戦いが終わり、荷物のある看板の所まで移動すると、芙美は木の根元に崩れるように腰を下ろした。 リーナと自分でこんなに体力の差があるなんて思いもしなかった。「私、ハードルの授業が苦手な理由が分かったよ。リーナの時にね、兵学校でやってるっていう体力作りのルーティンをルーシャにさせられてたの。それでハードルみたいなのがあって、あんまり好きじゃなかったんだよなぁ」 ふと思い出した過去は、苦痛だった記憶がセットで蘇る。嫌だ嫌だと言いながらもこなしていたリーナの体力に、芙美が追いつけるわけはないのだ。「あぁ、確かにそんなのあったね。障害物を飛び越えていくやつでしょ? 俺は好きだったけど、リーナもやってたんだ」 向かいに座って、智は汗でしっとりと濡れた髪にタオルを乗せると、飲みかけのスポーツドリンクを流し込んだ。「うん。もっと動かなきゃ駄目ってルーシャに言われて」「リーナも芙美ちゃんも、昔から根本は変わってないって事かな」「なのかな。私も体力付けないとなぁ」 ウィザードとして圧倒的な自信を得るためには、毎日の精神修行と同時に土台作りが必要だ。「俺たちもサポートするから」「ありがとう。私、今日智くんの役に立てたのかな?」「もちろん、バッチリだよ。感謝してる。また今度お願いしても良い?」「うん。なら良かった」 ただ、今回の敗因は自分の体力不足だけを理由にはできない気がした。 智がアッシュの時より機敏になっていて、魔力が数段上がっている。それは喜んでいいことのはずなのに、置いてけぼりになった気分で少し寂しい。「ところで、アイツらどこ行ったのかな」「帰った……のかな?」「俺たちにビビッて、訓練してるかもね。ラルは俺とリーナが一緒で大分ヤキモチ焼いてるみたいだけど、リーナはあの二人が一緒で心配はしないの?」「二人って、湊くんと咲ちゃんってこと?」「うん。一応男女でしょ?」 芙美は智に言われるまま二人が並んだところを想像する。 けれど咲がヒルスの時代からラルを毛嫌いしていることは知っているし、蓮と付き合っているのだから問題はないだろう。「そんなことあるのかな」 咲は智や湊には同性として接しているようだが、蓮に対する女子の姿もまた彼女なのだ。あの可愛い姿で湊にベタベタされたら、確かに嫌だと思うかもしれない。「まぁ、実際にそれはないだろうけどさ
Last Updated : 2025-08-17 Read more