海水を凍結させて、その頼りない氷の上によじ登る。そうしている間に、丁度駆け下りていく皐月の姿が見えた。 しかし、この場所は……。 海。海であることに間違いはないのだが、もちろん普通の海でないことは明らかだった。というのも俺はこの海を見たことがある。まさかこんな形で飛び込むことになろうとは思いもしなかったが。 ここは……廃都そのものだ。外縁から見下ろした、消滅したかつての首都。削り取られたか、あるいは何かに消し飛ばされたかのようにできたクレーター。ここはその巨大な穴に海水が流れ込んでできた海なのだ。「……」 正直、今起きていることは色々と前例やら思考材料が欠けていてよく分からない。だがおそらくあの”教室”はこの座標と重なって存在していたのだろう。未だ謎多き廃都の消滅。その地で暗躍していた、正体の分からない”先生”。何らかの関連性は感じないでもないが、結局は謎は謎のままだ。「水瀬……!」 皐月が海面に着地するのと同時に、廃都全域が凍り付く。俺の生み出した氷とは規模も強度も冗談かと思うほどの差だ。凍結をアイデンティティにしているわけでもないが、なんだかため息が出てくるようだった。「皐月! よかった。けどここは……」「廃都」「……だよな」 すぐに皐月に駆け寄って言葉を交わす。皐月は着地という一仕事を終えた後も警戒を解いていない。だがまあ当然それが用心しすぎということはない。俺たちがここに飛ばされた以上……居るはずなのだ。 完全にあの教室が崩壊したのか、空から無数の椅子や机が降り注ぐ。ぶつかったらまあ痛いだろうが、それ自体は特段危険でもない。ただ奇妙な光景ではあった。「水瀬……来てる。覚悟を決めておいた方が、いいかもしれない」 皐月はもう何かを感じ取ったようで、ただでさえ冷え切った空気の中冷たく言う。その冷たさは冷酷さから来るものではなく、思い覚悟から来るものだった。 そして俺にも……。「ああ、感じるよ。来る……」 そしてもうそこに彼女は、ハルはいない。あるのは敵意ではないが、決して親近感の湧くようなものでもない。 空が雷鳴に引き裂かれ、極寒の地に稲光が炸裂する。巨大な体は凍った海面に爪を立て、その四肢で力強く俺たちの前へ降り立つ。 教室という狭い空間から、そしてハルという一人の少女から解き放
Last Updated : 2025-12-27 Read more