All Chapters of 元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。: Chapter 11 - Chapter 20

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9.また捨てられてしまうかも⋯⋯。

 目を開けると陛下が心配そうに私のことを覗き見ていた。 背中にベッドの柔らかさを感じて、周りを見渡すと自分の部屋だと分かる。(私、倒れたの?)「陛下、申し訳ございません。私が無理を言って出席させて頂いたのにご迷惑をお掛けしました」「いや、俺の方こそ⋯⋯すまなかった」 陛下は何に対して謝っているのだろう。(雌犬とか、悪魔とか言われたような気がするけれど⋯⋯何がいけなかったのかしら⋯⋯)「私の方こそバラルデール帝国について不勉強でした。ダンスの誘いは受けるべきではなかったのですね」「いや、君は間違ってない⋯⋯俺が勝手にイライラしていただけだ」 陛下はお母様を亡くされたばかりだ。 私は部屋にいるように彼から言われたのに、自分の我儘を通した。(こんな私では、また捨てられてしまうかも⋯⋯) 私が落ち込んで黙りこくっていると、陛下が私の髪に手を伸ばして撫でてきた。 私は昔から髪を撫でられのが好きで、思わず目を瞑りその優しい感触に身を委ねた。(前世が犬だったからから、撫でられるのが気持ち良いのかも)「その何かお詫びをさせてくれないか? 欲しいものとかあれば言ってくれ」「お食事を⋯⋯陛下とお食事を一緒にしたいです」 私は少しでも陛下と一緒にいる機会が欲しくて提案した。「分かった。明日から一緒に食事をしよう。今日はもう遅い⋯⋯体を休める為にも眠った方が良い」「はい。明日が来るのが楽しみです。おやすみなさい陛下」 心なしか陛下が優しい顔をしていて、私は安心した。 ふと目が覚める。 遠くに夜行性の梟が鳴いている声がしたのでまだ、朝にはなっていないだろう。 カーテンを開けるとまだ夜明け前だった。 眠り続ける生活を過ごした反動か、体が冴えている気がする。(もしかして、全快した?) 私は立ち上がり、そっとクローゼットを開けて淡いピンクの軽めのワンピースを着た。 (よし、お散歩に行こう!) 私がしょっちゅうお散歩
last updateLast Updated : 2025-06-03
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10.側にいてください。

「陛下、皇妃殿下が動きました」 夜明け前に侍従が部屋に知らせに来たので、俺は皇妃が庭園の方に歩いて行ったと聞き庭園に向かった。 昨晩、彼女の美しさに魅せられ皆が彼女と踊りたがっていた。 ダンスの誘いがあれば、受けるのは当たり前なのに彼女に八つ当たりしてしまった。 明らかに俺は彼女に心を占拠され始めていて、おかしな独占欲まで生まれている。 彼女が一緒に食事をしたいなどと可愛いおねだりをしてきて、愛おしく思った。 しかし、今度は夜明け前に皇城内を抜け出すと言う不審な真似をする。 ただ、安心して愛させてくれれば良いのに、彼女に対する疑いは消えない。  庭園まで行くと話し声が聞こえた。(間者と接触している?) 近づいていくと、彼女はカイザーと会話をしていた。 カイザーが俺にも言わないような本音を彼女に吐露していて驚いてしまう。 モニカ・マルテキーズの前では男は何でも話してしまうと聞いていたが、5歳のカイザーも例外ではなかったようだ。 何も知らないと思っていたカイザーが、スレラリ草の毒を自分の母親が使っていることを知っていて驚いた。(何も知らなかったのは俺の方だ⋯⋯) 楽しそうに蛇を腕に巻くという奇行をする皇妃が心配になった。 その上、彼女は飛んでったハンカチを走って追って池まで入って行った。(王女として育てられたのではないのか? なぜ、そのように野生的なんだ?) 皇妃が拾いに行ったのは、カイザーが彼の母親から貰ったハンカチだ。 彼はまだ幼くて表には出せなくても、亡くなった母親を今も想っていたのだろう。 そして、カイザーは皇妃を「姉君」と呼び、彼女からのハンカチが欲しいと言っていた。(本当に人の心を捉える天才だな⋯⋯モニカ・マルテキーズ)  彼女は花が好きなように見えたので外にガーデンテーブルを設置して、そこで朝食を一緒にとる事にした。 しばらくして、現れた彼女は真っ白なシンプルなワンピースを着ていた。 俺と食事をする女は皆、朝
last updateLast Updated : 2025-06-04
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11.私が少し会話すれば脳が溶けて、口を割ると思いますよ。

