Semua Bab 異世界マッチング❗️社畜OLは魔界で婚活します❗️: Bab 31 - Bab 40

57 Bab

あの絵の秘密(後編)

 ヒコが慌てる様子が分かった。 でも、こうなると、止められなくて…… そんなわたしの顔を、ヒコは覗き込んで来た。「……どうかした? え、顔色……」 思わず、わたしは顔をそむけた。「……なんでも、ないんです」 そのまま、彼へと背中を向ける。「ドアは、新品に変えてもらっていいです……」 すると、ヒコは語尾を濁らせた。「たしかに、そっちのほうが安くつくけど……」 修繕にきてくれたヒコに対して申し訳ない気持ちが、過呼吸を加速する。 父は、あなたが想像した通り、優しくて、物と、そこに宿る物語を大切にする人だった。 でも、それだけに、そんな父を変えてしまったのがわたしの絵だったと思うと……。 「──ちょっと、父のこと、思い出しちゃって…… 失礼します」 苦しくて、言い置くと、わたしは裏手に走った。  父への思いが、愛情と痛みとに分裂している。 一方は、この家ごと、わたしたちを温かく包んでくれた父そのもの。 でもその足もとに、絵にいきずまり画業に絶望した、もう一方の父の影がある。 ヒコの視線を背中に感じながら、わたしは家の裏庭に駆け込んだ。   逃げるように裏庭へと回ったわたしは、ふらつきながら、縁側のテラスに、やっとのことで腰を下ろした。 きっと目は赤かったことだろう。今にも涙がこぼれそうだった。 目が良くないとヒコさんは言っていたけれど、ああも声が震えていては、心配をかけないなんていうことは、とても無理だ。 深くため息が出た。  そこ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-20
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アオ、ライバル登場か(前編)

 ちょっと気恥ずかしい角の向こうへと、肩にアオを乗せたまま、わたしは顔を出してみる。 ヒコが、ドアの前で、折りたたみのノコギリを広げるのが見えた。 集中している姿は、メガネ有りでも、別の意味でかっこいい。 まるで本職の大工さんだ。 犬耳を小刻みに動かしながら、グリグリメガネの奥の真剣な目で、ドアに引いた鉛筆の直線まで、大胆かつ慎重に、ノコギリを入れていく。 けれど、さっき彼は自分のことを大工ではなく、〝村のなんでも屋〟だと自嘲していた。 なんでも屋さんって、なんですかと尋ねると、「魔法使いのお婆さん家の庭掃除をしたり、馬車で王都までの買い物に付き合ったり、鼻で探し物の指輪を見つけたり、子守りをしたり、ときには探偵の真似事なんかも……」 そう答えてヒコは、はにかんだ。「平たく言うと、無職だね」 ふと手を止めたヒコが、こちらに気付いたのか、振り向いていた。 わたしは、つい、腫れた目を、そらしたけど、「……おかえりなさいっす」 ちょっとだけ、耳を寝かせてヒコは優しい微笑みを見せてくれた。 気恥ずかしくもあるけど、わたしも微笑んだ。「だいぶ落ち着かれました?」 わたしはまた頷いてから、肩の上にいるアオに目をやった。「この子、アオっていいます。スライムです。居候中の……」「へえ」と、ヒコがメガネをなおしかけたとき、アオが肩の上でツンと顔をふくらませた。「居候じゃないよ! ぼくは、るんの婚約者!」 膨らんだままのアオに、ヒコは目をぱちくりさせた。 玄関先にしゃがんでいる彼には、きっと遠くて、アオがよく見えていないことだろう。わたしはアオのほっぺたをつついてたしなめる。「もう。婚約者っていうか、育成枠でしょ、アオ」 そう言ってやんわり否定の笑顔をするわたしにも、肩の上でむく
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-21
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アオ、ライバル登場か(後編)

