酒場に入ると、灰色の髪をした初老の男が目に入った。 昼から酒を煽って、だらしなくカウンターに突っ伏している。 飲食を扱う場所なのに店全体が埃っぽくて、私は思わず顔を顰めた。「まだ、開店前です」「当然よ。まだ昼だもの。昼からお酒を煽っているような貴方に用はないわ。私は皇妃モニカ・マルテキーズよ。暗殺ギルドの長に会いにきたの。仕事の仕方が3流だから、もう皇家からの仕事はない事を伝えにきたのよ」 私はだらしのない男の目を覚ましてやることにした。「俺がこのギルドの長だ。見かけによらず生意気な女だな。皇妃だと? 雲でも食べてそうなお前がか?」 馬鹿にしたように笑う名も名乗らぬギルド長に溜息をついた。 皇帝のアレキサンダーに尻尾さえ振っておけば、私のような小娘の機嫌を取る必要はないと考えているのが丸わかりだ。 私は悪評込みで有名人なので、当然彼は私の事を知っているはずだ。 それなのに知らないフリをして、大物ぶっていて滑稽だ。「威嚇すれば怯むと思っている。女であるから自分より劣っていると誤解している。貴方と話すだけ時間の無駄ね。クレアを出しなさい。皇族暗殺未遂で処刑してもらわないと」 私が告げた言葉がよっぽどムカついたのか、ギルド長は包丁を投げてきた。 少し私の髪を掠って、プラチナブロンドの髪が床に落ちる。「威嚇しても無駄と言ったでしょ。私の体に傷をつけていたら、このギルドごと潰れていたわよ。皇族暗殺未遂で、あなたの親族もみんな処刑ね」「チッ!」 私たちのやり取りが聞こえたのか、奥からクレアが出てきた。 彼女の憂いを帯びた薄茶色の瞳を見た途端、怒りが込み上がってくる気がした。 暗殺など裏の仕事をする自分の人生を憂いて自分に酔っているような目つきだ。(裏の仕事は1度の失敗が命取りなのよ⋯⋯) 黒いパンツを履いて動きやすそうな格好をしていると男性のようにも見える彼女は、私の与える仕事を無事に果たせそうだ。「皇妃殿下、私は皇命に従ったまでです。それに、私はメイドのフリをして弱毒性の
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