理玖は子供用の椅子に座り直し、黙ったままモヤモヤしていた。他の園児たちは種目を終えて、理玖が転んでしまったことを知り、次々と彼の元へ駆けつけて心配していた。「理玖君、大丈夫?」「理玖ちゃん、あのお姫様みたいなお姉さんってママじゃないの?どうして他のお友達と一緒に参加したんだろ?」理玖はそれを聞いて黙ってしまった。「……」最初はそれほど気にしてはなかったが、実際に言葉で聞いてしまうと、心がズキズキとした。この時、未央はちょうど表彰状をもらって、蒼空の手を繋ぎ戻ってきた。そして理玖が膝に怪我をしているのに気付き、眉をひそめて無意識にその足を速めた。「どうしたの?なんでこんな怪我してるの?」彼女が心配そうに見つめてくるので、理玖は唇をすぼめ、涙を溜めていた瞳から我慢できずにポロポロと泣き出してしまった。「わーん……ママ……」彼は未央の胸の中に飛び込み、辛そうに大泣きした。未央は眉間にしわを寄せて、彼がもっと小さい頃にやっていたのと同じように背中を軽くトントン叩いてなぐさめた。理玖は泣き疲れると、彼女の懐で眠ってしまった。この時、博人も保護者会の説明が終わり、外に出て、ぎゅっと抱きしめ合っている妻と息子の姿を見て、ホッとした。しかし、その次の瞬間。彼は息子の膝が擦り剝けて血だらけになっているのに気づき、少し低いトーンで言った。「どうしたんだ?」未央が口を開く前に、先生がさっき発生した出来事の一部始終を説明した。博人は暫くの間黙ってから、弁明した。「未央、俺は彼女には何も伝えてないよ。まさかここに来るなんて思って……」未央は首を横に振った。彼と雪乃の関係など全く興味がないのだ。「お医者さんが傷口を水につけてはいけないと言っていたらしいわ。数日の間、この子のことをちゃんと面倒見てあげて」未央はそう言いながら、理玖を彼に託そうと思ったが、理玖はその小さい手でしっかりと未央の服を掴んでいて、どうやっても放してくれなかった。博人は何か思ったように、口角を上げて微笑んだ。「どうやら、理玖は君から離れたくないらしいな。まずは俺たちと一緒に帰らないか?」未央はそうしたくはなかったが、この状況を考えるとそうするしかなさそうだ。目線をあの可哀想な理玖の顔に落とした。彼のまつ毛はまだ涙で濡れていて
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