......四十分後、療養所に到着した。裕也は車から降りるとき、見慣れた車を見かけた。彼は一瞬動きを止めた。もしかし大輝もここに来ているのか......真奈美は、彼の視線の先を追った。そして、彼女も大輝の車を見かけた。途端、彼女の顔色は変わった。「まずは上に行こう」裕也は車椅子を広げ、真奈美を座らせた。真奈美が座ると、裕也は毛布を彼女の膝にかけた。彼の細やかな配慮は、自然と身についているものだった。真奈美は医師は皆こうなのだと思い、深くは考えなかった。......聡の病室は20階、最高級の個室だった。裕也は事前に連絡をしていたので、エレベーターを降りると、聡の担当医が既に待機していた。挨拶を交わした後、担当医は彼らを病室へ案内した。だが、来る途中、大輝の姿はどこにも見当たらなかった。裕也は気にしながらも、表情には出さなかった。病室は暖色系のインテリアでまとめられ、高級ホテルのように快適な空間だった。設備も充実していた。担当医は40代ほどの男性主任だった。彼は真奈美に、聡のここ一ヶ月の検査データについて説明した。真奈美にとって、このような説明はもう聞き慣れたものだった。毎回のデータがほとんど変わらないことさえ、覚えていた。悪化はしていない。しかし、回復の兆しもない。最愛の兄は、このまま一生目を覚まさないかのようだ。真奈美は毎月聡に会いに来ていた。しかし、ここ二ヶ月は自分のことで精一杯で、来られずにいた......「兄と少し話をしたいの」真奈美はベッドの脇に座り、静かに言った。裕也は頷き、主任と一緒に病室を出て行った。病室のドアが閉まった。裕也は少し間を置いてから、主任に尋ねた。「今日、誰か来ませんでしたか?」主任は目を泳がせながら、大輝からの指示を思い出し、こう言った。「いいえ。新井さんの面会は、彼の妹さんの許可がない限り、認めてませんので」それを聞いて、裕也は頷いた。しかし、主任の動揺を見逃さなかった。彼はあえて追求せず、事を荒立てないようにした。病室で、真奈美は聡の手を握り、声を詰まらせながら言った。「お兄さん、ごめん。今日まで、自分がどれだけ間違っていたのか分からなかった。あの時、あなたはすごく怒ってたよね?ごめん。私はわがまま
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