お泊り会が終わり、芙美は湊と休日の混みあった駅へ移動する。部活で学校へ行くためにだ。 今日は昨日の雨が嘘のように晴れ上がっていた。 昨夜はあれから暫く湊とくっついていたが、気が緩んだ途端睡魔に襲われた芙美が、眠気に負けてベッドへ戻った。「私、鼾すごくなかった?」「別にいつもと変わりなかったけど」「いつも……?」 電車でしょっちゅう居眠りをしているけれど、耳慣れする程の音を立てているのだろうか。「気にするほどじゃないよ」 前に蓮の足音を注意したら、「お前は鼾がうるさい」と言われたことがある。「信じさせて」 芙美は空を見上げた顔を、がっくりと地面に落とした。「そういえば、湊くんって料理も上手なんだね」「さっきのおかゆのこと? あんなの料理って程じゃないだろ。昨日のカレーも美味しかったよ」「あれは殆ど咲ちゃんが作ったんだもん。私は手伝っただけだよ。前に咲ちゃんがウチに泊まった時も、カレー作ってくれたの」 朝、蓮がおかゆのレシピを聞いてきて、芙美は全く答えることができなかった。 仕方なくスマホで検索しようとした蓮に、「だったら俺が」と湊が名乗り出たのだ。「私も湊くんのおかゆ食べたかったな」「あれくらいなら、今度芙美にも作るよ」「ほんと? 嬉しい!」 芙美が「やったぁ」と声を上げると、湊は「そんなに?」と笑った。「料理なんて、食べられればいいんだよ。俺はほら、弟と二人で夜食作ったりしてるから。ラルの頃は野宿も多くて色々やらされてたしね」 湊はラルフォンだったターメイヤ時代、傭兵の父と一緒に各国の戦場を渡り歩いていた。「そっか。咲ちゃんも兄様の時、野外訓練で作ってたからできるんだって言ってたもんなぁ」「そう言う事。俺は隊でも一番下っ端で、動物も捌いたからね」「凄い。私は炊き出しした記憶ないなぁ」「そりゃ、ウィザードのリーナ様に食事作らせたりなんてしないだろ」「そういうこと……なの?」 言われるまま振り返ってみると思い当たる節がたくさん出てきて、芙美は肩をすくめた。申し訳ないような、情けない気がしてしまう。「いいんだよ。城とか軍に居る人間は、自分の役割ってのがそれぞれあるんだから。リーナの役目は食事を作る事じゃなかったって事だよ。けど、ハリオス様の家ではどうしてたんだ?」 戦争で孤児になったリーナは、ヒルスとともにハリ
最終更新日 : 2025-09-18 続きを読む