箱の最上部には、一枚のメモが目立つように置かれていた。通常より大きな文字が、彼の視界に突然飛び込んでくる--【橋本夏実の犯罪関連証拠】一瞬、浩史は周囲の音を一切聞き取れなくなった。震える手で、中の物を一つひとつ取り出していく。中身を確認するほど、彼の表情は暗く沈んでいった。一方、深谷家では--日差しを浴びてうとうとしていた夏実が、突然の電話の音で目を覚ました。眉をひそめ、眠気覚ましもそこそこに、着信表示すら確認せずに受話器を取った。「どちら様?」次の瞬間、毒を含んだ声が反響した。「深谷の奥様になったら、俺を忘れたのか?」夏実は手元の携帯を握り締め、冷笑った。「忘れる?忘れるわけないでしょう」「あなたは私が今まで見た中で最悪の殺し屋よ。大金を払ったのに、人一人殺せないなんて」「私があなたなら、とっくに自殺してるわ」……彼女が電話相手と言い争っている間、黒い影がガラス戸の向こうにひそかに立ち現れていた。咲き始めたばかりのバラも、浩史の深淵のような瞳の色を隠せない。夏実が電話を切った瞬間、彼は静かに戸を開け、一歩ずつ近づいていった。次の瞬間、ガラス張りの花屋から悲痛な叫び声が響いた。「ああ--!」「ゴロゴロ!」雷鳴が稲妻を伴って空を裂き、雨の中、血まみれの身体が使用人たちに慌てて救急車へ運ばれていく。雨夜、夏実の体から流れ出た血は地面に広がり、やがて雨水に押し流されていった。最後に、黒い革靴がかすかな血痕を踏みしめ、遠くへと歩き去る。深谷家の混乱は、遠くイギリスにいる梨花には届かない。イギリスへ向かう前、父の元に戻る前、梨花は何度も自分の身体を確認した。外からは傷が見えないことを確かめて、ようやく安心して中野家に帰った。過去の出来事--すべては彼女の旅立ちと共に終止符を打つはずだった。梨花は父や、将来の婚約者である石川悠二(いしがわ ゆうじ)に心配をかけたくなかった。しかし彼女は知らなかった。イギリスに戻った時、二人の人物が密かに彼女の過去を調べていたことを。一人はもちろん梨花の父である。イギリスで基盤を築いて以来、梨花の父はずっと娘を呼び寄せたがっていた。だが娘は浩史のために頑なに拒み続け、突然の帰国は彼女らしくなかった。そこで父は密かに娘の国
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