父が昔、額縁を仕上げしているとき、子供のわたしもかたわらで、こんな匂いと音にひたっていた記憶がある。 それは今のアオのように、そばでああしているだけだったけれど、手仕事を見ているだけで、なめらかに心がほどけていくような気がし、飽きずに眺めていられた。 小窓でも取り付けても似合いそうなほど、きっちり四角く整形した穴のふちを、ヒコは、指先でゆっくりと横になぞっていく。 「よし。まずまずだな。」 その肩の上からアオが尋ねる。 「板をはめこむときは、釘でトントンするの?」 「ううん。接着剤を使うよ」 耐水の木工用ボンドだ。 あの酸っぱいような匂いを、わたしも思い出す。 父もよく使っていた。 「で、るんちゃん。」 そうヒコに聞かれて、わたしは我にかえった。 「あ、はい?」 ヒコはメガネの奥で、困ったように言った。 「板をはめ込み、あとは表面を削って調整すれば……今日中に応急処置まではできると思うんだけれど……」 言いながらヒコは、耳元を掻いた。 「……けれど?」 「うん。材料をどうするかなって」 ヒコはそう言うと、わたしに思案顔を上げた。 「オークの板材は、いま手持ちがなくて」 彼の家にはマツ材しか今、ないらしい。 仮にマツを使ったとしても、カンナがけをして仕上げ後にはオイルステンをかけるから、補修の跡や材料の違いで起きる継ぎ目は遠目にも分からないくらいにはなるけど……。と、彼は言った上で、 「でも、せっかくのお父さんのドアだし、やっぱり、はめ込む板もオーク
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-22
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上向きのエネルギー

 昼食後、ドアの修理が本格的にはじまった。 ヒコはメガネを外し、大きな虫眼鏡を使ってオークの角材をチェックしている。 うっかりその素顔を覗き見すると、やっぱり良すぎてドキドキする。 正視できないから、そそくさとその背中側に回り込んだ。 ささくれて歪んでいた穴は、今や綺麗な長方形へと整えられている。 そこに、ぴったりと角材を並べて収めるべく、ヒコの背中が慎重な作業を進めている。 膝もとに敷いた布切れの上で、角材の並びが、木目として自然になるように。 だけど、そこで虫眼鏡で覗き込んでいたヒコが、ふと手を止めてわたしを振り返った。「……そういえば、るんちゃんって、絵の人だっけ?」 わたしは、その目に見つめられて、赤面し、硬直した。(だから、顔が良すぎるんだってば……) ちょっとだけ視線を外して、なんとか、うなずく。「……い、いまは、ちょっと描けないけど。勉強は……してたよ」 ヒコは場所を空けて、わたしを手招いた。「じゃあ、ちょっとここを、るんちゃんにお願いしようかな」 なんだか分からないまま、乾いた布巾の前にしゃがみ込む。足もとで布巾の上に並んでいるのは、アオがアトリエから運んできた角材だ。 生地のままの表面が、淡い黄みを帯びたベージュ色をしている。 数年の乾燥で、昔よりも軽く感じる。 ヒコも、わたしの横で腰をかがめた。「ドアとおなじ正目になるように、木目を並べてみたけど、おれ、この通り目がよくないでしょ」 その破壊的に可愛い黒目がちなド近眼が細まると、なおさら愛らしくなることは分かった。わかったから……! 顔立ちのよさが邪魔で、わたしは思わずそっぽを向いて言った。「──じ、じゃあ、木目を出来るだけ合わせたいってことだね?」「うん。でも完全に合わせるんじゃなくて、遊
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-23
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下向きのエネルギー

(……またこのひとだよ……) わたしは、夢中で〝ドア中のドア〟を設計中の二人から、そっと離れて、裏庭に出ると、通話相手のいる王都の尖塔を眺めながら電話に出た。「お待たせしました。相川です」『息災か。相川るん』 魔王の声もどこかしら明るく聞こえる。 わたしは、おかげさまでと答えた。『昨日送ったアプリだがな、明細を確認してみるとよい』 わたしは言われるまま、画面をスクロールする。 すると、「本日付」と表示された項目に目が止まった。【+1,033 :犬男の素顔にドキドキ】【+30:スライム用のドア設置】【残高:‑500,103 ▶︎ ‑499,043】 「……は?」 まさか、と思いながら魔王に問いかける。「ねえ魔王、これって……?」『そうだ』「じゃあ、やっぱりこの胸のきらめく感覚が、創造の力ってこと?」『魂のエネルギーが上向きになっているとも言える』 魔王は満足げに続ける。『今回、お前が修理に際してした選択は、育む心に根付くものだ』 壊れたものごとを、マイナスに捉えず、遊び心を加えて、そこに新たな価値を生み出した。『見事な〝遊び心〟だ。褒めて遣わす。お前は魔界に一つ、創造の種を蒔いた』「そりゃ、どうも……」 手放しで褒められていることが、ちょっと照れくさい。 口元の緩みを擦って打ち消した。 それでも、魔王が言いたいことも、なんとなくわかる。 この数分で、自分の気持ちが確かに、少しだけ変わった気がしていた。なんかこう、心臓が輝いていた気がする。「なるほどね。心が輝くって、こう言うことか」 それでも、別件では気がかりもある。「ところで、肝心なドアの修繕費のことなんですけど
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-24
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アオのいない夜

