芙美たち四人の寝室に割り当てられたのは、茶道部の部室だ。学校創立時にあったという幻の部活動で、次第に部員が減り数年前に廃部となったらしい。 がらんどうとした二〇畳ほどの和室に、中條が調達してきた布団を男子二人で運び込んでいる。 まさかの男女同室に一番騒いだのは咲だった。「芙美の寝込みを襲ったやつは、ハロンに喰われる呪いが掛かるからな?」 唖然とする湊と笑い出す智にそんなことを言って、咲は布団の位置を勝手に決めていく。最初は湊と芙美の間に咲が入るという並びだったが、「やっぱり嫌だ」と咲が湊の横を拒絶した結果、芙美は湊の横になることができた。 学校に泊まるという事に最初は不安もあったが、家庭科室で調理をしたり、体育館のシャワーを使ったりと特別不自由な事はなかった。「お布団で寝れるなんて今日だけなのかな?」 家庭科室で夕飯の準備をしながら、芙美がふわあっと欠伸する。会議中うたた寝した効果もすっかり消えて、まだ少し眠かった。 今日はこの寒い中、校庭でバーベキューをするという。準備は楽だけれど、窓の向こうにはまた雪がちらついている。 咲は出刃包丁でザクザクとキャベツを刻みながら、ニンジンを切る芙美に「もう少し薄く」と指示する。「そうだな、ハロンが出たらここに戻って休む訳にはいかないからな」「だよねぇ。ちゃんと回復できるかなぁ」 リーナの頃は何度も外で寝た記憶があるし、あまり苦にもならなかった。 けれどそれは向こうが温暖な気候であるということが前提の話だ。残念ながら今度の戦場は、一瞬の眠りが命取りになるような冬だ。「外で寝たら凍死しそう」「凍死するほど寝てられる余裕なんてないと思うけど、どこでも寝れるってのはある意味特技だよな。さっきの会議も殆ど寝てただろ」「殆どじゃないよ。大体は頭に入ってるよ……多分」 芙美は唇を尖らせて、言われた通りに人参を輪切りにしていった。咲の手際が良すぎるせいで、スピードが大分遅く感じる。 確かに会議中は夢心地だったが、大体の内容は湊が後からこっそり教えてくれた。 咲はまな板の玉ねぎとキャベツをバットに移して、今度はカボチャを切り始める。タンッ、タンッ、とまな板を打ちつける音が響いた。「だったら聞くけどさ、今度のハロンの急所が背中だってのは間違いないんだな?」「えっ?」 そんな話していただろうか。『あれ
Last Updated : 2025-10-08 Read more