「すぐに戻ってくるから」「レンダース領の暴動は1年前にもありましたよね。もう、領主を切りませんか? 暴動はおさまりますよ。出兵による遠征費も節約できます」 俺は一瞬自分の耳を疑った。 そのような事は考えたこともない。 「レンダース領の領主カイゼル・レンダース伯爵は領主としての資質に欠けると思います。領地の争いで皇家に手間を掛けさせています。爵位と領地、財産を全て取り上げましょう。レンダース領を皇家直属領にするのです」「そのような罰を与える理由がない⋯⋯」俺は驚くような事を、天使のように微笑みながら語る皇妃に釘付けになった。「報告書を過去10年分見せてください。叩いて埃の出ない貴族などいません。しかも、レンダース領にはサファイア鉱山があります。領民は3流でも土地は1流です。向こう5年は税を免除にすれば、領民は喜んで陛下に尻尾を振ります」 確かにしょっちゅう暴動で不満を訴える領民は3流だ。対話という手段を選ぶことすら思いつかない蛮族と言えるだろう。 しかし、俺は蛇にまで優しい視線を向けていた彼女が、人を冷たく格付けし出したのが信じられなかった。 無垢で優しいだけの女ではないと評判からは分かっていたし、そのような甘い人間なら皇宮で生きていけない。「しかし、爵位や領地まで取り上げるような罪を犯した証拠など見つけられるだろうか⋯⋯」「カイゼル・レンダース伯爵もタルシア・バラルデール前皇后の国葬にはいらっしゃいますよね。その際にでも彼と接触してみます。私が少し会話すれば脳が溶けて、口を割ると思いますよ。ここまで領民に不満を持たせる領主⋯⋯彼を切ることは領地だけではなくバラルデール帝国の為になります」 
last updateLast Updated : 2025-06-05
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12.実は皇妃の前だと何だか緊張してあまり上手い会話ができないんだ。

 俺は自分がカイゼル・レンダース伯爵からの報告書には目を通すから、皇妃には何もしなくても良いと伝えた。 彼女に言われた通り、報告書を確認するとおかしな点がすぐに沢山見つかる。 領地からの報告書は全て行政部に確認を任せていた。 俺は持ってこられた書類は問題のないものとして、サインをしていた。 そもそも、数字のズレなど細かいことに目を向けるのが面倒だった。 別に不正があっても、大した額ではないと思っていた。 レンダース領にはサファイア鉱山があり、裕福になってもおかしくない土地だ。  しかし、皇家へ度々支援を求め、その支援金はどこにいったのかも分からない。 少しチェックしただけで疑問を感じるのに、誰も指摘しない。 (カイゼル・レンダースは行政部とも癒着しているのか⋯⋯)    皇妃は書類をチェックしなくても、カイゼル・レンダース伯爵を資質のない領主だと言って放った。 俺は彼女を女の武器で男を翻弄してきた女だと思っていた。 実際、彼女は一目で人の心を奪う程に美しかった。 求めるような目で常に見つめられている度に、彼女に溺れないように常に気をつけて自制をしなければならなかった。 しかし、彼女の美貌は隠れ蓑で本当は優れた政治感で、マルキテーズ王国の為に暗躍してきたのではないかとの疑いが出てきた。     皇妃をあまり政治に関わらせたくなかった。  彼女が味方なら心強いが、敵である可能性の方が高い気がする。(脳が溶けるか⋯⋯)  俺自身も彼女の可愛らしい優しく澄んだ声と、天使のような見た目に囚われ何だか脳が正常に機能していない。 もう既にモニカ・マルテキーズの手に堕ちているのかもしれない。  それでも、彼女にスレラリ草を使うこと今後絶対にない。 俺の子供ができてるかもしれないと嬉しそうに語る聖母のような皇妃の姿が本当の彼女だと信じたい。 皇妃がマリリン・プルメル公女からお茶会に誘われたと嬉しそうに報告してきた。  今、俺の妻になった上に、舞
last updateLast Updated : 2025-06-06
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13.皇妃に毒を盛った貴方のことを陛下に報告しなきゃね。

