個室の中は重い空気になっていた。未央は深呼吸をして、無理やり自分の気持ちを落ち着かせ、声を低くして尋ねた。「だったら、さっき言っていた一番利益を受ける人とはどういう意味ですか?どうしてまたわざわざ有馬航を殺す必要があったんです?」一つ目の質問には宏太はすぐに答えた。彼は目を細め、少し体を後ろにもたれた。「それは考えるまでもなく、すぐ分かることでは?白鳥グループが倒産し、一体誰がその市場を乗っ取ることができる?」未央はピタリと動きを止めた。ある話の中の、とある名前が頭の中に浮かんできた。新興製薬。宏太のあの低ボイスがまた聞こえて来た。「当時、白鳥グループが倒産した後、俺は我が江川薬品こそが市場を独占できるもんだと思っていた。それが、あの有馬の野郎、他にもしっぽを振りまいていやがったんだ」ここまで言うと、宏太はぎりぎりと悔しそうに歯を噛みしめていた。「奴はまず、偽の薬を使って白鳥グループを危機に陥れた後、江川薬品にやって来た。そして一年も経たずに、うちの技術と人材を引き連れて新興製薬に鞍替えしやがったのさ」未央は唇をぎゅっと結び、何も言わなかった。この情報はすでに瑠莉から聞いていたのだ。そしてすぐに。宏太は深呼吸して、気持ちを落ち着かせ、笑いながら未央のほうへ向いた。「だから、白鳥さん。あなたの真の敵は、新興製薬の社長であって、俺ではないはずだ。奴こそ、白鳥家の屍を踏み台にして、のし上がった黒幕だぞ」宏太はもともと多くを彼女に語るつもりはなかったが、博人を見て、突然その考えを変え、狡賢さを見せてきた。「協力して、新興製薬を潰すってのはどうだ?」それを聞いた瞬間、未央は冷ややかな顔をし、低い声で答えた。「横山社長、私は他の会社を潰すことには興味はないんです」それに、目の前にいるこの男が当時、白鳥グループを倒産に追い込んだ黒幕ではないとしても、それに加担していたことには変わりない。なのに、どうしてその仇と協力できるというのだ?宏太は少し残念そうにしていたが、それでもまだ諦めていないようだった。「分かった。白鳥さんの考えが変われば、いつでも連絡してくれたまえ」暫くしてから。未央は博人と一緒に外に出てきた。この時、外はすっかり暗くなり、冷たい風が吹きすさび体を突き刺してきた。しか
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