今回は朋花が空港まで、直々に浩平と彼が連れてきたメイン脚本家を出迎えに行っていた。双方のスケジュールがタイトだったため、打ち合わせはシアタービル内の会議室で行うことになっていた。顔を合わせると、挨拶もそこそこに席につき、さっそく本題に入った。朋花と桜は脚本をざっと確認して、二人とも良い作品だと思った。打ち合わせの結果、その場ですぐにこの映画を引き受けることに決めた。浩平が提示したギャラは相場よりも高く、朋花に異論はなかった。そして、契約書を交わす日程も決め、この話はまとまった。その時、浩平に電話がかかってきた。彼の妻の詩乃からだ。すると、さっきまで真剣な顔をしていた彼だったが、電話に出た瞬間、目元がふっと優しくなった。彼はスマホを耳に当てたまま皆に軽く会釈すると、会議室から出ていった。まさにネットで噂されている通りの、愛妻家ぶりだ。一方、朋花も立ち上がって、桜に言った。「社長に電話して、この良い知らせを伝えてくるね」「うん」桜は軽く頷いた。朋花が出ていくと、会議室には桜と脚本家の石原美雨(いしはら みう)だけが残った。美雨は桜の真向かいに座っていた。向かい合って座る二人。なぜだか少し気まずい空気が流れていた。桜と美雨は中学の時、1学期だけ隣り合わせの席に座ったことがあった。でも、特別仲が良かったわけではなかったから桜が転校してからは、一度も連絡を取っていなかった。桜は中学1年生の1学期だけ、隣町の中学校に通っていた。しかし映画撮影のため、すぐに北城の学校に転校してしまった。それでも、美雨のことはよく覚えている。美雨は学校中の誰もが認める優等生だった。父親は教頭で、母親はベテランの国語教師。両親ともに同じ学校に勤めているエリートだ。美雨もまた彼らの期待に応えて、小さい頃から聡明で成績優秀だった。親戚からも評判で、学校の先生や生徒からも好かれていた。当時、美雨は学級委員長で、桜とは隣の席だった。美雨はクラスの誰に対しても親切で、それは入学初日から、その美貌で注目の的だった桜に対しても同じだった。桜の記憶の中で、美雨は欠点のない完璧な子だった。まるで絵に描いたような優等生で、同級生や先生たちからも、そういう目で見られていた。美雨のあまりにも完璧な印象が深かったのだろう。だから、十数年も連絡を取
Ler mais