至高神がすべてを仕組んだ張本人であるのなら……里桜は思考をめぐらせる。 まずは大樹を返してもらい、完全な代理神となって、竜糸の結界を締め直すのだ。 そうすれば、裏緋寒である朱華のことで煩わされることもないし、たとえやむを得ず竜頭を起こしてしまったとしてもふたたび眠らせることができる。そもそも大樹がいれば竜頭のもとに花嫁を送る必要もなくなる。だが。「……至高神がカイムの地にいる可能性は低いと思いますよ?」 そう、あっさりと釘を刺した颯月の言うとおり、至高神がそこにいる可能性は低い。 至高神を探し出すまでの時間を考えると、竜神を起こすのが正解なのだろう。 けれど、里桜はムキになって言い返す。「そ、それでも、大陸随一の大神殿なら……」 「あたるだけあたりますが、いいかげん竜神さまに起きてもらった方がいいような……」 颯月は意地になっている里桜を見て、困ったように言葉を濁らせる。「と、とにかく頼むわ!」 里桜は颯月を追いだし、はぁと息をつく。 もし、ほんとうにすべてが至高神に仕組まれているのなら。天の姫神は代理神を廃して、本来の竜神にすべての統治を頼むのだろうか。傍に、花嫁となる朱華を置いて……「そんなこと……」 花神に愛され、それを裏切った後も逆さ斎の裏緋寒の番人に愛され、あげく桜月夜に傅かれ竜頭の花嫁にと選ばれた少女、朱華。 ――なぜ彼女なの。「恨めしいのですか?」 フッ、と里桜の脳裡に少しかすれた声が入り込む。「恨めしいんだね」 まただ。影のある、けれど聞き覚えのある声が。「恨めしいんだな」 しずかに、追い詰めるように自分を責めていく。 そのうち、鈴を転がしたような声が割り込み、甘い誘惑を振りまいていく。 「――素直に認めればいいのに」 なにかがおかしい。 この場所に、なにかがいる。 里桜はあたまを抑えて呻き声を漏らす。「だ、誰があ
Last Updated : 2025-05-08 Read more