑っていた。

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第38話。

    「それは誠なのか?」「はい、誠でございます。現に私がサファード公爵夫人として嫁ぎ、息子と娘を産みましたが2人共もその能力を受け継ぎましたわ」 男性でも、その能力は受け継ぐ。知らない真実にエルザは驚かされる。しかし、よく考えたら息子のクリスも能力を受け継いでいるではないか。 彼は門番だから、直接クロノスから新たにご加護を受けたのだろうと解釈していたのだが、それは間違いだったのだろうか?「クリスが能力を受け継いでいるのは、そのせいか?」 エルザの気持ちを察してかレイヴァンが代わりに質問をしてくれた。「血を受け継いでいるせいもありますが、クリス様の場合は少し違いますわ。彼もまた、クロノス様の後継者の1人ですので」「そうなのか!?」「はい。門番でもありますが、能力の強過ぎるクリスティーナ様を支える陰の役割もあります。クリスティーナ様とクリス様で1人の後継者とでも言いましょうか」 あの子達で1人の後継者。 まさかの真実に驚く。だが、確かに本人も暴走気味な妹を抑止するためとも言っていたが、そう言う意味もあったのだろうか?「強過ぎる能力は、使い方に寄ったら毒にも薬にもなりますので。サファード一族の能力はいろんな使い方ができます。しかし時代が変わり、能力が薄れて女性しか受け継がれなくなりました。女性の方が感受性が強いからでしょう。エルザ。あなたは、その能力を受け継ぐ者。きっと、あなたを守ってくれるでしょう」「私を守ってくれる……?」 すると、周りが光り出した。これは!? レイヴァンは驚いて、エルザを抱き締めてくれた。「クリスティーナ様のお世話は私に任せて下さい。クロノス様と一緒に見守っておりますわ」 メアリー夫人の声が小さくなっていく。輝く光りで目を覚ますと寝室だった。 起き上がり見てみるとエルザの住んでいる邸宅だ。どうやら元の世界に帰って来られた様子。隣を見るとレイヴァンも目を覚ました。「う~ん。ここは?」「あ、レイヴァン様。おはようございます。元の世界に戻って来られたようです」「……そうか。不思議な夢を見た気分だ」 レイヴァンは、そう言うと起き上がった。「きゃあっ!?」 起き上がったレイヴァンの格好に驚いて悲鳴を上げる。下半身はシーツで隠れてはいるが、鍛え上げられた体を目視することに。 エルザは慌てて目線を逸らす。体が火照って熱

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第37話。

     レイヴァンはジッとクリスティーナを見る。顔立ちは、どちらかと言えばエルザに似ていて、同じ髪色。しかも自分の娘なのだから不思議な気分だろう。「ほう……エルザによく似ている。昔のエルザを思い出して可愛らしいな。クリスティーナ。私のことをパパと言ってごらん?」 レイヴァンはパパと呼ばせようとする。しかし、クリスティーナはジッと見るだけで無言だった。どうしたのだろうか?「パパだよ。パパ」「うっ~まんま」 するとエルザの方を見てママと言ってくる。「いや……私じゃなくて」「どうしたんだ? パパだぞ? パパ」「ふ、ふえ~ん」 何度も呼ばせようとするのだが、段々とぐずり出してしまう。泣かれてしまうので、レイヴァンは慌ててあやそうとする。 すると何処からか、クスクスと笑う声が聞こえてくる。女性の笑い声だった。 そうしたら黄金に輝き出すと人の形になっていった。姿を現したのは、同じ容姿をしており、エルザより長く腰まである金髪。そして虹色の目をした女性だった。(えっ……この方もサファード一族なの!?) エルザとレイヴァンは驚いた表情をする。すると、輝きが止み、その女性の目は普通の碧眼に戻っていく。 エルザとレイヴァンを見ると、ニコッと優しく微笑んでくれた。(わぁ……私にそっくり。いや……私よりも綺麗だけど) それに見たところ年上だろう。20代後半か、30代前半ぐらいだろうか? それに何だか懐かしく感じる。 女性は驚いているエルザ達に近寄り話しかけてきた。「フフッ……クリス様が父親が変わるかもしれないからと、クリスティーナ様に情報を教えなかったので父親として認識していないのでしょう。時期に認識すると思いますわ」「父親だと……認識させていない? あの野郎は」 女性の言葉にショックを受けるレイヴァン。ボソッと怒りを露わにしていた。 女性はそれを見てクスクスとさらに笑っていた。「あの……あなた様は?」「あ、申し遅れました。私はメアリー・サファード公爵夫人でございます。メアリー夫人とお呼び下さい。未来の皇帝陛下と皇妃様にご挨拶を申し上げます」 ドレスの裾を上げて綺麗なお辞儀をしてきた。(メアリー・サファード公爵夫人ですって!? ま、まさか亡くなった私のご先祖様なの?) 衝撃的な自己紹介に驚かされた。しかし、ここは天界と現世の狭間。亡くなった方も

