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24.拉致

Penulis: 神木セイユ
last update Terakhir Diperbarui: 2025-08-22 17:00:00

 朦朧とする蛍の細い身体を柔らかいベッドが包み込む。

 まるで水の中に身を任せたように、どこまでもどこまでも沈む。

 寝息を立てている蛍の側、スミスが曇る表情で小さな身体を見下ろしていた。

「スミス。準備は出来たか ? 」

 Mだ。

「は、はい。ただいま終わりますので !」

 スミスは蛍を覗き混むと、クタリと力無く広がっていた手を握り、身体の上に乗せる。

(蛍さん……俺は信じてますよ)

 緊張の中で、誘拐してきた蛍をスミスは最後の希望と言うように見つめた。

 都内のホテルのMの部屋で、蛍は無防備に眠りこける。

 そこへ今度は騒がしい集団が廊下を歩いてくるのが聞こえた。

「ジェームズ。廊下を静かにさせなさい」

「はい」

 静かに、と言われても。

 廊下の向こうからはギャーギャーと喚く真理の姿とそれを押さえ込もうとするMの部下、観念した様に歩くルキの姿があった。

 真理はデニムにタンクトップ。自分の意思でMの元に来た訳ではないことは明白である。ルキに関しては話は出来るものの、胴体に固定された大幅のベルトが、後ろ手に拘束され痛々しいほど肩が張っていた。

 ジェームズは廊下に出ると部屋に入るように促す。

「Mの部屋です。落ち着いて……」

「彼、ここにもホテルを持ってたの !? 」

「いえ。今週だけ一部貸切に。本館は営業中ですよ」

 ジェームズがルキと真理だけを部屋に通し、部下を捌けさせる。

「スミスはエレベーターホールで待機してください。部外者が入らぬよう」

「……了解」

 真理はソファに沈んでいるMを睨みつける。

「何よ……普通に呼んでくれれば自分で来るわよ ! どうして拉致なんか…… ! 」

「真理、落ち着きなさい」

 Mは鋭い瞳で真理に声をかける。その声色は一段と深く冷たい。

「まず、ルキ。涼川  蛍に何を期待している ? 」

「何を…… ? 」

「今まで見つけてきた狂人達

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    「ふふー。イタ……肩痛かった〜」 ルキは満足げに蛍に抱きつくと、キツく抱きしめる。「ねぇケイ。Mのモノになるなんて許さないよ」「俺もMにお前を殺させる気は無いね。 ただ……」「真理さん ? へぇ。気にしてないのかと思った」 確かに蛍は真理に執着などない。だがまた、殺す意味も無いのだ。それも自分の手で無いのであれば余計無関心である。 一つ思うところがあるのは──「親父があの人の曲、好きなんだよな。 ……顔、母さんに似てるから……」「そう」 ルキから見る蛍は、恐らく負ける気は無い。しかしMの言う通り、真理も何かと教え込まれているのだ。ゲーム当日、真理に有利過ぎるルールでないといいのだが。「じゃあ、尚更今楽しまないとね。本当に最後になるかもだし」「そん時は諦めて死ねよ」「いや、殺させる気無いって言ったじゃん」「……うるさい。早くしろよ。このままじゃ帰れるか。ってか、時間経ちすぎ ! 本当、誰か探してるんじゃないの ? 」「あーまぁ。探してるかも……」 バボッ !! その時、大きな音を立ててガラスドアが開く。「「うわっ !? 」」「ル、ルキ様 ! あ……」 間の悪い事を察したスミスはそのまま喫煙テーブルに肘を付くと頭を抱えた。「ち、違います違います !! すみません……途中で足取りが途絶えるし、待っても待っても蛍さんが来ないのでパニックになって……」 蛍とルキの視線が合う。 こればかりは仕方がない。スミスは仕事をしているだけだ。「ごめんごめん。ちょっとケイに悪戯しちゃった」「こいつに襲われた。

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