安人が御島壱番館に帰ってきたのは、もう夕方の4時過ぎだった。桜はまだ27階にいた。安人は家に桜がいないのを見て、彼女に電話をかけた。電話は繋がったけど、桜のいる方が少し騒がしい。安人は少し眉をひそめて尋ねた。「何してるんだ?」「ホラー映画を見てるの!」桜の声は少し強張っていた。「今ちょうどクライマックスなのよ。用がないなら、一旦切るね!」そう言われ、安人は一瞬黙った。確かに彼も特に用事があったわけではない。「そうか、じゃ、そのまま見てていいよ。ただ家に帰ったって伝えたかっただけだから」「うん、わかった」そう言うと、桜はあっさりと電話を切った。そんな、桜に安人はすっかり言葉を失った。数秒後、彼は仕方なさそうに口の端を上げた。つれない子だな。……桜がホラー映画を見終わったのは、もう5時半だった。すっかり怖くなってしまった彼女は、一人でエレベーターに乗ることもできないでいたから、寧々と夏帆に付き添ってもらうことにした。寧々も桜と同じくらい怖がりだったけど、夏帆は落ち着いていた。3人でエレベーターに乗って28階に着くと、桜は二人を晩ご飯に誘った。でも、夏帆と寧々は首を横に振った。「明日から撮影でしょ。碓氷さんは今夜、あなたと二人きりで過ごしたいはずよ。お邪魔虫になるのはやめておくよ!」それを聞いて、桜は言葉に詰まった。一方、夏帆は何も言わず、黙ってエレベーターの閉じるボタンを押した。それを見て桜はさらになんて言えばいいのかが分からなくなった。まったく、二人とも気を利かせすぎよ。実際、今の桜にとって、安人と二人きりになることこそが一番怖いことなのに!そう思って、桜はゆっくりと閉まっていくエレベーターのドアを見ながら、そっと腰に手を当てた。やっぱり、昨日の夜、彼に惑わされて、成すがままにされるべきじゃなかった……桜は唇を結んで小さくため息をつくと、玄関のドアの前まで歩いていき、鍵を開けた。だが、ドアを開けて家の中に入ると、リビングには誰もいなかった。安人はいないの?そう思いながら、中に入って靴を履き替えようと靴箱を開けると、彼の革靴はちゃんとそこにあった。それなら、きっと書斎で仕事をしてるんだろう。桜は部屋用のスリッパに履き替えると、リビングのソファに腰を下ろ
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