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第36話。

     気を良くしたエルザはクスッと笑うとわざと出し入れするスピードを速くする。「まっ……て……あっ……ぐっ」 耐えられなくなったレイヴァンは、そのままエルザの口に精液を出してしまった。 うっ……不味い。流石に美味しいとは言えない味だったが。 むせかえりながらレイヴァンを見ると、さらに息を切らしながらハァハァと漏らしていた。いつも達した時よりも感じているように見える。 どうしてだろうか? 涙目になっている頬を赤らめているレイヴァンを目にすると、また悪戯心に火が付きそうになっていく。まるでエルザは本物の悪女になった気分だった。「まだ終わった訳ではありませんわ」 エルザはそう言うと彼を押し倒し、上に覆い被さる。そしてレイヴァンの陰茎をエルザ自身の膣内に少しずつ挿れていく。奥に入って行くと少しの振動でもピクッと反応してしまうが、ゆさゆさと揺らしながら上下に腰を振るう。「あっ……んんっ……」 声が漏れるのを我慢しながら腰を揺らすと胸も同じリズムで揺れている。 レイヴァンはエルザの両手を重なり合うように繋いでくれる。そして唇を嚙み締めるように声を押し殺していた。しかし、しばらくすると耐えられなくなったのだろう。 身体を起こすと、エルザの口を強引に塞いできた。舌を入れてきて、絡ませるような深いキスだった。その間も腰は動いている。「んんっ……ふっ……」 唇が離れると甘い吐息と、声が漏れてきた。「エルザ……んっ……」 レイヴァンは、エルザの名前を呼びながらも、また唇を塞ぐ。腰の動きは激しくてなっていく一方だった。お互いに限界に近づいていく。 するとレイヴァンはエルザを後ろに押し倒し、さらに激しく打ち付けていく。「ああっ……ダメ……もう……イッちゃう」「エルザ………愛している」「わ……私も……ああっ……ダメ……イク。イッちゃう。レイヴァン様~」「……くっ……」 お互いの名前を呼び続けながらも、同時に達してしまった。 エルザは、そのまま意識を手放した……。だが、しかし。「……エルザ。起きろエルザ」 しばらく深い眠りに落ちていたはずなのに、レイヴァンの声で目を覚ました。一体どうしたのかしら? エルザは、眠い目を擦りながら目を開けると、またあの空間に連れて来られていた。 周りは何もない『無の空間』。どうしここに? しかも、今回はレイヴァンも

