恭介は凶悪な目つきで未央を睨みつけ、体を左右に大きく揺らしながら去っていった。「このクソ女、今に見てろよ」未央は彼の威嚇には全く動じず、ホッと一息ついてボディーガード二人のほうを向いた。「お二人とも、どうもありがとうございました。お酒でも奢らせてください」すると。二人はそれを断り、自分の職責を果たすためドアの前にしっかりと立っていた。未央は頭をフル回転させ、対策を考えていたが、彼らにそこから離れるように催促された。彼女は彼らに警戒されないように、ただその場を離れるふりだけで、下の階に行って座り上の様子をうかがっていた。どのくらい経ったか分からないが、個室のドアがようやく開いた。宏太は綺麗な女性と一緒に中から出てきた。彼らはとても親密そうだった。未央は目を細め、すぐに立ち上がると彼らの後にすぐ続いた。彼らはホテルを出ると、車には乗らず、暗い細い路地へと入っていった。未央はその路地の入り口に立ち、少しためらっていた。彼らを追いかけるかどうか迷っていた時だ。「ハッ、今度は逃げられると思うか?」後ろから聞き慣れた声がした。未央が後ろを振り返ると、そこには恭介が立っていて、あまり友好的ではない目つきで彼女を見ていた。男が一歩ずつ近づいてきて、未央は全身を緊張で硬直させ、警戒心をむき出しにしていた。「何をする気?あと一歩でも近づいてきたら、警察を呼ぶわよ」彼女は携帯を取り出し、冷たい声でそう脅した。恭介は肩をすくめて悪意のある口調で言った。「てめえが電話するのが早いか、俺が動くのが早いか考えてみろ」未央は後ろに下がり続け、いつの間にか暗がりの路地に追いつめられていた。宏太とあの女性の姿はすでに消えてしまった。目の前の恭介からは強いアルコールの匂いがした。完全に彼女を見逃す気はないようだ。「きれいな顔してるじゃん?そろそろ抵抗するのは諦めたらどうだ」彼はニヤニヤと未央をしげしげと見つめ、あごを少し上にあげた。「新興製薬って聞いたことあんだろ?俺の父親はその会社の役員だ。俺と一緒になりゃあ損はさせねぇぞ」未央は冷ややかな目つきだったが、表情は全く変化させず、この時、片手はポケットの中の携帯を触っていた。彼女のこの動作に恭介はすぐ気付いた。「穏便に済ませてやろうってのに、てめぇ
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