篠宮悠璃(しのみや ゆうり)は、夜中に熱冷ましの薬を探しに階下へ降りると、別荘の玄関が開け放たれていることに気づいた。ぼんやりして戸を閉めようとしたその瞬間、ふいに、唇と舌が絡み合う艶めいた音が響いた。自動照明がパッと灯り、目の前にはあらわな体が、何の隠しもなく晒されていた。三日前に一度見かけたあの女が、夫の篠宮楓(しのみや かえで)に玄関のドア板に押し付けられ、激しくキスされていた。彼女の頬はほんのりと紅潮し、眩しいほどに艶やかで、身体を震わせながら、楓に問いかける。「社長、こんな堂々と私を家に連れ込んで、奥さんに怒られないの?」「怒る?」楓は冷笑を隠そうともせず、「夫婦交換ごっこするって約束したんだぞ。あいつがお前の旦那のところに行く勇気もないくせに、俺に文句があるとでも?」月村莉奈(つきむら りな)は首を傾け、楓に白い耳たぶを甘噛みされながら、ふと目を開いた。そこで、悠璃と目が合った。だが莉奈は怯えることもなく、むしろゾクゾクと興奮しているようだった。瞳の奥には、刺激を楽しむ光がちらついていた。「へぇ?本当に平気なの?奥さんが他の男と寝ても?」楓は肩をすくめ、冷たく笑った。「ゲームなんだし、気にするわけないだろ。もし嘘だったら、バチが当たるさ」そう吐き捨て、皮肉な笑みを浮かべる。「それに、あいつは俺のことが狂おしいほど好きなんだ。他の男なんて眼中にない。交換ゲームなんて、できるわけがない」「桜井家のお嬢様の純愛さを知らないのか?」楓は誇らしげに眉を上げる。「十年以上も俺一筋。俺が事故で腎臓を壊したとき、自分の腎臓をくれるって言い出したんだぜ。俺が意識不明で寝てる間、正安寺まで登って祈りに行った。足を血まみれにしてまでなあ。それだけじゃない。俺のために将来を捨て、家族とも絶縁し、プライドも人格もかなぐり捨てた。俺が一番嫌ってた時期、ブスだとボケだと罵っても、なお俺の後にすがってきたんだぞ」楓は、悠璃の愛をまるで戦利品のように並べ立てる。「そんな女が、本当に相澤社長とくっつくと思うか?ていうかさ、交換ゲームなんて、ただの口実だ。女を家に連れ込むために適当に作った嘘だぞ。あいつが真に受けたけど、お前も信じてたの?」そして、二人は快楽の絶頂に達する。だがその同じ瞬間、悠璃は、底知れぬ絶望の闇へと堕
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