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24.陛下の気まぐれな愛に付き合うのが怖いのです⋯⋯。

last update Last Updated: 2025-06-18 17:57:23

 陛下が私をじっと見つめて口づけをしようとしてくるので、私は思わず避けた。

「私を抱かないのではないのですか?」

「寒いから強く抱きしめて欲しいと言っていたではないか? それに、俺も魔性の悪女に惑わされて見ようと思ってな」

「私は悪女ではありません。自分の皇城脱出という目的の為に自分の持つ女の武器を使っただけです。反省すべきは、バラルデール帝国の夜間警護の騎士が自分の役割を瞬間でも忘れてしまう平和ボケ加減ではないですか?」

 私はベッドから立ち上がり、このバラルデール帝国の問題点を彼に説いた。

「戦場に赴く第1騎士団などと違い、主に警護や護衛にあたる近衛騎士は危機感が足りません。帝国の皇城を攻められる事など想定していないのが丸わかりです」

 バラルデール帝国は世界一の強国だ。

 確かに1カ国でこの国を落とすのは不可能だろう。

「なぜ、今、真夜中の部屋に2人きりだというのに、そのような色気のない話をしているのだ?」

 陛下は先程まで怒りのままに私を抱こうとしていたが、今は笑っている。

 ベッドに座って、どうやら私の話を聞いてくれそうだ。

 この1ヶ月で帝国のあらゆる問題点に私は気がついた。

「なぜ、レイモンド・プルメル公爵が先皇陛下を暗殺したか分かりますか? それは政治の方向性が違ったからではありません。陛下を1日でも早く皇帝にする為です」

「どういう事だ?」

「陛下は争いがあると城を空けて戦場にいきます。その時は帝国一の第1騎士団を連れて行きます。もし、その間に真夜中皇城が奇襲攻撃に遭ったらどうしますか?」

「一体、どこの小国が帝国に奇襲攻撃を仕掛けてくるというのだ」

「まず、陛下を暴君に仕立て上げます。そして、その暴君を倒すという体で周辺諸国に働きをかけます。レイモンド・プルメル公爵は他国をの武力を借りて、帝国を乗っ取る計画がありました」

 レイモンド・プルメル公爵は他国と頻繁に交流を持っている。

 そして、プルメル公爵家が持っていた第2騎士団の武器は他国に横流しされていたのではないかと私は睨んでいた。

 第
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     モニカとカイザーが驚く程、仲良くなっていて驚いた。 カイザーがこれ程、気を許すのは珍しい。 モニカは優しそうに微笑んでいて本当に聖母のようだ。 俺の前では気まずそうに強張っている事が増えていたのに、出会った頃のように柔らかい表情をしている。  俺のことも名前で呼んで欲しいと言ったら、「アレク」と愛称で呼ばれて心臓が止まりそうになった。 今まで誰も俺を愛称で呼んだ人間はいない。 両親も俺を帝国の次期皇帝として見ていて、どこか距離をとって接していた。 彼女が歩みよってくれたのが嬉しくて、「モモ」と呼んでみたら嬉しそう微笑んでくれた。 3人で過ごしていると、カイザーが歳が離れているせいかまるで親子で散歩しているような気持ちになった。「カイザー、こんなところにカブトムシがいました。森に行かないと中々お目にかかれない方ですよ」 モニカが手の上に焦茶色の虫を乗せて、爛々とした表情をしている。「カブトムシという虫なんですね。汚くはないのですか?」「虫の王様です。アレクと同じですよ!」「あ、兄上と⋯⋯それは失礼致しました。」 俺はよくわからない虫と同格にされてしまった。 それでも、全然嫌じゃないのはモモがその虫を尊重しているからだ。 モモは不思議な女だ。 花や子供の前では、本当に屈託ない笑顔を見せる。 俺は花の名前を全く知ろうとしたことがなかったが、モモはとても詳しかった。 カイザーに花について説明している姿は、まるで子に新しい世界を見せたい母のようだった。(子供か⋯⋯モニカは本当にもう子供を持てないのか?) 俺はモモがもう逃げようとしていないと信用していた。 約束をしても守らないのは俺の方だった。 今までの彼女の行動を見ると、俺の方がずっと約束も守らず彼女を振り回して来たのだと反省した。 自分の行動を省みることなど、モモと出会わなければ一生なかったことだ。 俺はとにかくモモと一緒にいたくて、