 夜が更けて、ガスコンロの炎の上で、やかんの蓋が揺れてはじめた。 アオがいないと、夜の台所は、しん、と静かだ。 湯沸かしの音だけが、空っぽの我が家に響いている。  今ごろアオは、ヒコの家で夜ふかししているはずだ。 すっかり犬男の彼と意気投合したアオは、「ぼく、大工になって帰ってくる」と胸を張って着いていったきり、帰ってきていない。 だから、廊下でひとり駆けっこする音もなければ、塗り絵でテーブルが汚れる心配もない。 そのまま住み込みで弟子入りするのかなと思ったら、ヒコの肩越しにアオは「明日の朝には帰ってくる」と言っていた。 それって、つまり泊まりで遊びに行くってことじゃないか。 大工さんの修行はもっとたいへんだとおもうぞ。  でも、帰って来てくれるんだって分かって、ほっとした。 だから、無事に玄関のドアが塞がって安心もできたし、こうして、ひとり暮らしに戻った夜も、悪くない。  火を止めて、湯を注ぎ、インスタントコーヒーのひとさじを溶く。 マグカップから黒く立ち昇る香りに、今日一日の出来事がふんわりとよみがえる。 胸に浮かび上がってくるのは、 楽しかったな。 そんな思い。 自然に笑みがこぼれる。 わたしは、カップを持って、玄関のドアをあけた。  玄関外は、柔らかい月の光に満たされていた。 わたしはポーチに腰をおろして、コーヒーに口をつける。 外から見る、玄関ドアの補修跡は、ちょっとした傑作だ。 ドアの中央、きれいに四角くはめ込まれた新しいオーク材の、もう一つのドア。 それ自体が宝物庫のような、小さな別扉が取りつけられている。 つや消しの真鍮の取っ手に、切手しか入らないようなポ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-25
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ツンデレ天才画家と樹のお家

──それから、二週間。 午前九時。天気は、今日も快晴だ。 玄関のポーチに腰を下ろし、わたしは長靴のつま先で軽く地面を叩いた。山鳩の鳴き声が、ずいぶんと遠くに聞こえる。 今日は、裏庭の湖まで食料調達に行く。アオは、いまだに支度中だ。 水筒の麦茶に早速手をつけるわたしは、今日は父のお下がりのツナギを着ている。 袖はまくり上げて、ズボンのすそはきっちり長靴にイン。虫対策は抜かりなし。……まあ、それなりに田舎で育っておいて良かった。 十日払いの給料は、無事に振り込まれていた。 けれども、即座に引き落とされた玄関の修理代が想像以上の額で、ヒコさんに支払うべき日当と工賃も、半分以上はツケにしてもらった始末だ。 成婚してないから当然、成婚手当はゼロ。デート手当はアオ以外に誰とも会っていないので、これまたゼロ。 累積エネルギーはプラス29ポイントで手当は98円ぽっきり。しかも、基本給が日割りなもんだから、差し引きでまさかの大マイナス。 「……これもぜんぶ、アンタのせいだかんね」 わたしは銅像の背中に、軽く後頭部を当てて呟いた。すると、なにやら心の中で「やめてよぉ」と情けないハルトの声が聞こえたような気がした。 その時、胸ポケットのスマホが震えた。 画面には、[ウィスカー]の表示。 最近、連絡がなかったぶん、ちょっとだけ身構えた。 通話ボタンを押す。と、例の張りのある声が耳をつんざいた。 『あなたの婚活を全力サポート! ウィスカー商会でございます!』 わたしはスマホを遠ざけながら言う。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-26
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ミズオオバコと使いこまれたイーゼル

