まさか看護師長が浩賢におじのことを話していたとは思わず、私は一瞬、言葉を失った。浩賢は私の戸惑いに気づいたか、すぐに説明してくれた。「看護師長が桜井さんと話してる時に、たまたま聞こえただけ。こういうことこそ、俺か八雲に直接言えばよかったのに」八雲の名前が出た瞬間、私は思わず眉をひそめた。正直に言えば、八雲に頼むくらいなら、朝一から並んで診察券を取った方がマシ。「あっ、でもそんなことより」浩賢は笑いながら話を戻した。「明日の11時に患者さんを神経外科の外来に連れてきて。当番医は、俺が昔お世話になった奥村先生なので、俺から一声かけておくよ。臨時診察ならできるはず」私は少し迷って聞いた「それって規則違反にならない?」「ならないよ。受付の最後に追加するだけだし」彼はあっさりと答えた。「患者さんには、あまり早く来ないよう伝えてね」まさかあれほど厄介だった件がこんなにもあっさり解決するなんて。私は心から感謝して、お礼を言った。すると、浩賢は少し照れたように頭をかいた。「友達なんだから、そんなにかしこまらないで」私は返事をしようとしたが、「あら、水辺先生と藤原先生じゃないですか!」おなじみの大きな声で、薔薇子が割り込んできた。振り返ると、葵と薔薇子がこちらに向かってくるのを見た。葵はすでに私服に着替えていて、顔色もあまり良くなかった。薔薇子はニヤニヤしながら私を見て言った。「今日、水辺先生はお休みではないでしょうか?それなのに、わざわざ病院に来て藤原先生に会いに来たのですか?」この子、やたら私と浩賢の関係にこだわる。私は黙っていたが、浩賢が代わりに口を開いた。「俺の記憶が正しければ、今日の午後は松島先生の担当じゃなかった?」突然名前を出された葵は一瞬きょとんとして、青白い顔に動揺の色が浮かんだ。薔薇子がすぐにフォローに入った。「勤務表では確かにそうなっていましたが、松島先生の体調が優れなくて、紀戸先生が彼女の様子を知っていて、私に先に送って休ませるよう言ってくれたんです」その話を聞いた葵は伏し目がちに、自責の混じった声で言った。「私のせいで迷惑かけてしまって、ごめんなさい。仕事に影響が出なければいいんですけど」「大丈夫よ」薔薇子は私たちの前で彼女を慰めるように言い、どこか誇らしげな口調だった。「紀戸副主任が許可し
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