和夫のケアが終わったあと、私は浩賢を夕食に誘った。お礼の気持ちも込めて、という意味合いもあった。「この前、風見亭では落ち着いて食べられなかったからね。もう一度行って、心残りをなくしたいな」少し考えたあと、浩賢はそう提案してきた。「この前」というのは、颯也も一緒に食事をしたときのことだ。あのときは本来、私と浩賢の二人だけの約束だったのに、颯也が途中から加わった。二人はどうも相性が良くなく、顔を合わせるたびに軽口を叩き合う。あの日浩賢はかなり機嫌を損ねていて、ろくに食事を楽しめていなかった。私はすぐに笑って頷いた。「いいね。じゃあ、もう一度行きましょう」その反応を見て、私は改めて確信した。浩賢は、私の気を引こうとして、あれこれ行動しているわけではない。最初から最後まで、あのときの「お願い」について一言も触れず、私に対して変わらず穏やかで親しみやすく、そしてきちんと距離を保った態度を崩さない。「そういえば、麻酔科に副主任医が外部から来るって聞いたんだけど、何か知っている?」浩賢は森本院長と親しい。少し情報が聞けるかもしれないと思い、それとなく話題を振ってみた。「今後また職場で目をつけられないように、事前に心の準備をしておきたくて」冗談めかして言ったけれど、実際のところ、豊鬼先生に目をつけられる状況には、さすがに少し疲れていた。浩賢は少し眉をひそめ、真面目な表情で答えた。「俺も詳しいことは知らない。ただ、院の上層部がかなり力を入れて、他院から引き抜いてきた人材らしい。しかも、名の知れた人物だとか。ただ、まだ極秘扱いみたいだね」なるほど。副主任のポストに突然就任したのは、それだけの人材だったということか。それなら安心だ。優秀で、しかも名の知られた人物なら、豊鬼先生のように視野が狭くて神経質なタイプではないはず。皆が純粋に仕事のために努力できる環境になれば、余計な揉め事も減るだろう。私はほっと息をついた。「早く着任してくれるといいね」「そんなに待たされないと思うよ。来てくれたら、水辺先生の状況もかなり改善するはず」浩賢も笑って励ましてくれた。「少なくとも忙しさは少しマシになると思う。最近、麻酔科は本当に人手不足で……豊岡先生は火傷がやっと治ったところだし、私は手首を痛めていますし、完全に人手
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