お泊り会から、あっという間に10日が過ぎた。特に進展もないまま、いつも通りの日々が続いている。 あの日『好きという気持ち』について咲と話をした。自分なりに出した答えを胸に留めているのは、月末に控えた秋祭りに4人で行く約束をしたからだ。咲に言われた「急ぐ必要はない」という言葉に甘えて、その日までは今の関係を壊したくないと思う。「咲ちゃんは、あれからお兄ちゃんと連絡とってるの?」 お泊り会の帰りに咲が蓮に電話番号を渡していた。恋愛に発展するような出来事はなかった気がするが、実際の所はどうなのか気になってしまう。 咲は「いやいや」と手をひらひらさせて、食べ終わった弁当の蓋を閉めた。「連絡先交換しただけだよ。芙美にもし何かあった時の為だって言っただろ?」 そのまま受け止めれば納得がいくし、幾多のナンパ男を蹴散らして来た咲が特定の男に興味があるとは思えない。「だよね、しかもウチのお兄ちゃんなんてね」 最後に取っておいたウインナーを食べて、芙美は「ごちそうさま」と手を合わせる。連絡先を交換したくらいで、考えすぎだ。「ここの所お兄ちゃんバイト忙しいみたいで、毎晩くたくたになって帰って来るんだよ」「あぁ、夜のコンビニって大変そうだよな」「あれ? お兄ちゃんのバイトがコンビニだって咲ちゃんに話したっけ?」「えっ」 弁当箱をしまう咲の手が止まる。「この間泊りに行った時、本人に聞いたんだよ。芙美、トイレにでも行ってたんじゃないか?」「そっか」 何故か咲が動揺している。「それより芙美、図書室行くんじゃなかったっけ?」「ああっ、忘れてた! 行ってくる」 先日、宿題の資料のために借りた本の返却が今日までだった。朝までは覚えていたのにすっかり頭から飛んでいて、芙美は慌てて弁当箱をしまい教室を飛び出た。 ☆ 高校の図書室が開いているのは、昼と放課後の二回だけだ。電車の時間を考えると、今のうちに返しておきたかった。 生徒数の割に広い図書室には、生徒の姿は殆どない。「お願いします」とカウンターで読書中の図書委員に本を返却したところで、「荒助(すさの)さん」と窓際から突然名前を呼ばれた。クラスの盛り上げ役・鈴木だ。「鈴木くん、読書中?」「うん。昼はここにいるのが多いかな」 午後の授業までまだ時間があることを確認して、芙美は彼に近付く。二人きりで話
Terakhir Diperbarui : 2025-06-20 Baca selengkapnya