例の教室にたどり着くと、すぐにがやがやとした人の声が俺たちを出迎えた。「これが……」 教室の本当の姿……。教室の名に違わず、たくさんの子供が居る。そうでないと分かっていても本当の学校に忍び込んでしまったかのような罪悪感にかられた。「ほら……今更見て回ることもないでしょ。さっさと先生をさがそ」「え、ああ……うん……」 教室に入った瞬間、俺たちの方に周りの人たちの視線が集まったが……今ではもう誰もこちらを気にしていない。あの皐月に対してもだ。まさか知らないということはないと思うけれど……どうもみんなそのことを重要に思っていないみたいだ。潜入する上ではやたらと干渉が無いのは動きやすくていいのだが、かといってここまで何もないとそれはそれで妙に不安に感じたりもする。 春もここに来ているのだろうか……と、少し気になりはするが、皐月は先を急ぎたいようでここで油を売る時間は与えられなかった。 教室を出て、廊下を二人で駆け抜ける。廊下は走るな、なんていうのはお決まりの言葉だが……それが徹底されることがないことも含めてお決まりだ。窓の外は暗く、どことも分からない闇が広がっている。しかし廊下は蛍光灯こそ点灯しているものの、それはほとんど飾りのようで……光源に関係なく昼間のように明るかった。「なあ、ところで皐月……お前はその、先生の居所に心当たりがあるのか……? 今、どこに向かってるんだ?」 学校なんて施設は……まあ特別な事情が無ければ大体の人が馴染みのある場所だろう。だからすべての場所を網羅しなくても、どこにどういう部屋があるのか、どういう道がどこへ続いていそうなのかは雰囲気で大体見当がつく。先生と名乗っているからには職員室に居るのかもしれないが……そういうものなのだろうか?「いや、全然。心当たりなんか無いし、ただなんとなく走ってるだけで、どこに向かってるのかもそんなにわかんないよ」「ええっ、何……勘ってこと? 大丈夫なのかそれ……」 皐月が何を考えているのかは分からないが、しかしその直感が何かを告げているというなら着いて行くほかない。春の口ぶりだと、先生っていうのはここではそんなに珍しい存在ではないみたいだったし……難しいことは考えなくても会えるのかもしれない。 皐月とは知りながら、ふと思う。そういえば……皐月って、学校はどうしてい
Last Updated : 2025-10-01 Read more