詩乃は唇を噛みしめ、うつむいたまま、どう説明すればいいのか分からずにいた。浩平に近づきたくない、あの夜のことを思いだしてしまうのが怖い......なんて、言えるはずがない。その頃、輝と他の人は、花嫁の靴を探していた。部屋の中は、とても賑やかだった。一方で、詩乃と浩平は部屋の隅に立っていた。二人は向き合っていたが、微妙な空気が流れ、周りの賑やかさとは不釣り合いだった。澪央は視線を向けると、浩平が一人でいることに気づき、内心ほくそ笑んだ。彼女は賑やかな人混みから抜け出し、浩平の方へ向かった。しかし、近くまで行くと、浩平の隣に女性が立っていることに気づいた。女性はうつむいていて、身長は165センチくらいで、上品な雰囲気で、清楚な服装をしていた。特に目立つ特徴はなさそうだった。少なくとも、澪央のようなダンサーの目から見ると、こんな女性は脅威にはならないだろう、と思った。澪央は身長170センチで、完璧なダンサー体型、そして誰もが認める美人顔。今回帰国したのは、芸能界デビューを目指していたからだ。浩平は有名な映画監督だ。もし彼を落とすことができれば、素敵な彼氏ができて、芸能界入りの足掛かりにもなる。そう思って、澪央が浩平のそばまで来ると、優雅な笑みを浮かべながら言った。「我妻監督、どうして皆さんと一緒に盛り上がらないのですか?」それを聞いて、浩平は澪央の方を向き、冷ややかな視線で、少し不思議そうに言った。「あなたは......」彼は目の前の女性を知らないのは確かだったが、今日の介添人は、音々や輝と親しい人物か、岡崎家の親戚筋だろうと彼も分かっていたから、あまり冷たくはしなかった。一方で、詩乃は顔を上げて澪央を見た。彼女はたまたま澪央のことを知っていた。澪央は動画サイトやツイッタのアカウントを持っていて、海外留学中の練習風景や、公演の様子などをよく投稿していたので、フォロワーも多く、人気のインフルエンサーダンサーだったのだ。詩乃も彼女の動画が好きで、フォローはしていなくても、おすすめに表示されるとつい見てしまい、「いいね」を押していた。まさか音々の結婚式で澪央に会えるとは思ってもみなかったし、彼女が介添人だなんて、さらに驚きだった。しかも、澪央が浩平に話しかけているなんて......詩乃にはすぐに
Read more