Todos os capítulos de 異世界マッチング❗️社畜OLは魔界で婚活します❗️: Capítulo 21 - Capítulo 30

57 Capítulos

見てはいけない絵(前編)

 アオは、洋間の前で、立ち止まり、息を吸いこんだ。 わたしもなんだか、緊張してくる。 ここを開ければ、父のアトリエがあるのだから──。 水風船ほどの小さなからだで、アオが、意を決したように真鍮のドアノブを見上げた。 「──いい? アオ、心の準備はできた?」 わたしが尋ねると、彼はドアの前で、「うん!」と、大きくうなずいて見せた。 と、言っても、中に何か特別なものがあるわけじゃない。 亡くなった父の画材と、落書きでしかないわたしの絵が、あの雨の夜の火事の直前のまま、残っているだけだ。「じゃ、あけるよ、アオ」 わたしはノブを押し下げる。 わたしが入るわけじゃないのに……やっぱり心臓が早鐘のように鳴りはじめた。   わずかに開いたドアの内を、アオが恐る恐るのぞきこんでいく。 引けた腰を廊下に残したまま、目だけがドアの向こうに伸びている。 そのさまは、背中から見ていても、さすがスライムといった感じだ。 アオは、目を、こっちに引っ込めた細長い体で振り向いて、「……ほんとに、このアトリエ、おばけでないんだよね?」 わたしに何度目かの確認をした。 アトリエの中央にあるイーゼルに掛かった〝それ〟の正体を、知りたい気持ちと、知りたくない気持ちがせめぎ合って、アオの体がドアの角で真っ二つになりそうだ。 わたしはうなずく。「うん。……でないよ。あそこにあるのは、わたしが昔描いた落書きの絵……」 そう。あの絵は、あくまでわたしにしか見えないオバケだ。「けしてアオには悪さをしないわ」 するとアオは、伸びきっていた体を、ぱちんと水風船に戻して、わたしを見上げ、力強くうなずいた。「──わかった。 …&hell
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見てはいけない絵(後編)

 アオは目を閉じたまま、アトリエを壁沿いに進んでいく。 小さな心臓が駆け足で鼓動を打っている。 どれだけ工具箱に近づいたかと、アオが目を開けると、まだ半分も進んでいない。 ため息をつき、彼は天井を見上げた。 天窓から差しこむ光が、室内の中央に落ち、イーゼルと画板の背中を照らしている。 しずかに空気は乾燥している。漆喰の壁が光を反射し、部屋はとても明るい。  アトリエの角には、古びた机が見えた。 几帳面に片付けられた画家の作業場が、昨日のまま封じこめられたような、時の止まっている空間だ。 アオの鼻腔が、木材と、油絵具と、わずかに残る溶剤の匂いを嗅ぎ取る。 彼は気を取りなおし、るんから言われたとおり、右の壁に這う。めざすは棚の下の工具箱だ。  たどり着いた棚の下で、彼はガラクタとそうでないものの区別がつかないようだ。 壁に立てかけられたオーク材の棒の束。 なんだかくらくらする臭いの入ったビン。 大きな空き缶のなかを覗きこもうと、アオは金属箱の上によじ登る。 中には、つぶれた絵の具のチューブ。   アオは、その金属箱の上から、遠く目を走らせて、青い工具箱というものを探した。 しかし、一向に、見つからない。 なにしろ、探し物は足もとにあったのだから。 年季の入った工具箱だった。「これだったっぽいね……」 アオは、踏み台にしていた工具箱の上で、バランスを取りながら、冷たい蓋を開けてみる。 と、中には小ぶりなバール、そして使い込まれた木槌があった。「やった……」声が漏れる。 宝物を発掘したような高揚感はないが、これで帰れるという安堵感はある。 顔を上げると、工具箱のうえからは、ドアまでの帰り道がすぐ
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魔王の本命

 夕暮れの風が吹きはじめた。 家の東側、玄関と駐車スペースには、すでに影がかかっている。 バールを手にし、見上げるような木箱の前に、わたしは立った。  いまから、これを開けるのだ。 ピンクのパーカーとスキニーはそのまま、髪はひとつにまとめてある。 手には軍手をはめ、「よし」と気合いを入れる。   魔王から届いた木箱は、見上げるように大きい。 このサイズで銅像なら、ふつう四人は手が欲しい。 でもここには、わたしと、スライムしかいない。「開けるよ、アオ」 蓋は、真新しい釘で十箇所ほど打ち付けてある。 わたしはバールの先割れした先端を、釘の頭の下に当てがって、背面を木槌で叩いていく。 浮いた釘の頭は、バールを寝かせることでするりと抜ける。 一本、二本、三本、と、引き抜いた釘を、アオの頭に預けていく。「すごい……」アオが見上げながら、つぶやいた。 わたしは笑む。「まあね。慣れてるからね。」 ここまで大きいサイズは久々だけど、仕事で木箱はしょちゅう開けている。 わりとある仕事だ。 海外から届く絵画とか。 手を止めずに作業する。「なんのお仕事してたの?」「画廊のスタッフよ。」 アートの舞台裏で奮闘する、実務的な存在。「要するに、素敵なお絵かきを一番すてきに見えるように飾ったり、お聞かせしたり、欲しいひとにはどうぞ! って売るお仕事かな」 わたしは答えながら十本目の釘を抜いていく。 錆びていないところを見ると、梱包したのはごく最近ということだ。  ベニヤの蓋を抑え、慎重にずらして外していく。 中身がわからないのが面倒だ。「よし、ではいざ、
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ハルト、あんたって人はどこまで着いて来るの?!