「でもなんか、綺麗だな……」 わたしはしゃがんだまま、水の上に咲く小さな花に見惚れた。「なんかこう、水面で葉っぱと花が隔てられてて、不思議だねぇ」 水のなかのオオバコとは良く言ったもので、葉の筋などが似ている。 かと言って、陸の締まった地面に根を張るそれのように、葉が硬そうには見えない。 むしろ、やわらかそうに透明感があって、瑞々しい。 アオが、レタスに例えた気持ちが理解できた。  肩の上からアオが、覗き込んで言う。「水が澄んでて根も浅いから、葉がよく見えるね。あれはたぶん、今が旬」「さすがー。雑草食マニア」「若くないと固くて苦いんだ」「ふふ。なんか吸血鬼みたいなこと言うね」 湖が育てた水の中の花壇みたいだなって思った。 花は手を伸ばすには、少しだけ遠くて、また触れてはいけないような品格があったけど、その水面下に揺れる葉っぱは、なんか気さくな感じに見えて、触れられそうな深さに見える。 つい。指先で触ってみたくなった。そっと手を伸ばしかけたが――「まって」 アオが止めた。「水はキレイだし、あさく見えるけど、底のドロは厚いかもしれないよ?」 そうなんだ……。「棒でつんつんして、深さをしらべてからにしよう」「もし、深かったらどうなるの?」「るんは首まで沈んじゃって上がってこれないかも」 わたしは震え上がった。「棒さがそ。棒! 木の枝でいいの?」 どこかに落ちていないかなと辺りを見回したが、湖畔を一周する道は、だれが掃除をしているのか枝一つ落ちていない。「ないねぇ……」 そんなわたしとは逆に、肩の上からアオは、遠く左手を眺めていた。「……あの森になら、いっぱい落ちてると思うよ」 アオが見ていた先には、家の対岸にいつも見えている小
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-27
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なぞの天才画家

「でもさ、どこ行っちゃったんだろ、その人」 アオの言葉に、わたしはキャンバスの裏を見て回る。 名前も、落書きも、何もなかった。 でも、イーゼルには微調整された跡が残っている。 使いこまれていて、交換したのか左右違う蝶番に、このイーゼルの大切にされている様子が伝わってきた。「このままにしておくのが、一番親切かな」 なんとなく、そう思う。 きっと、このイーゼルの持ち主は繊細な心の持ち主でもあるんだろう。 たぶん、と言うか、ほぼ確定で良いと思うけれども、あの森の中に駆け込んだのだろう。 わたしは横目で西の小さな森を見た。 描き手は、驚いたんだ。 筆を手に持ったまま、思わず駆け出したくらいに。「……驚いたんだよ、きっと。わたしたちに」「え?」 アオは不思議そうな顔をした。「なんで? こんにちは、って言えばいいのに」「そうねぇ。アオは人懐っこいから……それが出来るかもしれないけれど……」 ……ただ、そのひとが、いつもどおり湖を描いていたら、あの家からわたしたちが出てきちゃったのだろう。 その時、謎の絵描きは、こう思ったはずだ。「──たいへん、このままじゃ、話しかけられちゃう!! ってね」 わたしはそう言いながら、肩の上のアオの喉を、くすぐってやった。「わたしもね、ちっちゃい頃は……そういう人見知りなとこがあったから、なんとなくわかるんだ」 だって、なにしろ二週間前、突然、この湖の一番良い場所に。家が生えたのだ。「だけど、あれだけの絵を描くことができるんだから、その絵描きさんは、ずっと長い間、この湖を描いてきたんだと思うんだよね」 つまりは、わたしよりも長く、この湖を愛してきた人なんだと思う。 なのに、その人の預かり知らぬところで決まった話で、ある朝、家が生えていたんだもん。「だか
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-28
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預かります、あなたの絵!

──台所。 大鍋に湯を沸かし、ミズオオバコの葉を一枚ずつ水道水で洗っていく。 薄緑色の葉は柔らかくて、繊維の硬さはない。絹みたいな感触が指に心地よい。 陸の野菜とも、ワカメのような海藻とも違う、不思議な質感……。 「……でも、どのくらい湯通ししたらいいんだろ」 はじめての食材に、つい、独り言が出る。 普段ならここでスマホ検索をしたところだけど、この魔界ではネットが繋がらない。 いやむしろ、ネット自体がないのかもしれない。 電話の機能と、いくつかのアプリだけがスマホで生きている。 しかも、連絡先は、どこで初期化されたのかウィスカーと魔王の番号だけになっていた。 そこかしこに、魔王の影を感じる。 電波状態の表示は羊の角《ツノ》。 つまり、あいつのツノと、よく似たデザインだ。 ともかく、この湖畔の電波状態は良い。 容姿はアレだけど、悪い人じゃなさそうだし、まあいいか。 ──鍋の中で湯が沸騰をはじめた。 「おっと……」 煮えたぎる湯に、山盛りの葉をザルごと沈める。 アオの話だと、このミズオオバコの若葉はちょっと苦いらしい。 アク抜きと殺菌を兼ねて、まあ、小松菜感覚で三十秒くらいの湯通しでいいかなと。 そうして数え始めたところで―― 「るんちゃん大変! 降ってきたよー!」廊下からアオの声が響いた。 帰宅した時にはもう、外は雨雲で暗かった。 と、いうことは……。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-05-29
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