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第35話。

     レイヴァンはエルザを抱き締めてきた。『……苦しいぞ』 間にクリスが挟まってしまったが、レイヴァンはお構いなしに強く抱き絞める。「……もう離さない。絶対に」 思いを打ち明けてくれる。その言葉はあたたかく嬉しい言葉だった。「……はい」 やっぱりレイヴァンのことが好きだと改めて思った。  そして、その日の夜。エルザはレイヴァンの居る寝室に。入浴を済ませて、クリスを寝かせてきた。その際にベビードールに着替え、その上にバスローブを羽織る。 レイヴァンはバスローブに着替えてベッドに座って待っていた。「クリスは眠ったのか?」「はい。日中は頑張って起きていましたが、ぐっすり」「……そうか」 レイヴァンは少し照れた様子だった。エルザもドキドキしながらも隣に座る。すると手を握ってくれた。さらに胸が熱くなる。「本当だったら……嫌われても仕方がないと思っていた。いや……嫌われたくはない。だが……あんなに酷い言葉で君を傷つけた」 必死に言葉を選びながら、もう一度謝罪しようとしていた。「こんなことを望むのは自分勝手だと思っている。だが、私は今でもエルザが好きだ。その気持ちは変わらない。だから……その」 段々と頬を真っ赤に染まっていくレイヴァンにクスッと笑ってしまう。 必死に弁解をしながら、気持ちを伝えようとする姿が可愛いと思ってしまった。 あの頃には考えられないほど。いや……前よりも距離が縮んだような気がする。エルザは嬉しくて自分からチュッと唇にキスをした。 レイヴァンは驚いてエルザの顔を見る。フフッとエルザは悪戯っ子のように笑う。 すると気を良くしたのか今度はレイヴァンの方からキスをしてくれた。触れるような甘いキス。その内に舌を絡めるような激しいキスになっていく。 我慢できなくなったのか、エルザを押し倒してきた。今まではおしおきか、ご奉仕だったので変な感じだ。でも嫌ではない。 エルザは両手を挙げて求めるとレイヴァンは、またキスをしてくれた。キスをされながらバスローブを脱がされていく。胸を弄られる度にビクッと反応してしまう。唇から首筋に移動していくと、エルザはある提案をしてみる。「レイヴァン様……今回も私が」「だが……」「私がそうしたいのです」 そう言うとくるりと向きを変えるとレイヴァンを押し倒した。いつもはベッドではエルザが、ご奉仕す

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第34話。

    「だ、ダメだ。あの男は絶対にダメだ。あの男はエルザに好意を抱いていたくせに、レイナに魅了され失礼を働いた最低野郎だ」 さらに顔を真っ赤にさせて激怒するレイヴァン。(えっ? 何故そこにセイン様の名前が出てくるの? 『魅了』って、もしかしてもセイン様も?) エルザへの好意の意味が分からないが。セインが、あのような態度になったのは、どうやらレイナの能力のせいだと察する。しかしクリスは平然とした顔をする。『父上と対して変わらないだろう? 父上も『魅了』された1人なのだから。私のお陰で正常な判断が出来たに過ぎない。そうだろう?』「……ぐっ……」 ぐうの音も出ないレイヴァンは、さらに小刻みに震えていた。涙目になっており、逆に気の毒になっていく。 父と母も止めたらいいのか分からずにオロオロしている。 もしかしてエルザのためにクリスは代償を払わせようと、こんなことを言っているのだろうか? しかし、これはやり過ぎるのでは?「クリス。それ以上は言い過ぎよ。メッ」 エルザはクリスを注意をする。さすがに実の父親に言うことではないだろう。『……私は母上のために言っているのだぞ?』「それでもよ。二人は私を守ろうとしてくれたのでしょう? それが分かればいいの。これ以上レイヴァン様……あなたのお父様を責めるつもりはないわ」「……エルザ!?」 エルザの言葉に驚くレイヴァン。確かに婚約破棄をされた時はショックだったけど、それは自分を思ってやったこと。 エルザは、それに対して怒りを抱かなかった。何よりレイヴァンの心が自分に離れて行かなかったことが何よりも嬉しいと思った。 真っすぐとレイヴァンを見るとニコッと微笑んだ。「レイヴァン様。あなたを許します」 理由が何であれ、エルザはこの方を責めるつもりはない。だって……心から愛した方だから。それは今でも変わらない。 するとレイヴァンの目尻には涙がこぼれ始める。「本当に……すまなかった。エルザ」「まあ、泣かないで下さいな」 エルザはクスクスと笑いながらハンカチを差し出し、涙を拭いてあげた。きっと張り詰めていた糸が切れたのだろう。 これでいい。本心が分かっただけでも、その意味はあったのだから。 クリスは呆れたように、ため息を吐いていたが、両親はそれを見て微笑む。初めて家族になったのだと思えるひとときだった。 その

Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status