「来栖様、契約はすでに締結済みです。ご希望通り、17日後に『仮死』のサービスをご提供いたします」応接室で、スタッフがさっき仕上がったばかりの紙の契約書を来栖葉(くるす よう)に差し出してきた。葉はそれを受け取り、パラパラと目を通しながら、念のためもう一度確認した。「その仮死用の遺体、ちゃんと私に似せて用意してたんだね?」スタッフは自信満々に胸を張って頷いた。「ご安心ください。遺体はお客様の体型にそっくりそのまま作ってますから。絶対にバレません」その一言に、ようやく少し安心できた。葉はバッグからカードを取り出し、勢いよく決済を済ませると、くるっと背を向けて部屋を出た。玄関を出た瞬間、真っ先に目に飛び込んできたのは、一台の豪華なロングリムジン。葉の姿を見つけた運転手が、すぐに恭しくドアを開けてくれた。「お嬢様」葉は軽く頷いて応え、無言のまま後部座席に乗り込む。運転手がドアを閉め、運転席に戻って車を発進させた。車はスムーズに走り出し、最終的に来栖家の別荘の前で止まった。ここは、葉が間宮礼司(まみや れいじ)と同棲するためにわざわざ買った家だ。戻ってきて間もなく、別荘の玄関が再び開いた。入ってきたのは、まるで彫刻のように整った顔立ちの男。白いシャツに黒のスラックスというシンプルな格好なのに、ひと目で人を惹きつける美しさがある。どこか冷たくて、近寄りがたい雰囲気をまとっていた。礼司はゆっくりとカフスボタンを外しながら近づいてきて、そのまま葉を抱き上げるようにして歩き出した。「礼司、やめて!」思わず大きな声を出して、彼の腕から逃れようともがいた。礼司の目が、冷たい月光のようにじっと葉を見つめてくる。まるで「何をそんなに騒いでるんだ?」とでも言いたげな表情で、低く言った。「やめてって?毎日俺と寝るって条件で俺を買ったんだろ?違うのか?」「最近は……ちょっと無理。今月、生理が早く来ちゃって」視線を落としながら、葉は曖昧な声で嘘をついた。でも幸いなことに、礼司はそれ以上興味を持つこともなく、あっさりと言った。「じゃあ、仕事に戻る」最近の礼司は本当に忙しい。ちょうど新しい事業を立ち上げる真っ最中で、葉はできるだけ彼の邪魔をしたくなかったから、黙って頷いて見送った。今夜はずっと仕事だと思ってい
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