和室にちゃぶ台を出し、マヌルさん宛の手紙を書きはじめた。 けれども、どうにも文章が堅い。というか、手癖のせいで――なんだかビジネスメールみたいになってしまう。 お世話になっております…… とか書いちゃってるし。 「──だめだな、こりゃ」 はぁ、とため息をつきながら便箋をくしゃりと丸めて、大の字に寝転がる。 天井の染みに目をとめて、ぼんやりと考えた。 最後にプライベートな手紙を書いたのは、いつのことだろう。たぶん、学生のころか。それこそ十年以上前の話だ。 喧嘩をして、しばらく電話に出なかったとき、ハルトから封筒で手紙が届いた。 何日か開けなかったけど、机の片隅に置いたきり、それは心のどこかにずっとあった。 学校で絵を描いている時も、バイトをしている時も。 一週間ほどして、気も晴れてしまったのか、休みの日に封を切ったら便箋に三枚の手紙が入っていた。 小学校のときと変わらないハルトの字に、ちょっとほっとして、電話をかけたっけ。 わたしは畳に体を起こした。 やっぱり手紙は良いな。 面とむかって言えないことも、心をこめて書ける。 ちょっと休憩でもしようと立ち上がった。 廊下に出て、台所へ向かう。 その途中、ふと窓の外に湖が見えて、わたしは足を止めた。
Terakhir Diperbarui : 2025-06-11 Baca selengkapnya