視線を伏せて、たむろする集団のそばを通り抜ける。鹿間さんからいくつか上手く彼らの仲間になる……というか、彼らの仲間として振舞うコツを教えてもらっていたから……少しそれを意識してみた。 できるだけ堂々と、我が物顔で……自らを孤高の存在のように思って歩めばいい……らしい。具体的にどうということでもないけれど、要は臆するなってことだ。潜入するからといって彼らは敵ではない。だから俺自身も敵だと思って臨んではならないのだ。 さて、ではそれを踏まえた上でどうするのかというと……。「どうすりゃいいんだ……?」 その答えは俺の中に無かった。対人経験の不足故に……俺の立場関係なしに人との接し方が分からない。ひとまず堂々と肩で風を切っているつもりではあるが、ところどころで見かける少年少女たちは各々の仲間たちだけで話しているだけで俺には見向きもしない。 どうするか悩んで、結果……一旦集団から距離をとることにする。まぁ小さな塊の集団があちこちに点在しているから、1個の集団から離れるということはまた別の集団に近づくことにはなるのだけど……。 しかしまぁそれはいいとして、とにかく不自然じゃないように見つけた自販機に向かっていくことにする。夜間でも変わらず働いてくれている自販機の明かりに歩みよって、ラインナップを眺める。 実際喉が渇いているわけでもないので買いたいものは無いがとりあえず硬貨を投入していく。そして視界の端にとまった無難なお茶のボタンが点灯したのを見て、特に考えもなくそれを押した。 自販機はその機能通り役目をはたして、俺の要望通りの商品を吐き出す。それを取り出そうと手を伸ばすと……。「ね、お兄さん……」「え……?」 突然背後から、見知らぬ少女に話しかけられた。お茶を取り出そうとしていた中腰の半端な姿勢のままで声の主に振り向く。すると……声の通り顔にも幼さを残した、しかし身に纏う雰囲気はどこか大人びた少女がこちらを見ていた。 少女は俺の姿を見ると、その身なりを観察するように視線を小さく動かして、そうして小さな笑みを浮かべた。「うん、やっぱり」「やっ……ぱり……?」 なんだか話しかけてくれたから、とりあえず繋がりは出来たか?とも思うが、それにしては手ごたえが無さすぎる。何かこれは、こう……。もしかして……俺の身分を察された?
Last Updated : 2025-09-21 Read more