私は予定通りアレキサンダー皇帝に離縁を申し出て、部屋に戻った。 ナイフで髪を肩まで切ると、さっぱりした気分になった。(ちょうど、暖かい季節になるし良いかもしれない) ルミナは私についてきてくれると言ったが、どうなるか分からない私の人生に彼女を巻き込むのは憚られた。 彼女にはマルテキーズ王国に戻るように伝えた。 貧しい生活を強いられるかもしれない新しい人生でもワクワクするのは、私の前世が犬だからかもしれない。 人間であるならば言葉が使えるから、いくらでも道が開ける気がした。 ジョージのアドバイス通り、調香師などになり香水屋などの商売を初めてみようかと考えていた。 私の正体がバレると色々面倒そうだと思ったので、ふとジョージからもらったウィッグを持ってこうかと思った。 クローゼットの奥に入れたウィッグをよく見ると、アメジストのピンがついている。(結局、勝手にプレゼントしてきたのね。ジョージ⋯⋯) やはり、ありのままでいたい気持ちが強く、ウィッグからアメジストのピンだけ抜き取り右耳の上に止めた。 寝室のベットの下に潜って絨毯を一部ナイフで切り取る。 予想通り地下に続く扉があって、そのまま地下に降りた。 ベッドで寝ている時に、真下からわずかに水が流れる音がした。 階段をつたって降りれるようになって、仄かに灯りが灯っているということは地下は隠し通路だ。 きっと、ここを抜ければ城外に出られる。 私自身を避けながら、陛下が私に執着していのを私は感じ取っていた。 離縁がすんなり受け入れられるか分らなかったので、私は一方的に陛下に離縁を申し出て姿を消すことにした。 もし、私が見つからなければ、きっとそのまま離縁が成立する。 犬の記憶が目覚めて、新しい主人として陛下に期待した。 無意識に陛下に纏わりついてしまい、大切にして欲しいと尻尾を振った。 今となっては苦い思い出だが、私は人間になったのだから主人は自分で選べる。 私が死んでも構わ
最終更新日 : 2025-06-13 続きを読む