 私はアレキサンダー皇帝に幻滅されてしまったのだろう。 陛下はあれから一度も私と食事をしてくれない。 会いたくて謁見要請をしても断られている。 日課で陛下が通るだろう道で待ち伏せしても、会うことができない。 私は完璧に避けられていた。 男性に追いかけられる事はあっても、避けられる事は初めてだった。 それだけ私が陛下にとって、無理な存在になってしまったと言う事だろう。 何がいけなかったかは分かっている。 帝国の皇帝の妻であるのに、花嫁修行の基本である刺繍をろくに習得していなかったのを見られてしまったこと。 自分が役に立つことを陛下にアピールしたいがあまり、彼の母君の国葬で政治的な行動をしようとしたことだ。 結局、陛下はカイゼル・レンダース伯爵を切った。 私は自分の母親の葬儀で誰も母に想いを寄せていない事を寂しく思った。 それなのに、陛下の母君の葬儀を利用するような事を言ってしまった。 国葬は滞りなく済ませることができたが、私は冷たい人間だ。 陛下に寄せる言葉も見つからない程に、夫の母親に対する感情がない。  最近、全く眠れなくなった。 また、捨てられる恐怖が私を襲う。 陛下の役に立ち、彼の家族として愛されたいと思ったのに失敗した。  私は人間になれても、全然賢くなれなかったのかもしれない。 私は万全の準備をして、マリリン・プルメル公女とのお茶会に向かった。 本当は準備したものを使わず、プルメル公女が私と友人になりたいだけでお茶会に誘ってくれていたら良いと期待している でも、そんな可能性は極めて低い。 私はマルテキーズ王国でも常に戦っていた。 同年代の人たちと意味もない話をする仲になりたかった。 しかし、皆、私を陥れようとする人ばかりで私は自衛の為に攻撃に転ずるしかなかった。 私はアレキサンダー皇帝から送られた緑色のドレスにエメラルドのネックレスと、イヤリングのセットを身につけた
last updateLast Updated : 2025-06-07
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14.貴方が愚かで陛下の足を引っ張る馬鹿女だからです。

「待ってください。私は関係ありません」  立ち上がって無罪を主張するカリーナ・ミレーぜ子爵令嬢は、権力のあるマリリンの近くにいることで自分も強くなったと感じる典型的な取り巻きだ。 どうやら、そういった人間は寄生している相手を切り捨てるのも早いらしい。(寄生するにしても、もっと相手を選ばなきゃね⋯⋯) 「そうですか。でも、そもそもミレーぜ子爵家はこのような罪を犯す以前に問題のある貴族家ですね。皇家の資金を横領しているので、すぐにでも爵位剥奪されるでしょう。私との関係はなくなりそうですね」 私の言葉に驚いた顔をしている彼女は自分の家の行っている悪事も知らないらしい。 これ程までに無知でお茶をして人を笑って生きられた今までに感謝して、彼女には消えて欲しい。「あら、ご自分の家のことなのにご存知なかったの? 本当に優雅な貴族令嬢ですこと」 俯いたマリリンとカリーナ以外の2人の貴族令嬢は自分の家のやっている後ろめたいことに気がついているのだろう。 彼女たちは私に指摘されるのが怖くて目を逸らしている。 着飾って身分の高さで人を見下している彼女たちの家も、皇家の財産を掠め取っている。 きっと、前世は泥棒一家だったのだろう。 毎月、少しずつ掠め取って罪悪感も感じていないだろうが、10年単位にすると罰則を与えられるレベルになる。  そのような事は割とどこの貴族家でもやっていたりする。 だから、貴族を陥れるのは簡単だ。 泥棒の汚名で、領民の不満を煽る。 領民は今まで口を閉ざしていた、言えなかった領主の罪を皇家に密告する。 1割の貴族よりも9割の平民を大切にするポーズを見せた方が上手くいくという考え方は父のものだった。 マルテキーズ王国の平民たちは父が徴兵を科しても、当然ランサルト・マルキテーズの為に命をかけて戦うようになった。 実際は平民の暮らしはなんら変わっていない。 徴兵の義務ができただけで、窮屈になったとも言える。 しかし、偉そうにしていた貴族を
last updateLast Updated : 2025-06-08
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15.ジョージはどのような下心があって、私に近づいたのですか?

