一華に手際よく応急処置される間、咲は十回ほど激痛に叫んだ。効率重視で、患者への労りはまるでない。注射をされる子供のように左腕から目を逸らして、咲は右手を握る蓮に涙目を向けた。「やめてもいいんですよ?」「駄目だメラーレ、やめないでくれ。ひぃぃい……」 汗びっしょりの咲に、一華がようやく「終わりましたよ」とタオルを差し出す。彼女はそのまま立ち上がって奥の部屋へ行ってしまった。 咲は顔をグイと拭って、椅子に掛けられた血だらけのパーカーを名残惜しく掴む。 半袖のシャツに着替えさせられた咲は、左腕に包帯ぐるぐるで添え木を当てられ、三角巾で固定された状態だ。 冬の夜風にパーカー一枚では心許ない。自分のコートを着ようかと諦めたところで、蓮が自分のジャンパーを脱いで咲の背中に掛けた。「着て行きな」「蓮……」 咲は「すまないな」と言って、ジャンパーに籠る彼の体温を抱きしめる。戦場へ赴くには万全とは言い難い姿だけれど、右手と両足が無事なだけで行ける気がした。「じゃあ、後はこれを飲んでください」 奥の部屋に行っていた一華が、刺激臭と共に戻って来る。目の覚める様なツンとした臭いが嗅覚に突き刺さって、蓮と二人で鼻を押さえた。 咲は彼女の握り締めるマグカップに警戒する。「飲むって、何それ。丸薬じゃないの?」 彼女が持ってきた熊柄のマグカップは、彼女が保健室で使っているものと色違いだ。その可愛らしい見た目とは裏腹に、草のような薬のような微妙に甘いような、おかしな臭いを立ち上らせている。 「どうぞ」と向けられた中身も毒にしか見えない。 カップの縁ギリギリまで注がれている混濁した苔のような緑色に、咲はゴクリと息を飲み込んだ。「大丈夫なの? コレ……」「丸薬を一度粉にして、傷に効く薬や痛み止めも一緒に混ぜてみたんです。健康促進剤みたいなものだと思って飲んで下さい」「これ飲んで健康が促進されるとは思わないんだけど……ぶっ倒れたりしない?」 不安がる咲に、一華はパッと笑顔を広げた。「飲み干すまで、この部屋から出しませんよ?」「ちょっ……」 可愛らしい表情の向こうに悪魔の姿を垣間見て、咲はほんのりと温いカップを「分かりました」と受け取った。 手渡しした振動で、ゴボッと大きめの泡が表面に重い音を弾かせる。 飲みたいなんてこれっぽっちも思わないけれど、外に出
Last Updated : 2025-10-28 Read more