 家路をいそぐカラスが、頭上を飛んでいく。 わたしは王宮の方へ足を向けた。 なんていうか、もしかして、魔王って……「ばかなの……?」 思わず、呟いてしまった。  ミイラを……レプリカにして贈る意味とは、一体…… 燃えるゴミを、燃えないゴミにして、ポエムを添える。その意味も行動も、さすがに異次元、いや、異世界……!  わたしは、カードを握り潰して捨てた。 モノがモノなだけに、配達人のオーク姉さんの力でも借りて埋めるなり送り返すなり処分するまでは、こいつを封印しておく必要がある。 わたしは曲がり釘を木槌で直し始めた。 しかし、アオが興奮したのか、飛び跳ねながら踊りだしている。「るんって、すごいんだ! 魔王さまからプレゼントもらえるなんて、すごいすごい!」「……ねえ、アオ」「なあに?!」「……いや。この世界って、嫌がらせに銅像を送ったりする習慣とかあんの」 アオは首をかしげ、足を止め、「聞いたことないけど、え? 嫌がらせって……どういうこと?」 そのままハルトの銅像の顔を見上げた。「この人、るんの知り合い?」  わたしは黙々と釘を直していく。 もう一度、蓋を打ちつけるためだ。「そうね。知り合いと言えば、知り合いだけどね、でも、仲は良くないわ」 よし。釘は真っ直ぐになった。 わたしは木槌を手に立ち上がる。「──アオ、手伝って。木箱を組みなおすから、あんたは蓋を押さえてて」 アオは目を丸くする。「え? ってコトは、るん、もしかして、この銅像、魔王さまに
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そ、そんなんじゃないって!

わたしの名前は、相川るん。 都内某所のギャラリーで、スタッフをしている。 いわゆる社畜の十年目だ。 高校時代の友人と三年ぶりに新宿で飲んでいたら、元彼で、幼馴染の岸部ハルトが顔を出し、不本意ながら送ってもらった。その帰り道、たぶん…… わたしは、トラックに轢かれたんだと思う。 気がついたら、そこは魔王の玉座の前だった。 体には、傷ひとつなかったけれど、横でハルトのほうは干からびてミイラになっていた。どうもそれは、わたしの拒絶心のせいらしい。 そこから、なんとなく。いろいろとあって。 わたしは今、この魔界で、湖畔に再生した生家に住みながら暮らしている。 いわゆる、異世界転生と言うやつだろう。 ハチミツをひとさじ、マグカップに落とし、台所で紅茶を注ぐ。 ぼんやりと歩いて、廊下から沈む夕陽を眺める。 裏庭の湖の向こう、遠い山脈へと沈んでいく夕焼けを、見送る。 オレンジから夜色に変わっていく空と星の境目が、穏やかだ。 いろいろあったと言ったのは、魔王との契約だ。 魔王は、創造のエネルギーをこの魔界に呼び戻すため、わたしを召喚したらしい。 その方法に、消去法でわたしは、婚活を選んだ。 その最初の相手が──スライムの、アオ。 彼は今、床の間のダンボール箱の中で、タオルケットを半分までかぶって眠っている。 我が家の玄関に大穴を開けてしまって彼は、さんざん泣いて、ずいぶん凹んで、出ていこうとしたけれど、わたしが引き留めた。 行き場のない迷子を、たとえそれが魔物でも放ってはおけなかったし……それに、あのアオがいれば、魔界での新生活が、きっと楽しくなると思ったから。 小さくて青くて、透明な水風船というか、大きめのグミキャンディみたいな彼は、マジックで描き入れたような目と口が、ちょっとかわいい。 そして、彼を泣かせたのは、いまも玄関で頭を突っ込んだまま斜めに刺さっている──あいつ。 ハルトの銅像だ。 なんの意味があるのか、もうまるでわからないけれど、メッセージカードを添えて魔王が送りつけてきた。 繰り返しになるけど、大事なことなので二回言う。 まったく、その意図が分からない。 重くて動かせないし、とりあえず、はまったままのドアも開かないし、そのままにしてある。 文句の電話は直接
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無自覚イケメンとドアの穴(前編)