 皇宮に戻る為に馬車に乗ろうとすると、早い足音が風を鋭く切って近づいてくる。「モニカ、お願いです。少しだけでも話させてください」 私を追ってきたのは、ジョージだった。 汗を流し、必死に私に纏わりつくような子犬のような目をしている。 このような状態の彼の申し出を断れるわけもなかった。「分かりました⋯⋯」 私は彼と馬車の中で話すことにした。 誰かに見られたら誤解されるかもしれないので、カーテンを閉めた。「まず、姉上の無礼をお詫びさせてください。それから、僕が父を切ります。僕も来月には成人します。僕が公爵になる形で、どうか許しては頂けませんか?」 わざと私は「断頭台」という言葉を使って聞き耳を立てているジョージを刺激した。 状況証拠だけで自信はなかったが、やはりレイモンド・プルメル公爵は先皇陛下を暗殺している。 皇族殺しなのだから、当然一族もろとも断頭台行きだ。 先皇陛下を心不全と診断した皇宮医はプルメル公爵家と長い間、癒着していた。 該当皇宮医にプルメル公爵家から金の流れがある。 皇宮医は皇族の健康状態をプルメル公爵家に流していた可能性が高い。 そして、おそらく今度はその状況をネタに、先皇陛下の死因を心不全だと偽装させられた可能性がある。 そして、先皇陛下が亡くなったとされる日の翌日にメイドをはじめ15人の皇宮に勤務する職員が入れかわっている。 暗殺を目撃した可能性のあるものを、始末したか、莫大な退職金を払い故郷に帰したのだろう。 該当月に曖昧品目の支出の計上があった。 アレキサンダー皇帝が、レイモンド・プルメル公爵の罪に気がついていないとは思えない。 陛下は気がつきながらも、決定打がなく処分できていない可能性が高い。「まず、レイモンド・プルメル公爵とマリリンは南部の領地から今後一切出てくることのないようにしてください」「もちろんです」「ジョージは、これからは陛下とバラルデール帝国の為に尽くすと誓ってください。私もただでさえ少ない貴族
last updateLast Updated : 2025-06-09
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16.欲を満たしたいだけなら高級娼婦でも呼んでください。

 あれから2週間の時が経った。 私はバラルデール帝国について、政治、経済、国際関係と只管に学んだ。 全貴族の10年分の収支報告書にも細かくチェックを入れた。 私は陛下とは全く会わない時を過ごしていた。 もしかして、既に私は捨てられているのかもしれない。 今晩もいつものように、ルミナが私の寝支度を整えてくれる。 心なしかいつもより、硬く真剣そうな彼女を不思議に思った。「ルミナ、今日、何かあった?」「いえ⋯⋯その、今晩、アレキサンダー皇帝陛下がいらっしゃるようです」 私は耳を疑った。 陛下はこれだけ私を嫌うように避けているのに、房事には予定通り部屋を訪れてくるなど想像していなかった。 後継ぎが欲しいのかもしれないけれど、おそらく私は不妊になっている。  定期的に来ていた月のものが今月は来なかった。 私は自分の子供と手を繋いで散歩したりすることを夢見ていた。 生涯子供ができないかもしれないという現実を受け止める自信がなかった。それゆえに、皇宮医に正式な診断を受けるのは怖くて避けていた。 「そう⋯⋯陛下には謝罪したい件もあるし、少し話をしたらお部屋にお戻り頂くわ」 ルミナが言い辛そうに気を遣うのも無理はない。 彼女は私が散々陛下から避けられて、皇宮で笑いものにされ始めているのを知っている。「姫様、あまり我慢し過ぎないでください。私は姫様がどのような選択をしようとついていきます」 胸を詰まらせながらルミナが告げてくるのは、私と私の母エミリアーナを重ねているからだろう。 母は低い身分の出身ゆえ、血筋を笑われ王宮では孤立していた。 父はそのような母を庇うわけではないのに、夜伽の相手は毎日のようにさせていた。 母は国王の寵愛を独り占めする欲張りで贅沢な女だと国民からは憧れられていた。 しかし、愛とは自分よりも大切に相手を思ったりする事のはずだ。 母は父に愛されてなどいなかった。 母の葬儀の時には父は既に新しい側室を
last updateLast Updated : 2025-06-10
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17.私の方が年上なのに、子供扱いしないでください。

