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なぞの天才画家

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last update تاريخ النشر: 2025-05-28 10:46:00

「でもさ、どこ行っちゃったんだろ、その人」

 アオの言葉に、わたしはキャンバスの裏を見て回る。

 名前も、落書きも、何もなかった。

 でも、イーゼルには微調整された跡が残っている。

 使いこまれていて、交換したのか左右違う蝶番に、このイーゼルの大切にされている様子が伝わってきた。

「このままにしておくのが、一番親切かな」

 なんとなく、そう思う。

 きっと、このイーゼルの持ち主は繊細な心の持ち主でもあるんだろう。

 たぶん、と言うか、ほぼ確定で良いと思うけれども、あの森の中に駆け込んだのだろう。

 わたしは横目で西の小さな森を見た。

 描き手は、驚いたんだ。

 筆を手に持ったまま、思わず駆け出したくらいに。

「……驚いたんだよ、きっと。わたしたちに」

「え?」

 アオは不思議そうな顔をした。

「なんで? こんにちは、って言えばいいのに」


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  • 異世界マッチング❗️社畜OLは魔界で婚活します❗️   姉さんに相談してみよう(前編)

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  • 異世界マッチング❗️社畜OLは魔界で婚活します❗️   ヒコの馬車とマヌルのツリーハウス

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  • 異世界マッチング❗️社畜OLは魔界で婚活します❗️   思いがけないマッチング相手

    ──翌朝は、嘘のように晴れた。 空気が豪雨で洗われたせいか、遠くの山脈が今日は細部まで見えた。 わたしは縁側テラスで白湯を啜っている。まだちょっと眠い。 目をやると、アオもまだ、みかん箱の中で寝息を立てている。 朝靄のかかる湖を眺めながら、あくびをした。 昨日、雨の中で回収したイーゼルとキャンバスは、拭いてからアオに頼んで洋間のアトリエに立てかけてもらった。

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