 ──翌朝。 家の玄関は、相変わらずハルトの像が外から突っ込んでいた。 銅像なだけに、勝手に帰って行ったりはしないみたいだ。 とは言え、このハルトをどかして、腕を突っ込めば、外側から玄関のカギを開けることはできてしまう。 それで無いよりマシかと思い、元カレのハルトの銅像は、そのままにしておいたわけだ。 もっとも、わたしとアオで押しながら引いたところで、この百キロちかい重たい像を動かせる気はしない。   洗面所で歯を磨きながら、軽いため息をつく。 与えられた住まいだけど、この修繕費は魔王とわたし、どっちが持つのだろうか。 この魔界での生活と婚活が言わば今のわたしの仕事で、ユーザーフレンドリーな給料体系ではあるけれど。  和室から、寝息が聞こえる。 ダンボール箱の中でアオは、きっとまだ夢の中。 だから、修繕費のことはあの子に内緒だ。 バンスグリップで髪をざっくりとまとめて、キッチンへ。 今朝もヤカンで湯を沸かし、マグカップに注ぎながら、テラスへとつながる廊下のサッシを開けた。 朝の空気が心地よい。 目の前に広がる湖は今日も美しい。最高だ。まるで絵画。 ……でもこの、構図。最高なんだよな。 湖の平面と、山と空の奥行き。 借景として、まるで完璧に計算された立地だ。 もしも、魔王が、これを計算して昔の生家を、この湖畔のなかでもベストポイントであろうココに狙って生やしたのだとしたら、その美的センスは褒めざるを得ない。 けれど。 ……プレゼントのセンスは、完全にどうかしてる。 なぜに、元カレの銅像をレプリカにして送ってきたか。 一晩、わたしは目が覚めるたびに考えたが、やっぱり明確な答えは出なかった。 口にする白湯が、ちょっとだ
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無自覚イケメンとドアの穴(後編)

 ただし、そのお金持ちな吸血鬼は気位が高く、相手にもその爵位相応の教養を求めているらしい。「そうなんだ」わたしは言った。「でも、こっちにはそんな教養ないよ」 ウィスカーは、電話の向こうで鼻を鳴らす。『……またそんなことを。では我がウィスカー商会の婚活セミナーを受講されてはいかがですか?』 だけど、そもそも、わたしは乗り気じゃない。「ウィスカーさん、せっかくだけど、わたしお金持ちとか、あんま興味ないんだよね」 そこも、実際結婚して子育てをするなら、きっと大事だ。 でも、一回死んじゃったうえで人生をやり直しているわたしには、徒歩圏内にいる好きな人のほうが、ずっと大事な気がする。……って、言おうとした顔に、ふとドアの修繕費のことがよぎる。「──いやいや、」 わたしは首を振る。「……それにね、吸血鬼ってだけで、こっちはだいぶアウトなんだけど」 血とか、抜かれそうじゃん。 ウィスカーは、電話口で慌てている様子を見せた。『で、ですが、この伯爵様、実は、相川様にかなりご執心とのことで…… 実質の成婚レベルはぐっと下がる好案件かと……』 問題はそこじゃあない。この婚活業者、やっぱりどっかずれてるよな…… わたしは頭を掻きながら言った。「ていうかウィスカーさん、またなんか隠そうとしてない?」『うっ……』 ……図星か?「じゃあこっちもズバリいうわよ。その〝伯爵さまのご執心〟って、要はわたしの血か年齢なんじゃないの?」 そう言うと、ウィスカーは沈黙した。『……はい。伯爵さまは相川さまのご年齢をいたくお気に入りで……』&nb
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犬男のヒコ(前編)