  • 元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。   28.モモと呼んでください。

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     モニカを連れ戻して、髪を切って貰い少しは心が近くなった気がしていた。「皇妃殿下が動きました⋯⋯」 俺は自分が愛していると言っているのに、彼女がまだ逃げて行く理由を理解していなかった。 昔から母に欲したものは全て手に入ると教えられて来て、実際にその通りだった。 対して欲してないものも、気がつけば自分の手の中にあった。 でも、今、欲しくて気が狂いそうなのに、モニカは俺から逃げて行こうとする。 真っ暗な庭園で、護衛騎士を籠絡するモニカは見た事もないくらい妖艶だった。 (本当に魔性の悪女だな⋯⋯) 俺の事を名前で呼びもしない彼女が、恋人のように騎士を名前で呼んでいるのは演技だからだ。 そう理解した時にモニカは俺の前では演技をしないで、本当に最初は慕ってくれていたのではないかとほのかな望みを抱いた。 俺は彼女に俺を慕っていた気持ちを思い出して欲しくて、彼女を抱こうとしたが拒絶された。 そして、彼女がまだ1ヶ月程度しかバラルデール帝国にいないのに、俺以上に帝国の問題点に目を向けていることに驚いた。 彼女は恐ろしく頭が切れる。 その割に出口の鍵を持たずに隠し通路に入ったり、先程も裸足で城門の外へ逃亡しようとしていた。 なんだか、彼女の行動は行き当たりばったりに見える事もある。(全く目が離せないな⋯⋯)  朝食の時に、彼女が俺を見限った訳を知った。 彼女は俺のせいで死に掛け、おそらく一生子供が産めない体になった。(子供が欲しいのに、もう叶わないと泣きそうな顔で叫んでたな⋯⋯) 俺を愛することは不可能だから離縁して欲しいと言われても、俺は彼女を手放せない。 スレラリ草の毒の解毒方法については、母が死にかけた時に散々研究したが見つからなかった。  俺は母の墓を掘り返し、その肉体を切り刻んでもモニカの体を回復させる方法を探るだろう。 色々な顔を見せて不安にさせるモニカだが、俺の子ができているかも知れないと嬉しそうにしていた彼女の姿は本物だった。

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    「今日はジャガイモのスープなんですね」「あの時はすまなかった⋯⋯」 陛下はかぼちゃのスープをひっくり返した時のことを謝っているのだろう。 あの時はスープから草の匂いがした。 陛下が途中でスレラリ草の毒を私に盛るのを控えた。 その心境の変化がなぜ起こったのかは私には分からない。「スレラリ草の毒をモニカが摂取してしまったのは、たったの2回だ。だから、そのように不妊だと思い詰めることはないと思うのだが⋯⋯」 私は何も状況を理解していない陛下にため息をついた。「陛下のお母様は紅茶にスレラリ草の毒を忍ばせられ飲まされています。湯を通して毒の成分は100分の1程度まで分解されています。対して、私は直接草を擦り付けた食材を摂取しています」「100倍の毒素?」「私が死んでないから信じられませんか? 私がサンダース卿のナイフで倒れた時、あのナイフには毒が塗ってありました。陛下が私が1週間意識がなかったと言ってましたよね。私はあの毒には免疫があるはずなので不思議に思ったのです。私が1週間目覚めなかったのはスレラリ草の毒の影響です」 ここまで言えば理解してもらえるだろう。 私はナイフに塗られていたマルネスの毒には耐性があった。 即効性のあるマルネスの毒に対し、スレラリ草は遅効性の毒。 私を1週間目覚めさせなかったのはスレラリ草の毒の影響だ。 あの時、私の体の中で何が起こっていたかは分からないが、母が鍛えてくれたこの体が私を殺そうとした毒に打ち勝ってくれた。  私は自分が死ななかった事に感謝して、自分の子を持つことは一生諦めなければならない。(なぜ私は自分をこのような体にした男と一緒にいるのだろう⋯⋯)「モニカ⋯⋯もし、君が子を持てなくても僕は君を愛している」「どうしてですか? 私をずっと避け続けていたではないですか。それに、私に陛下を愛することは不可能です。私の心に少しでも寄り添ってくれるなら、離縁してください」「それは、できない⋯⋯」 掠れた声で絞り出すように伝えてくる陛下は、

  • 元捨て犬の私が暴君の愛され妻になりました。   24.陛下の気まぐれな愛に付き合うのが怖いのです⋯⋯。

     陛下が私をじっと見つめて口づけをしようとしてくるので、私は思わず避けた。「私を抱かないのではないのですか?」「寒いから強く抱きしめて欲しいと言っていたではないか? それに、俺も魔性の悪女に惑わされて見ようと思ってな」「私は悪女ではありません。自分の皇城脱出という目的の為に自分の持つ女の武器を使っただけです。反省すべきは、バラルデール帝国の夜間警護の騎士が自分の役割を瞬間でも忘れてしまう平和ボケ加減ではないですか?」  私はベッドから立ち上がり、このバラルデール帝国の問題点を彼に説いた。「戦場に赴く第1騎士団などと違い、主に警護や護衛にあたる近衛騎士は危機感が足りません。帝国の皇城を攻められる事など想定していないのが丸わかりです」 バラルデール帝国は世界一の強国だ。 確かに1カ国でこの国を落とすのは不可能だろう。「なぜ、今、真夜中の部屋に2人きりだというのに、そのような色気のない話をしているのだ?」 陛下は先程まで怒りのままに私を抱こうとしていたが、今は笑っている。 ベッドに座って、どうやら私の話を聞いてくれそうだ。 この1ヶ月で帝国のあらゆる問題点に私は気がついた。 「なぜ、レイモンド・プルメル公爵が先皇陛下を暗殺したか分かりますか? それは政治の方向性が違ったからではありません。陛下を1日でも早く皇帝にする為です」「どういう事だ?」「陛下は争いがあると城を空けて戦場にいきます。その時は帝国一の第1騎士団を連れて行きます。もし、その間に真夜中皇城が奇襲攻撃に遭ったらどうしますか?」「一体、どこの小国が帝国に奇襲攻撃を仕掛けてくるというのだ」「まず、陛下を暴君に仕立て上げます。そして、その暴君を倒すという体で周辺諸国に働きをかけます。レイモンド・プルメル公爵は他国をの武力を借りて、帝国を乗っ取る計画がありました」 レイモンド・プルメル公爵は他国と頻繁に交流を持っている。 そして、プルメル公爵家が持っていた第2騎士団の武器は他国に横流しされていたのではないかと私は睨んでいた。 第

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