 今日は周りの同年代の子たちがどのような事に興味を持っているかを調査しに街に出て来た。 お忍び用の紺色のローブを頭から被っているからか、余計に注目を集めてしまっている。 しかし、護衛もつけずに、こっそり皇宮を抜け出して来たので見つかりたくない。 バラルデール帝国のドレスや宝飾品の流行を追うのは大変そうだ。 マルキテーズ王国は割と親から受け継いだものを長く使うことに価値を求める人間が多かった。 それゆえ伝統的な細工をした宝飾品に価値があるという考え方があった。  おそらくマルキテーズ王国から持ってきた宝飾品を身につけたら、バラルデール帝国では流行遅れと笑われそうだ。 帝国の貴族令嬢は、髪飾り1つとっても先進的なデザインのものをつけている。 バラルデール帝国は街中を歩くだけで、宝箱の中に入ったみたいにキラキラしている。 世界中の富と権力がこの帝国に集まっているのが分かる。 光り輝く世界に落ちた小人のような気分になり、街を歩くのは楽しいが店に入る勇気が全くない。 私のドレスや宝飾品も6割が母から受け継いだもので、残りは贈り物で頂いたものだ。 それゆえに、どのようなやり取りを店員とするのか分からない上に、正体がバレないかが怖かった。 この間、皇宮にデザイナーの方が来て、色とデザインを選んでドレスや宝飾品を発注した。 お店でも同じような感じのやり方で注文をするのかが確信が持てない。 曖昧な状態で動くと失敗するので、ここは一旦引き下がった方が良いだろう。 ドレスや宝飾品に限定せず、お茶の話ならできるかもしれない。 それならば、既に知識を持っている。 私は宝飾品店の前に立ち止まっていたが、諦めて帰ろうとした。「モニカ、店には入らないのですか?」 柔らかい風に乗ってくる私のたった1人の友人の声。「ジョージ、街を散歩したりするのですね」「散歩? 実はモニカの見ていた宝飾品店は僕の店です。一緒に入りませんか?」「えっ? ジョージのお店? まだ成人して
last updateLast Updated : 2025-06-11
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18.俺は君と離縁などしない。

 俺は皇妃と食事の約束を反故にした事で、彼女に会い辛くなっていた。 久しぶりに謁見申請してきたレイモンド・プルメル公爵の言葉は信じられないものだった。「陛下、引退させてください。息子のジョージアに爵位を引き継いで、妻と娘と領地に戻ろうと思います」 野心家で若い頃から活躍してきた彼が30代で引退すると言っている。 そして、ジョージア・プルメル公子はまだ未成年な上に政治より商売に興味があるように見えた。 レイモンド・プルメル公爵が早くして息子に爵位を引き継ぐのは不自然だ。 俺はいつも公爵の動きに警戒していたし、引退してくれるのであれば気楽になるが流石に不自然だ。 彼が引退すると言って来たのは、皇妃がプルメル公爵家でお茶会をした翌日だった。 報告によるとお茶会の後、外に停めた馬車の中で皇妃はジョージア・プルメルと密会していたらしい。 俺は皇妃がジョージア・プルメル公子と通じている気がして、気が気じゃなかった。 そして、レイモンド・プルメル公爵に寄生していたミレーゼ子爵をはじめとする貴族派の連中が俺に擦り寄ってくるようになった。 俺は自分の周りの不自然な変化に、皇妃の影を感じていた。 房事の時に彼女に会って、できてしまった皇妃との距離を縮められればと思った。 しかし、皇妃は軽蔑するような冷ややかな目で俺を追い返した。 子供が産まれないのであれば、俺に抱かれる理由はないらしい。 初夜の時の彼女は間違いなく俺を求めてくれていたはずだ。(ジョージア・プルメル公子に心変わりしたんじゃないのか?) もしかしたら、最初から皇妃が俺を想ってくれる瞬間なんてなかったのかもしれない。 あれ程に求め合った夜にも彼女は、切なげに寝言で他の男の名前を呼んでいた。 皇妃に追い返された次の日、俺は聞きたくもない報告を受けた。 彼女は皇宮を抜け出し、街でジョージア・プルメル公子とデートをしていたらしい。 その後、馬車の中で恋人のように抱き合ってたという。  俺はここまで自
last updateLast Updated : 2025-06-12
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