 洗面所であわてて前髪を直し、わたしは急いで玄関へ向かった。 今しがたチャイムの音がして、元気な声が「おはようございますー!」なんて叫んでいたからだ。 きっと、昨日魔王に頼んだドアの修理業者だろう。 ……と思ったのだけれど。 ハルト像の頭が突き出ているドアの内鍵に、手をかけると、玄関の表で、なにやら楽しげな話し声が聞こえていた。 わたしは、土間にそっと下りて、玄関ドアに耳をつけてみた。 すると、表では、若い男性がお喋りしている様子だが、そのやり取りが、やけに一方的な様子だ。 でも、そうなると、──え? 誰かもうひとりいる? ……いやいや。それにしては合いの手の間がまったく聞こえない。 となると、電話かな……。 いずれにしても、気になる。 そこでわたしは、そのままドアの向こう側へ聞き耳を立て続けた。 「……いやー、今日はいい天気ですねぇ! 朝からこんな晴れると、気分も上向きますよね? って、あれ、やっぱ無言ですか。あ、そうか、シャイなんですか? いやちがうのか。じゃあ、もしかしてあなたも玄関の修理に?」 若い男性の声は、フレンドリーすぎる。人懐っこい調子で楽しげに話しかけているが、そう。まるで、ずっと誰かに無視されているみたいだ。 わたしの背中に寒いものが走る。 やっばいのが来ちゃってるのかもしれない……。 返事が返ってきていないのに、めちゃくちゃ普通に話しかけ続けている。 わたしはなんだか、かわいそうを通り越して、怖くなってきた。 首をすくめて、土間から後ずさる。 ……こわい。ってか、スマホはあるけど、魔界って110番はあるのか……?!  でも、ドア越しにわたしは、恐る恐る声をかけた。「&h
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犬男のヒコ(後編)

しょんぼりとした声で、犬耳を寝かせ、ヒコが言う。「……いやホントにおれ、気づいてなかったんです」 話しかけていた相手が銅像だったとしてもだ。 ドア突き破って頭をつっこんでいる時点でオカシイとは思わないのだろうか。 「ブフ……!」わたしはうっかり噴き出した。 そんなことって、あるだろうか。「だって、どこから見たって銅像ですよ。ヒコさんって天然さんで可愛いんですね」  しかし彼は両耳を伏せて言った。 「いや、おれ、目が悪くって……」 ヒコは、鼻先をハルトの像に近づけて、グリグリメガネの奥で目を凝らしたあと、さらに指の先で顔に触れた。 そして、驚いたように跳ね退いた。「ほんとだ!! これ、銅像だ!!」犬耳が伏せている。しっぽが怯えたように股ぐらへ丸まっている。 わたしはたまらず、またお腹を抱えた。 そのイヌ顔に、グリグリメガネが、信じられないくらいに似合っている。 頭の上で忙しい犬耳の先が垂れているのは、このひとの普段なのかな。 なんだかフレンドリーだったり、しょぼくれたり、驚いて飛び退いたり、感情豊かで面白いけど、どこかかわいそうで、可愛い。 あんまり笑って悪いから、わたしは手を合わせた。「ドアからはずそうにも……。銅像ですからね、そのまま置いておいたんです。なんかごめんなさいね」 重すぎて、ハルトは手に負えなかった。 するとヒコも、同じように眉毛をさげて笑った。「銅像ですもんね。どおりで、なんかずっと無視されてるな〜とは、思ってたんですよね……」 またこの、しょんぼりと笑う表情が、かわいそうで、かわ良い。「まぁでも、その上であれだけグイグイいけるの、ハート強いなって思います」 ヒコは恥ずかしそうにミミを隠した。
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あの絵の秘密(前編)

 犬男のヒコは、グリグリメガネをかけ直し、慎重にハルト像の首にロープを巻きつけていった。 そして、わたしに向きなおって言った。「ドアを突き破っていますけど、幸い像にドアが噛んじゃったりしてないので、これで引っ張ればなんとかなると思うんだよね」 そしてまず、彼はひとりでロープの先を、慎重に引きはじめた。「るんちゃんは離れてて。大丈夫だとおもうけど、念のためね」 みしり、と木製の玄関ドアは音を立てた。 ハルトの銅像は、台座を支点にして、たしかに少し浮き上がっているように見えた。 首に巻きついたロープに触れながら、ぐるじい……と、どこかでハルトが言っているような気がして辺りを見回したけれど、相手は銅像だ。気のせいにちがいない。 ヒコのシャツの背中は、引っ張っているロープに筋肉が膨らんでみえる。 なんか、目のやり場に困った。 アプリの通知を消しておいて助かった。 胸のドキドキを抑えながら、「どうです? いけそうですか」 手伝いましょうかと、わたしはヒコに背中から声をかけた。  ヒコは、「いいかんじかも、たぶん行けそう」と答えながら、ロープをギリリと引いた。 すると彼の計画通り、ハルトの頭部はドアの裂け目を抜けだした。 慎重にロープを引きながら、ヒコは銅像に近づいていく。 そして横から支えて、ハルトの像を地面に屹立させた。  白いロープが首に巻きついているハルトは、どう見ても穏やかじゃないけど、ようやく立ち上がった姿の銅像に、青空が映えている。 とりあえずわたしは、ほっと胸を撫で下ろすことができた。    犬耳を揺らしながら、ヒコは玄関ドアに開いたバレーボール大の穴を覗き込む。 そのすぐ後ろで、わたしも木製ドアの厚みを初めて知った。
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