「なんだか向こうも楽しそうだね」 わたし達は互いに子供のようにはしゃいで水をかけ合っていた。他の三人は何やら水辺で話しており、高嶺が妙に目を輝かせている。 「そうだな。キュアヒーローになった時はこんなことになるだなんて思ってもなかったよ」 「神奈子……一つ謝りたいことがあるんだ」 水面に映る自分の顔を見つめながら、暗くて重い腰を上げ件の話題を切り出そうとする。 「翠のことか? お前が要因の一つなのは間違いないけど、わざとじゃないしお前も街の人を守りたいが故の結果だろ? もういいよ。終わった事だ」 「いやそのことじゃない。それは……謝って許されることじゃないからね」 わたしは直接的にではないがそれでも確実に一人の命を、人生を奪っている。当時は自分には圧倒的な力があると、人々を守り導く運命なのだと慢心していた。 それが間違いだと、現実はそんな甘くないと知った時には全てが手遅れだった。キュアヒーローを通じて知り合った友人は死に、神奈子にも辛い想いをさせてしまった。 「そうか……じゃあ何だ? 謝りたいことって?」 「君にキュアヒーローを辞めろと言ったことさ。翠の死が何度も夢で出てきて……せめて親友の君にはキュアヒーローとは無関係で穏やかな生活を送ってほしかったから……」 言い訳ではない。これは全て本心だ。わたしは翠の人生を消し去り全てを否定してしまった。政府の判断で彼女は行方不明になっており、家族は今も待っている。二度と帰ってこない娘の帰りを。全てわたしのせいで。 だから彼女が残した遺志だけは尊重したかった。いつも話していた神奈子を守るという願いだけは。 「それならアタイも謝らなきゃいけない。翠が死んだことには少なからずアタイにも責任があるんだからな……」 「君に? いやそんなことは……」 「アタイも何も知らない時はノーブルばっか応援して、フィリアのことは見向きもしなかった。キュアヒーローの仕組みなんて知らずにな」 神奈子は一段と強く水を蹴り大きな水飛沫を上げる。激しく舞い上がったそれは散っていきやがては水面にぶつかり物悲しさを残し消えていく。 「お前を許せなかったのもあった。だけど同時に、翠が好きだって布教してきたノーブルをイクテュスに殺される前に辞めさせたかったんだ。せめてあいつが好きだったものを、好きだった姿のままに
Last Updated : 2025-05-24 Read more